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雪山へ行く~冬の金剛山~

ふわふわと雪が舞い降りていた。
あたりは静寂に包まれ、誰もいない。
うっすら雪が積もった一本の道がまっすぐに伸び、
雪が降る音まで聞こえるほど静かだった。

見上げると、青い空が見え、
冷たい雪が頬に心地よい。
梢高く、風がそよぐと、
木々が揺れて、ざわめいている。

ふと波の音を思い出した。
広い海に向き合って立っている時と同じように、
今、大自然のど真ん中に立っている…。

この空間をひとりじめなんて、
ぜいたくな一瞬かもしれない。

真っ白になりたかった。
雪でつるんとこけて、ああ痛いと思う。
その瞬間に
すべて、哀しみも痛みも全部忘れられたらいいのに。
そう思った。

でも、そんな簡単に悟りきれるわけもなく、
もやもやは全部抱えたまま。
何も変わらなかった。
そのままの自分がいるだけ。

ただ雪のやさしさだけが心にしみた。
誰の肩にも、顔にも、平等に、雪は降り注ぐ。
冷たさは優しさの裏返し。

自然はいつでも隣にいる…。

子どもの頃身近に感じた自然の神様のことを
久しぶりに思い出した。
自然だけは、いつも守ってくれた。

そういえば、山を登り始めた時も、
人の気配がまるでなかった。
道が合っているか不安で、
なんて天涯孤独なんだろうと心細かった。
でも、その時の落ち着かない気持ちとはまた違う。

一人であることを、もう少しきちんと受け止められた。
少しだけの安らぎ。
きっと、雪のおかげだ。

白い雪が降っている。
ただ、その雪にみとれて、
私はいつまでもそこに立ちつくしていた。

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