噛みつき評論 ブログ版

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インフルエンザワクチンの効果は1割?

2013-11-25 10:14:25 | マスメディア
 以下に引用するのは11月22日、朝日の36面に小さく掲載された署名記事です。インフルエンザワクチンの接種をお考えの方には興味あるお話です。

『昨季のワクチン、高齢者に効果薄?』 『インフルエンザ 今季も楽観危険』

 『高齢者はインフルエンザのワクチンを打っても注意が必要――。昨季のインフルで流行の8割を占めたH3N2型は、免疫力の低い場合はワクチンがほとんど効かなかった可能性のあることが、国立感染症研究所などの研究でわかった。ワクチン作製の過程で起きるウイルスの抗原の変化が特に大きかったため。今季は昨季に比べ改善されたが、変化の度合いは依然大きい。「ワクチンを打ったからと楽観するのは危険」と専門家は言う。
 インフルワクチンは鶏の卵の中でウイルスを培養して作るが、その過程で抗原が変化する。一般的にその変化が元のウイルスに対し8倍以上になると、効きが悪くなる傾向がみられ、32倍を超すとほとんど効かないとされる。H3N2型はここ数年、ワクチンが実際の流行株との反応性の低い状態が続いている)。
 感染研が昨季のワクチンをフェレットに打ち抗体を作り、流行株との反応性を調べたところ、全て8倍以上の変化で、うち74%は32倍以上。海外の高齢者を対象にした研究では、予防効果は10%未満だった。今季のワクチンも93%が8倍以上変化したが、32倍以上は1%にとどまったという。
 担当の小田切孝人室長は「今季は昨季より変化の程度の小さい株が選ばれた。ただ、効果が下がっている可能性は否定できない」と話す。ただし、ワクチンに含まれるH1N1型とB型はほとんど変化しておらず、接種は有効だ。
 厚生労働省研究班は高齢者へのワクチンは45%の発病を阻止し、80%の死亡を阻止する効果があるとしている。インフルに詳しいけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫医師は「ワクチンの重症化防止効果もせいぜい10%以下。高齢者施設などではタミフルの予防投与が出来るよう、国は態勢を整えるべきだ」と指摘する
』・・・引用終り
赤色部分は朝日の電子版で追加された部分です。

 これを読めばすぐに幾つかの疑問が生じます。まず「高齢者に効果薄」という見出しは若年者なら効果があると誤解されそうで、文句なしの落第点です。記事の主旨はワクチンの有効性の低さであって、年齢と効果についての言及はありません。記事の信用度までも疑われます。

 そしてこの記事は内容の重大さと比べ、扱いが軽すぎるということです。数千億円の費用と膨大な手間のかかるインフルエンザワクチン接種があまり効かないとなれば極めて重大な問題です。芝エビの名前が誤魔化されていた、などというニュースとは比較になりません。

 インフルエンザワクチン株として選ばれたウイルスと、流行したウイルスとが異なって効かなかった、という弁解はよく聞きますがワクチン製造中に変異が起こり有効性が低くなることは知りませんでした。これでは両方の条件が満たされた幸運な場合にのみワクチンはよく効くということになりますが、なんとも頼りない話です。

 45%の発病を阻止するとされてきたものが10%程度しか効かないとなれば、それも国立感染症研究所の研究結果となればビッグニュースです。グーグルで調べた限り、これを報じたのは朝日だけで、他のメディアが無関心なのも気になります。後追いでも知らせるべき内容です(重要な広告主である薬品会社はいい顔をしてくれないでしょうが)。その朝日の小さい記事もどの程度信頼できるものかわかりません。

 インフルエンザワクチンを受けようかと考える人にとっては切実な問題です。1割や2割の有効率ではわざわざ受けに行く気は起こりません。メニュー偽装に目の色を変えて連日大報道をする日本のメディアは、すこし方向が狂っていませんか。メディアの価値は信頼できる必要な情報を提供することにあるわけですから。
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矛盾しても利益優先?

