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No891『サラの鍵』~今を生きる者達へと受け継がれる過去の重み、哀しみ~

現在と過去の交錯の仕方がうまい。
ジャーナリストのジュリアは
ふとしたきっかけで、
パリの引越し先のアパートの歴史を紐解いていくうち
今まで隠されてきた真実を知る。
と同時に、
秘密を隠さざるを得なかった人たちの
切実な思いも知らされていく。
痛ましい悲劇にあったユダヤ人の少女サラに、
あたたかい援助を惜しまなかった人々…。
その思いやりの深さが、観る者の胸を打つ。

1942年、ナチスの占領下のパリで起こった
フランス警察によるユダヤ人の大量検挙。
多くの人々がアウシュビッツに送られたという悲劇。
運よく生き残ることができた者も、
深い哀しみを抱えて、生きていかなければならなかった…。
辛い歴史を背負った人々の生の記憶、重みが
今、現在、生きている人々へと、受け継がれていく形で
描かれているところが圧巻。

収容所から逃げ出して、生き残ることができても、
自分のふとしたあやまちのために
決して償われることのないほど、深い傷と悲しみを背負ったサラ。
その痛みは、歴史が残した心の傷ともいえる。
心にぽっかりと空洞を抱え、
現実社会になじめないまま、
それでも、周囲の助けを得て、
疎外感も押し隠し、現実に適合しようとして、
懸命に働き、結婚もし、子供も産み、家庭も持ったサラ。
でも、悲しみが消え去ることは決してなかった。
その後のサラの生き様が痛々しく、
海を見つめる、孤独でつらそうな表情は、忘れがたい。

亡くした者は帰ってこない。
その死の悲しさ、つらさが、最後に痛切に突き刺さってくる。

でも、サラの息子が、ジュリアが、ジュリアの娘が、
真実を知らされた者として、
悲劇の重みを、真実を受け継いでいくであろうことを
映画は、最後に教えてくれる。

命を受け継ぐことの尊さが
ラストの涙と抱擁と、こどもを見つめる大人たちの視線の深さにつながっていく。

かなり前に、新作紹介のために
みせていただいた(ごめんなさい、僭越ながらサンプルDVDでの鑑賞です)。
ぜひともスクリーンで確かめに行きたい作品と思いながら
仕事に追われなかなか行けず、悔しさあまって
イチオシ作品として、ご紹介します。

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