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No682『愛する人』~失望を希望へと変えるのは自分自身~

14歳で恋に落ち、妊娠、出産するカレン。
でも、カレンの母は、産まれたその日に
赤ん坊を養子に出してしまう。
以来、カレンと母との間に生まれた亀裂は、
二人の心を隔てたまま。
行方の知れない娘のことを思い、
毎日、当てのない手紙や日記を書き続けるカレン。

キーワードは「失望」。
カレンの母は「失望を繰り返してきた人生」と言う。
親にそんなふうに言われては、子としては
立つ瀬がないし、救いようがない気分になる。

そんなふうに
マイナスイメージでがんじがらめにされてきたカレンが、
母の死を機に、
家政婦の母娘との交流、夫となる男性との出会いを経て
手放した娘を探し始め、少しずつ変わっていく。

人生、生きていれば、
ちょっとずつでも前に歩むことができるはず…と思える。

カレンを演じるアネット・ベニングもいいが、
何より、強烈な存在感で忘れられないのは、
カレンの娘エリザベスを演じるナオミ・ワッツ。

養子に出され、十代で養母に死なれ、
たった一人で、厳しい世の中を生きのび、
才能ある弁護士となって、一流の仕事をこなしていく。

堂々たる誇り高い外見の陰には、
これまでの身を削るような苦労と犠牲があることは、
察してあまりある。

自信満々で、着実にキャリアを重ねてきたエリザベスの姿は
したたかで、たくましくみえて、
でも、あまりに繊細で、もろく、孤独なハートが
ナオミ・ワッツの表情から垣間見える。

同じマンションに暮らす盲目の少女と仲良くなり
屋上で、エリザベスとかわす会話がいい。

心を開きかける相手を見つけると
すぐ逃げ出してしまうエリザベス。
たまたま乗り合わせたエレベータで少女の後姿を見つめながら、
思わず、ひっそりと涙を流し、
黙って見送るシーンは忘れられない。
実際に妊娠していたというナオミ・ワッツが健闘。

ケーキ店で働き、子どもができないために
養子縁組相談所を訪ねるケリー・ワシントンと母との会話も
味わい深く、考えさせられる。

母から子へ、
たとえ育てられずとも、命は受け継がれていく。
母の強さ、絆の尊さ。

後悔したって、いつも、人生は、今、このときから始まるのだ。

失望の内にこもり続けてはいけないし、
いつでも一歩は踏み出せる。
さりげない演出、深みがあり、余韻が残った。

ちょうど、検診でひっかかって、ブルーになっていたところ
精密検査の結果が出て、大丈夫とわかり、
命をもらった気分で、レイトで見にいった作品。
やっぱり涙があふれ、大いに元気をもらって帰った。
自分でも単細胞だと思うけれど、
本当にいつも映画からいっぱいエネルギーをもらい、
映画の神様に感謝の思いでいっぱいだ。
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