2013-11-18 09:51:05 | マスメディア
 13日の朝日新聞には「1枚の重ね着 地球を救う」という記事が載りました。重ね着によってたとえ僅かでもエネルギーの消費を節減しようというわけです。

 外気温6度の場合、エアコンの設定温度を21度から20度に下げると原油換算で年間13.4Lの省エネになり、18.6KgのCO2削減になるそうです。石油ファンヒーターの場合のCO2削減量は25.4Kgだそうです。CO2削減量ではエアコンが優れていることがわかります。

 エアコンは外部の熱を内部に運ぶ、ヒートポンプと呼ばれる仕組みであり、電気ヒーターに比べ4~6倍程度の効率があります。逆に言うと、電気ストーブやオイルヒーターなど電熱線による加熱方式は構造が簡単で安価ですが、エアコンに比べ効率が格段に悪く、同じ熱量を得るためには4~6倍の電力を消費します。

 この「1枚の重ね着 地球を救う」が載ったのは7面ですが、隣の6面には輻射式電気ストーブの全面広告があります。
「空気汚さず換気不要」「無風・無音・無臭の健康クリーン暖房」「遠赤外線のお日様暖房」「自動運転モード搭載の8畳対応型」「天井から床までムラなく暖まる」との見出しに続いて「石油ストーブの灯油代と比べても出費は少なくてすみ、大幅な節約につながり家計にも大助かりです」

 と、いいことずくめで理想的な暖房機に見えます。しかし正常な判断力の持ち主なら、こんなすばらしいものをなぜ大手メーカーは作らないのだろうと疑問を持たれることでしょう。特別に難しい技術が必要というわけではありません。

 電気は便利なエネルギーですが、発電の効率は4~5割程度、つまり電力を作るためにはその2倍以上のエネルギーが必要です。しかし電気はモーターを使って動力に変換すれば90%以上のエネルギー効率が得られますが、ガソリンはエンジンを使った場合20~30%しか動力に変換できません。電気は優れたエネルギーなのです。その貴重な電力を単に熱として利用するのはもったいない話です。主な暖房用としての電気ストーブは増エネ機器なのです。

 日本電機工業会の統一基準によると、断熱材なしの木造住宅で必要な暖房能力は244W/㎡です(内外温度差15℃)。広告にある輻射式電気ストーブは最大750Wですからせいぜい3㎡、2畳程度の部屋を暖めるのが精一杯です(それでも8畳間をエアコンで暖房するほどの電気代がかかります)。輻射式なので手元は暖まっても8畳の部屋の暖房はとても無理です。構造が簡単なわりに38900円と高価なのは多額の広告費を使って売るビジネスモデルだからでしょう。新聞は重要なパートナーなのです。

 中でも「石油ストーブの灯油代と比べても出費は少なくてすみ・・・」は明らかな虚偽表示だと思われます。機能の重要な点に関する偽りは食材の産地偽装などよりはるかに悪質です。この広告は詐欺同然であり、広告に対する審査機能の存在さえ疑われます。

 もしこんなものが大量に使われれば他の省エネ努力は帳消しになります。「1枚の重ね着 地球を救う」で僅かなエネルギー節約を説きながら、隣の面では増エネ機器の全面広告というわけです。もし不覚にもこの新聞を信頼し、1枚の重ね着をして、この電気ストーブを購入すれば省エネどころか、増エネとなり地球温暖化を力強く進めることとなるでしょう。そして高い電気代を払う羽目になります。

 この朝日の記事と広告の矛盾をどう理解すればよいでしょう。いかに社会の要請に背を向けるものであっても「自由を尊重」してカネさえもらえば広告を載せるのでしょうか。それとも救い難い科学的無知のために矛盾そのものが認識できないのでしょうか。もしその両方なら、事態は最悪です。
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汚い第4権力

2013-11-11 09:35:16 | マスメディア
 第4権力という言葉はこの頃あまり聞かなくなりました。立法、行政、司法の3権の次に位置する権力という意味で、メディアを指す言葉です。「権力を監視することが我々の仕事である」と日頃から言っているので、自らが権力と思われるのは都合が悪いのでしょう。

 選挙に対するメディアの影響力は強く、さらにそれは立法・行政に及びます。メディア報道が厳罰化を促したように司法も影響を免れません。誰もメディアに批判されるのが怖いのでしょう。もしメディアに対抗して反論したとしても、それが報道されなければ無いのと同じであり、メディアと対等な立場ではないからです。

 93年に起きた「椿事件」は「反自民の連立政権を成立させる手助けになるような報道をしよう」ということで局内をまとめたと、テレビ朝日の椿貞良取締役報道局長が日本民間放送連盟の会合で発言して問題になったものでした。また4年前の総選挙で民主党の勝利が決まったとき、ある新聞の編集室では「我々の勝利だ」という声が上ったと聞きます。これらは露骨な選挙干渉です。誰も選挙の「ご指導」など頼んでいないのに、です。

 その権力は万能ではありませんが、民主党政権を誕生させるほど強力です。この政権の成立はメディアの影響力の大きさを示すついでに、無能政権を担ぐという救い難い識見の低さも露呈しました。

