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2008年マイ・ベストテン(日本映画篇)

すっかり遅くなりましたが、極めて個人的な2008年ベスト10を紹介させていただきます。まずは日本映画から。上位7つまでは、順番はともかく、明確に作品は決まるのですが、それ以降はごった煮という感じで、それぞれに魅力あふれ、甲乙つけがたしでした。

1位 『接吻』(万田邦敏監督)

 一途な思いが狂気へと変わってゆく恐ろしさ。作品全体を覆う不穏な空気の中で、仲村トオルだけでなく、私も、小池栄子演じる主人公の女性の虜に・・。

2位 『トウキョウソナタ』(黒沢清監督)

 ばらばらな家族。家のある場所も少し変わっていておもしろい。父親、母親としての役割はありつつも、一人の女であり、一人の男であり、心というやっかいなものを抱えた人間であることを、さりげなく見せてくれた。こっそり働いているスーパーで、偶然妻と出くわし、一目散に逃げる香川照之(父役)。深夜、道端の枯葉の中に横たわっていたのが、むっくり起き上がる不気味さ。小泉今日子(母役)をみながら、女って、こういうふうに得体が知れないけど、強かな生き物なのだなあと思ったり・・。

3位 『人のセックスを笑うな』(井口奈己監督)

 ためらい、優柔不断、決断力のなさを松山ケンイチが体現したよう。蒼井優の、片思いの切ない感じがすばらしい。彼女は手足が長く、ひょろっと不安定な感じで、立っているだけで絵になる。寒い部屋でのストーブの火や、蒼井に恋する忍成修吾の気丈さと懸命さも心に残っている。

4位 『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝二監督)

 前半、仲間を次々と総括していく光景は、あまりのむごさにいたたまれなくなるほど。浅間山荘に至る雪景色の美しさと、人質の女性に対し紳士的であった学生たちの姿に、救われた。山荘の内部からだけの描写に徹底したこだわりもさすが。

5位 『歩いても 歩いても』(是枝裕和監督)

 台所の音。頑固な父、おしゃべりで愚痴も多い母、疎遠にしていた息子、疎外感を感じる嫁、ちゃっかり者の娘、のんびりやの夫、なんとなく仲良くなる子供たち、が織り成す、どこか身に覚えのあるような会話や光景が、ひどく懐かしく思える。家族だけに見せる、母の本音の思いは、残酷だが、人間ってそんなものかもしれない。ラスト、高台から見下ろす街の全景は、遠くに海も見えて美しいが、後日談を入れず、原田芳雄と樹木希林の老夫婦が階段をのぼっていくシーンで終わってみてもよかったような気がした。

6位 『ぐるりのこと。』(橋口亮輔監督)

 人は人の中で生きていかなければいけない。手を携えて生きる伴侶がいることの尊さ。面倒なこともあるけれど、心強くもある。人に対して優しくあれることの尊さみたいなものを感じた。「人、人、人・・」というラストシーンはよかった。

7位 『崖の上のポニョ』(宮崎駿監督)
 
 波の上を豪快に走ってゆくポニョのかわいらしさ。「ポニョ、宗助が大好き」と言い切るまっすぐさ。ポニョを信じ続けた宗助。ポニョの妹たちが、うわうわと大群で、ポニョを助けるべく、突き進んでいく姿は迫力あった。

8位 『ラストゲーム 最後の早慶戦』(神山征二郎監督)

 戦地に旅立つ若者たちを見送らざるをえない大人たちの忸怩たる思いを石坂浩二、山本圭、富士純子、柄本明ら熟年俳優が力演。地味な作品だが、みごたえあり。

9位 『三本木農業高校、馬術部~盲目の馬と少女の実話~』(佐々部清監督)
 
 高峰秀子主演の『馬』(‘41年)ゆえか、『戦国群盗伝』(’59年)の暴れ馬ゆえか、映画といえば馬、と時代劇好きの私は考える。主人公役の長渕文音は、冒頭、少し大根役者っぽいけれど、馬の世話で泥だらけになりながら、たくましくなっていく姿がよかった。

10位 『闇の子供たち』(阪本順治監督)
 
 タイでのロケを敢行した阪本監督の勇気と根性は凄い。好みの作品ではないけれど、ラストの天井の扇風機の緩やかな動きは怖かった。ラストの暗示も、映画ならでは。児童買春と正面から取り組み、公開に結びつけた努力は評価すべきでしょう。

次点以下
『奈緒子』(古厩智之監督)では、人情くさいですが、海辺でビールを飲む笑福亭鶴瓶に心がしみ、
『真木栗ノ穴』(深川栄洋監督)では、片足をあげて不自然な姿勢で穴をのぞく西嶋秀俊の姿はつい真似したくなるようで、変な映画ですが、なんだか終わりは始まりみたいな不思議な感じが印象的、

という感じでした。年の初めに観た作品は、時間も経ち、どうしても印象が薄らぎがちですが、『接吻』はとにかく凄かったというのが、今年の印象です。
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