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No607『赤毛のアン グリーンゲーブルズへの道』~アンの魅力がはじける快作~

小さい頃、『赤毛のアン』が大好きで、読みふけった。
想像力で、つらい現実も乗り切っていく姿にすごく影響を受けた。
アンの綴りをAnnじゃなくて、Anneと書くところも好きだ。

この映画は、高畑勲監督のテレビアニメのうち、
アンがグリーンゲーブルズにひきとられることになるまでを描く。
テレビ版の6話までをつないだだけ、という話も
聞いたりして、どうかなと思っていたのだけれど、
まわりの友人たちの好評に、
神戸にできたばかりの、元町映画館まで行ってきた。

グリーンゲーブルズにひきとられるまでだけで
十分、見事なドラマになっていることに驚いた。
すごく魅力的な世界で、
ギルバートとの出会いがなくても、
これだけで十分。
むしろ、アンの心の揺れ、
マリラとマシュウの気持ちの揺れとが
見事に描き出されていて、感動した。

アンは、よくしゃべる子で、
はじめ、ちょっとうるさいくらいにも思ったが、
決して騒がしいだけの子ではない。
自分の身の程をわきまえてもいて
甘えているようで、ちゃんと自分を律している。
その加減が絶妙で、黙り込んだり、口をつぐんだ時の
憂いに満ちた表情にもひかれた。

今まで私はアンに思いを寄せるばかりだったが、
今回、マリラやマシュウにも共感していた自分を発見し、
年のせいかなと、これまた違う意味でも感慨深かった。

男の子をひきとるつもりだった二人が、
女の子のアンがきたことに驚き、
でも、少しずつアンにひかれ、
最後には、アンを引き取ることを決意する。
その変化が、
マリラの毅然とした態度の中に、感じられて
なんともすばらしい。

無口で照れ屋のマシュウのそこはかとない優しさも
すてきだ。

マリラがアンを厳しくしつけようとするところは、
なんだか小津監督の『長屋紳士録』の飯田蝶子を思い出した。
迷子の男の子を世話することになり、
毎晩寝小便する子に小言を言いながらも
心ひかれていく蝶子さん。
声は全然違うのだけれど、マリラの口調に
それに近いものを感じたのは、私だけでしょうか。

グリーンゲーブルズにいることになったといっても
やっぱり孤児院に返されるのかどうか不安なアンが
勇気を振り絞って、マリラに尋ねる。
そういう微妙な気持ち、勇気が伝わるから
やっぱりすごい。

引き取ってもらえるとわかって、野原に駆け出すアンは
本当にすてきで、
野原も風も空も、自然がみんなアンの喜びを受け止める。
そうしてマシュウに抱きついてラストというのも
なんとも涙。

自然に包まれ、支えられて育つアンの姿に、
深く共感せずにはおれない。
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