 一方、不祥事を起こした企業などの会見では記者の傲慢さが目につきます。例えば消費者を相手にする企業の場合、企業を生かすも殺すも書き方次第です。記者の態度が大きくなるのはその自覚があるからでしょう。ここに権力が生まれるわけですが、しかしそれは決して正統なものではありません。

 前回述べたように、メディアが得た情報をそのまま流すだけの媒介者では権力は生じません。メディアの権力はメディアが情報を恣意的に加工して伝達できるということから生まれます。伝える情報の選択、扱いの大小、書き方などを工夫することによって意図的な操作が行われます。情報操作は狭義の嘘ではなくても広義の嘘であります。

 メディアの権力とは情報を歪めて伝えることによって生れるものであり、本来的に正統性のないものであるといえましょう。誠実であれば権力は生まれません。したがって〇〇新聞のように不誠実なメディアほど強い権力・影響力を持つと言えるでしょう・・・困ったことに。
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血祭り

2013-11-04 09:52:07 | マスメディア
「やめなければおさまらない風潮に僕は感じます。今度のことで人品骨柄、収入、住む家、そこまでたたかれるとは思いませんでした」「これが今の日本の世の中だと思います」

 これはテレビ界の大物・みのもんた氏が、同業者であるメディアに追い詰められた末に語ったお言葉です。「これが今の日本の世の中だ」には同意しますが、みの氏はそういう世の中を作ることで膨大な利益を得てこられた張本人であり、自らが掘った陥穽にはまったということですから、これは諦めていただくしかないでしょう。

 常に正義を振りかざし「標的」を徹底的に叩くような仕事を続けてきた人物の内部において不祥事が発覚したわけで、威張っていた警察官が泥棒を働いていたような面白さがあります。他のメディアでは同業者を庇う気持ちよりもその面白さが勝ったのでしょう。

 辞めなければ収まらないという風潮はたしかに定着したようです。風潮というよりメディアの行動様式、懲悪の儀式となった観があります。不祥事の発覚を発端部として、周辺や背景の探索(アラ出し)とバッシングから成る展開部、謝罪と処分で締めくくる終結部を経て一件落着となる様式です。

 つまり懲悪をテーマとする物語です。見世物ですから卑小なコソ泥では面白くありません。大物が犯す大きい悪がよく、たとえ小さくても大きく見せる努力がなされます。そして謝罪と処分もそれに見合ったものが要求されます。中途半端な収束は許されず、誰かを血祭りに上げないことには収まらないのが慣例です。

 古代ローマでは5万人も入れるという広大な闘技場、コロッセウムで罪人を猛獣に襲わせるという残酷な刑が行われていましたが、これは見せしめと同時に見世物であり、ローマ市民の娯楽であったといわれています。

 「罪人」を社会的に葬るか、物理的に葬るかの違いはありますが、懲悪の物語を観客が楽しむという構図は同じです。現代文明のおかげで残酷さはなくなりましたが、懲悪を楽しむという心理構造は同じなのでしょう。「罪人」の地位が高ければ、観衆の嫉妬心も加わって、懲悪によるカタルシスはさらに効果を増します。血祭りの犠牲は読者・視聴者の娯楽の代償です。

 事件の当事者に対する記者の質問風景を見ていると、記者の態度が大きいことに驚きます。まるで裁く者が訊問しているのではないかと思うほどです。ホテルの社長は遂に辞任に追い込まれましたが、もし自分が社長の立場ならこんな事件は起こさない、と断言できる記者が果たして何人いるでしょうか。

 とりわけ消費者を相手にする企業の場合、どのように報道されるかによって致命的な影響を受ける可能性がありますから、企業の立場はどうしても弱くなります。雪印乳業の食中毒事件の時、同社社長に対する読売記者の暴言は聞くに堪えないものでした。記者の分際で相手の弱みに付け込んで執拗に責める姿はとても不快です。記者が情報の誠実な仲介者であれば、つまり記事に恣意性がなければ傲慢な態度などあり得ない筈です。

 メニューと実際の料理の違いに誰も気づかなかったことは、メニューの情報に実質的な意味がないことを示します。我々は意味のないことに大騒ぎしているわけです。そこまで厳しくするのなら、開運や縁結びなど、出来る筈がない効能を看板に掲げて寄付を集める神社・寺などの宗教団体にもメディアはイチャモンをつけるべきでしょう。神罰や仏罰が怖くてできないのでしょうか。ひとの不幸につけ込み、運が開けるなどとデタラメを言って金を集める行為は詐欺とどこが違うのか、是非とも教えていただきたいものです。
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