噛みつき評論 ブログ版

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中国製スパイウェア?

2013-12-30 00:24:14 | マスメディア
 中国の検索大手「 百度 ( バイドゥ ) 」製の日本語入力ソフト「バイドゥIME」と「シメジ」が文字情報を同社のサーバーへ無断で入力情報を送信していたことが発覚しました。このニュースはNHKのニュースサイトで12月28日までの週刊アクセスランキングで1位となるなど、広く注目されています。

 他のソフトと抱き合わせでダウンロードする仕組みのため、利用者は気づかずに「バイドゥIME」を使っている例も多く、知らぬうちに利用者が日本語入力したほぼすべての情報とパソコン固有のIDなどが、百度のサーバーに送られていたとされています。利用者は200万人以上、外務省などの中央省庁や自治体、大学のパソコンでも見つかり、気づかないまま情報が筒抜けになっていて、大騒ぎになっているわけです。

 百度のサーバーに情報を送るのは変換精度を高めるためという大義名分があるのですが、「バイドゥIME」では初期設定が「クラウド入力On(送信する)」となっていたため利用者が気づかないまま情報が送られ、同社製のスマホ(アンドロイド)用日本語入力ソフト「シメジ」では「クラウド入力Off(送信しない)」という設定でも送られていたとされ、意図的な情報収集活動という疑いがあります。

 全角入力した文章、Windowsのセキュリティ識別子(パソコン固有のID)、アプリケーション名が勝手に送られ、記録されていたわけで、個人情報の漏洩の可能性があり、騒がれるのは当然のことです。メールなどの文章が第三者によってすべて記録されていたわけですから、気味の悪い話です。今後、中国製のソフトに対する警戒感が強くなることは避けられないでしょう。

 この問題を積極的に報道したのは読売とNHKで、中間が産経と毎日、最も消極的なのが朝日です。とくに読売は本数が多く、内容も充実しています。反面、朝日は紙面で確認できたのが1件、12月26日の夕刊・社会面の左下の隅の目立たない記事だけです。朝日デジタルで検索するともう一件見つかりましたが、それは百度の弁解を伝えるだけのものでした。

 個人情報の漏洩にはいつも厳しい姿勢の朝日がこの問題にこれほど消極的なのは不自然です。ここで思い起こされるのは、朝日の記事は中国の利益になるように偏向、歪曲されているという従来からの指摘と、1966年、中国政府の気に入らないことを書く新聞各社が次々と北京から追放されるなか、朝日だけ残ることが許されたという事実です。これは中国共産党の提灯記事や文化大革命を礼賛する記事を書き続けたことに対する中国の返礼だと思われます。感動的なお話ですけれど。

 この朝日と中国との「歴史問題」はほとんど忘れ去られていますが、今も影響が残って、朝日は中国政府の意向に沿った報道しているのでないかという疑いが拭えません。日中、日韓の歴史問題を重視し、その掘り起こしに熱心な朝日ならば、ついでに自社と中国との歴史問題を掘り起こされてはいかがでしょうか。

 特定秘密保護法に反対する異常な執念、護憲を頑なに支持する姿勢、この中国製ソフトによる情報の無断送信発覚に対する過少報道、どれも中国の利益に資することです。

朝日の欺瞞

2013-12-23 00:09:54 | マスメディア
 12月9日付の拙記事で、朝日デジタルが募集した特定秘密保護法案に対する賛否の結果を示した投稿マップを取り上げました。その時、転載したマップは12月9日時点のものですが、締め切られた12月10日時点のものも傾向は変わらず、特定秘密保護法案に賛成が約8割を占めます。



 ところが11月22日付で下のような見出しの記事が投稿マップと共に朝日デジタルに掲載されています。
『(秘密保護法案)賛成派も「不透明さ不安」 投稿2千件、反対9割 朝日新聞デジタル』



 記事の内容は省略しますが、例の如く反対意見の羅列です。(同様の記事が数本あります。朝日デジタルのサイト内で「特定秘密保護法案」と「投稿マップ」で検索)

 不思議なことにここでは反対が9割となって、12月10日時点のものと正反対の結果となっています。投稿件数は約2千と約2万と大差がありますが、傾向が逆転することは実に不自然です。2千でもかなり信頼できる結果が得られる筈です。また件数が多いほど統計としての信頼性は高くなるだけでなく、人為的な介入がやりにくくなります。

 つまり件数が少ない段階では関係者に投稿を呼びかけて、意図的な結果にすることが可能ですが、件数が多くなるとその操作では追いつかなくなります。ただしこれはひとつの推測です。

 しかし朝日がこの投稿マップを根拠に「反対9割」と宣伝したことは虚偽の疑いが極めて濃厚です。誤った情報を伝えたわけですから「投稿マップはその後、賛成が多数となりました」という訂正と説明が不可欠です。朝日が投稿マップの最終結果を知らぬ筈はないので、意図的な知らんぷりだと思われます。

 都合のいいことだけを報道し、都合の悪いことは報道しない、つまり報道する・しないはメディアの裁量であると考えているようです。報道しないこと、すなわち「秘密」を決めるのはメディア自身だということです。秘密の指定を他人(政府)がやるとなれば当然、気に入らないのでしょう。裁量権の一部を取られるわけですから。

 また、朝日の反特定秘密保護法案のキャンペーンでは「大勢が反対しているから反対しろ」という手法が中心でした。判断材料を提供するのでなく、皆に習えという説得方法は各々が自ら考えることを否定するものです。それは付和雷同を促すもので、集団を制御が効かない状態へと導く危険があります。

