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契約社員解雇の自動車・電機はボーナス増加・・・労働界の階級化

2008-12-15 09:05:13 | Weblog
 日本経済新聞の集計によれば、今冬のボーナス支給額は電機(78社)で前年比1.5%増、自動車・部品(56社)で0.27%増となっています。電機と自動車は非正規社員の大量解雇が問題になっている業種です。ボーナスの決定時期が少し早かったという事情があるにしても、微増のボーナスを手にする正規社員と解雇される非正規社員とは大きい差があります。解雇者に対する短期的な救済策の議論が盛んですが、長期的には非正規雇用は社会の構造に関する問題と捉えることができます。

 非正規社員は正規社員に比べ生涯賃金に大差があるだけでなく、不況時の雇用調整のため先に解雇されるという不利な扱いを受けます。それは企業にとっては雇用の緩衝装置です。そして非正規雇用から正規雇用への移行は簡単でなく、半ば固定された階層であり、非正規労働者という階級ができていると言ってもよいと思います。正規社員の、非正規社員に対する差別意識もできていると聞きます。

 不況時には、非正規雇用者は先に解雇、あるいは契約の継続を停止されますが、これは一方で正規社員の雇用が守られることを意味します。非正規雇用という緩衝装置の最大の受益者は正社員だと言うことができます。既存の労働組合は非正規社員の問題に消極的という批判がありますが、これは双方の利益が相反するという事情を考えると理解できます。正規労働者の労組を支持母体とする政党も同じジレンマを抱えているわけです。

 低賃金の非正規労働者のおかげで企業の生産コストを下げられるので、一般の消費者は物やサービスを安く購入でき、また輸出企業の競争力強化は円の購買力を強め、海外の物品を豊富に入手できます。一般の国民も受益者であることを認識する必要があります。

 正規、非正規社員について述べましたが、むろん正規社員であってもひどい不況の場合には減給や解雇もあります。中小企業の場合は一般にそのリスクが高くなります。しかし一方に、それらのリスクがほとんどない上、高い賃金が保証された公務員という「上流階級」があります。

 文芸春秋09年1月号の原田泰氏の記事によると、民間企業の平均給与は97年の467万円が07年には437万円と30万円下がっているのに、巨額の財政赤字を抱え財政再建を謳う「骨太の方針2006」は国家公務員に対して今後2.8%の賃金上昇を保証しているとされています。因みに06年度の国家公務員は662.7万円、地方公務員728.8万円となっています。わが国には非正規社員、正規社員、公務員という3つの階級が存在するようです。

 好んで非正規社員を選んでいる人はよいのですが、就職氷河期などで非正規を選ばざるを得なかった人がそこに固定されることは厳しすぎる現実です。それは個人の問題を超えて社会の不安定化につながる可能性があります。

 非正規雇用の増加理由は直接的には規制緩和ですが、この背景には正社員の賃金の引き下げの困難さ(下方硬直性)があります。労働組合に賃下げの困難な同意を得るよりも非正規社員の解雇の方が簡単という環境がこの「雇用緩衝装置」を育てたと見ることができます。

 解雇された非正規社員に対し、公的な支援で対応するという現在の対策は一時的なものに過ぎず、非正規雇用は社会構造の問題として議論することが必要なのではないかと思います。