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No1167-2『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』~林業の仕事と向き合う若者の汗と涙と、山の神秘~

どうしてこんなにおもしろいのか、
やっぱり相手が「木」だからだ。
農業と違って、とにかく木はでかい。危険でもある。
一人じゃなかなかできない。
チェーンソーを木の幹に当てる緊張感。、
ミキミキと倒れてくる音、迫力、怖さ、全部リアルに迫ってくる。

林業という仕事のスケールのでっかさ。
自分が手入れして植林した木々が
成長し、材木として商品となるまで、100年かかる。
子、孫の代まで考えて、丁寧に手間かけて育てるという、
職人の気概に心打たれる。
 
都会から林業研修にやってきた、
主人公勇気の体験をとおして、
観客の私たちも、山を感じ、木を知る。

吹き替えなしで、役者たちが、全部、林業のシーンを
演じるというのは、本当にすごいことで、
その汗と迫力が、リアルに伝わる。

勇気が足を踏み外して、山の斜面を落ちていく。
カメラもそのまま追っかけて、
ずるずると、どこまでも落ちていく…。
怖い…、
でも、その後にちゃんと笑いを用意してくれる
監督のユーモアがいい。
人を追い込まない、神去村の“なあなあ精神”だ。

18歳の勇気を演じる染谷将太が、
チェーンソーで木を切る姿は、まだまだ危なっかしい。
林業のベテランのヨキを演じる伊藤英明は、
身体も大きく、がっちりしているから、
様になっている。

矢口監督が
「この作品は、僕が作ってきた中で
最も危険で、最も過酷で、
最も楽しい映画になりました。
さあ、ケータイも常識も通じない神去村へようこそ!」
とあるのが、よくわかる。
林業という、未知の仕事のおもしろさ、大変さを知り、
山という異世界の、
神秘も不思議さも秘めた、奥深い空間を体感する。

霧の深さ、
高木からの眺め、
人間を超えた何かがちゃんと感じられるからこそ、
一人一人の人間の小さな試みの尊さも
映画からきちんと伝わってくる。
 
笑えるだけじゃない。
いい映画を観たなあという充実感、満足感がある。
 
役者やスタッフたちの苦労の結晶が
きちんと画面から感じられて、
すごいものを観たと思える。

そもそも、原作が三浦しをんで、しっかりしていて、
監督が矢口監督だから、おもしろい話にならないわけがない。
「一スジ、二ヌケ、三ドウサ」と、
日本映画の父マキノ省三が語ったように、
脚本、撮影、役者と三拍子そろったおもしろさ。

役者も、脇役まで、皆、粒ぞろい。
村人たちのあたたかさ、のびやかさ。
奥さんだけでなく、ばあちゃんもおもしろいし、
子どもも、犬も、ユニークで、個性的。

携帯も通じないし、
勇気が、長澤まさみに、「村を出たらいいのに」と軽く言って
ビンタをくらうように、
暮らしやすいところではない。
でも、
山には何かある・・
神去村に行きたいと誰もが思うほどに、
村の人々も、村の空気も、まるごと写し出し、魅力が伝わってくる。

好きなシーンは幾つもある。
神隠しのシーン、
長澤まさみと染谷くんが、2人で並んで座っているうしろ姿。
語り出せば、尽きないほどに、
インパクトのあるシーンが多いのは、
映像として、いかに楽しく、おもしろく見せるか、
矢口監督の才腕あってこそ。
お得意のエッチねたも、随所に配され、
しつこくなく、さらりとしていて、ころっと笑える。

映画を観終わって、
すっかり、私も神去村ワールドの住人になった。

写真:(C) 2014「WOOD JOB!~神去なあなあ日常~」製作委員会

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