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No1312『雪の喪章』~雪景色の中で流転する男女の運命を描ききる~

冒頭、喪服を着て座っている若尾文子。
隣に座っているのは夫。

そこにカットバックで、婚礼の二人の姿が映る。
色鮮やかな花嫁衣裳に身を包んだ若尾が、
初夜の寝間に通される。
外には、しんしんと雪が降り積もっている。

雪景色でつないだような、
法事と婚礼とのカットバックに息をのんだ。
ドラマチックに移り変わる夫婦のさまを予感させる見事な語り口。

このカットバックが、
ラスト、天知茂の訃報の知らせに、
若尾が花屋に電話で花を注文するあでやかなカットと重なり、圧巻。

三隅研次監督の1967年の作品。

金箔商・狭山家に嫁いだ若尾文子を主人公に、
昭和5年から戦後まで、
太平洋戦争前の軍需景気、敗戦と激動する時代の中で、
たくましく生き抜く男女の姿を、
夫婦の業、男女の業を、からめとりながら描く。

金沢の雪景色が、ドラマを彩る。
雪が降り、金箔が舞い、桜の花びらが舞う中で描ききる見事な演出。

若尾文子の存在感は圧巻。
夫は、なんともぽわわんとした顔で、いかにも浮気しそうな感じ。
家の奉公人で、夫が子どもまで産ませた中村玉緒の存在も光る。

最初の登場シーンは、雪の寒い日に、はだしで水仕事をしている足元のアップ。
若尾が目にして、声をかける。
二人の女のドラマを示唆する導入。
中村の無私の愛が、なんとも印象に残る。

若尾を心ひそかに慕う番頭が天知茂。
夫の浮気にショックを受け、
雪山で倒れている若尾を救け、身体をさすって助ける姿や、
恋心を打ち明けるシーン、いいです。
貧乏で、がむしゃらに働いて、軍需産業で、資金を得、結婚しても、
若尾への想いを断ち切れない姿を好演。

若尾は、狭山家がつぶれて、大阪に働きに出て、
浮気を繰り返す夫に何度も失望しながらも、
夫をむげにすることもできず、添い遂げながらも、したたかに生き抜く。

わずか90数分で描いてしまう三隅研次監督の見事な演出。

神戸映画資料館にキートンを観に行くつもりが、体力がなくて、
寝倒してしまい、近くの映画館、シネ・ヌーヴォに足を運んで、
偶然観て、
新年早々、思わず腰が抜けそうにふらふらになった、圧巻の作品です。

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