 国民主権だときれい事を言いながら、内心はアホな国民が考えてもロクなことはないと思っている証拠と言えましょう。たいした偽善者です。

 世論を左右するような報道の根拠に嘘があったとしたら、それはエビの名前を偽ることとは次元が異なる問題です。エビの方は社長の首が飛び、他方はお咎めなしではちょっと腑に落ちません。

判断を狂わせるための条件

2013-12-16 10:03:11 | マスメディア
 大失敗をした時、しばらくはそのことが頭をはなれないことがあります。やがて、オレは役立つこともいろいろやっていたのだと我に返り、大失敗に占領された頭はめでたく元に戻ります(正常ならば)。何かに思考を集中させることは時には必要です。しかしそのために一時的に全体を見失うことはよく経験します。こんなときにした判断は間違うことが多いものです。

 これは個人レベルの話ですが、社会全体でも似た現象が起きます。多くのメディアがあることをしつこく集中報道し、読者・視聴者、それにメディア自身、つまり社会全体がそれに染まっているような状況です。それは山本七平のいう「空気」にも似て、しばしば不合理な結果につながります。

 猪瀬東京都知事に対するバッシングが止りません。多勢に無勢、まさに「大人による弱い者いじめ」の観があります。議会での、文字通り汗だくの答弁の様子を見ていると気の毒になります。5000万円の借用問題ごときに、極悪人に対するような激しいバッシングには強い違和感があります。また大勢でたった一人をいじめることに恥ずかしさや後ろめたさを感じないのでしょうか。

 言うまでもなく、都知事にとって最も大事なことはよりよい都政を実現することであり、現在までの知事の功績は多くの人に評価されています。しかしそんなことはすっかり忘れたかのように、記者会見場に集う記者達の関心は5000万円問題だけに集中し、辞任に追い込むのが使命とでも思っているようです。北朝鮮には及ばすとも、たいした非寛容さです。

 誰だって叩けば多少のホコリは出るものです。とくに政治の世界に身を置く有能な人が清廉潔白を保つことは至難でありましょう。政治の世界は「水清ければ魚棲まず」と心得るべきでしょう。むろん限度はありますが、きれい事ばかりでは世の中はうまく治まりません。

 猪瀬氏の過去の著作、道路公団民営化委員会や都政の仕事を多少とも知る人は、これくらいのことで辞めることはない、辞任は都政にとって損失だ、という気持ちが強いと思います。

 一方、都議会での高木啓議員の居丈高な質問は極めて不愉快なものです。「人間として、おかしいっつってんだよ」という暴言。人間としておかしいのはどっちだ、と言いたくなります。猪瀬知事が「一言だけ言わせて下さい」と求めたのに対しても言下に拒否、こんな無礼は見たことがありません。

 相手が苦境に陥るとたちまち強くなる人がいます。自身の位置を常に意識し、上の者にはペコペコ、下の者には威張り散らす人です。わかりやすい処世術であり、よく言えば合理性がありますが、品性に欠けることは確かです。

 こういう人達を勢いづかせているのはメディアの報道でしょう。知事を擁護する報道は一切なく、頭の中は5000万円疑惑に占領されています。メディアが知事の過去の業績までを含めた広い視点に立つ報道をすれば、無礼な質問をする高木議員らは支持を失いかねず、自制せざるを得ないでしょう。

 猪瀬知事の進退はメディアの報道次第と言っても過言ではないでしょう。このままバッシングを続けて辞めさせ、より劣った新知事が誕生したら、不利益を蒙るのは都民です。むろんメディアはその結果に責任をもつわけではありません。

 個人でも社会でも、何らかの想念に取り憑かれ、全体を見失ったときの判断はたいてい間違うものだと一般化してよいでしょう。これを巧みに利用するのが宗教や詐欺師たちですが。

パブリックコメントの不信頼度

2013-12-09 10:19:00 | マスメディア
 特定秘密保護法についてのパブリックコメントは15日間で9万件余が寄せられ、その77%が反対であったとされています。自民党の町村信孝元官房長官はその結果について「組織票」のためだと述べたそうです。果たしてそうでしょうか。

 朝日新聞デジタルには、募集した特定秘密保護法に関する意見が、投稿マップとして表示されています。下に示すように横軸を特定秘密保護法の賛否、縦軸を日本の安全に関する脅威意識の程度としています。マス目の数字は投稿数を表し、 朝日のサイトではクリックするとすべてのコメントを読むことが出来ます。100文字以内のコメントを伴う意見表明なので比較的真面目な投稿が期待できます。(ニュース >トピックス > 特定秘密保護法案が成立→ページの遥か下の方)



 特定秘密保護法に強く反対する最も左の列の合計は2957(29.8%)、強く賛成する最も右側の列の合計は6971(70.2%)、つまり賛成が圧倒的であり、パブリックコメントとは逆の結果になります。枠の外周部以外は少数で、それを考慮しても全体の傾向は変わりません。反対派のご本尊である朝日のお膝元で賛成派が多数を占める結果とはなんとも皮肉な結果です。

 パブリックコメントでは反対が極端に多く、「組織票」の関与が疑われます。パブリックコメント制度は「組織票」の動員によって、意味がなくなるだけでなく、左派メディアの虚偽宣伝に使われ、むしろ有害です。これに対し右翼の組織票は左翼ほど強力ではなく、また朝日デジタルの投稿は宣伝効果が低いため組織票の関与は低いと考えられ、その分、信頼性が高いと考えられます。

 しかし、朝日新聞が11月30日~12月1日に実施した全国緊急世論調査では、法案に賛成が25%、反対が50%で、これまた大きく異なります。つまり反対はパブコメ77%、朝日世論調査50%、朝日デジタル29.8%とバラバラの結果で、何を信じてよいのかわかりません。まあ信用できるものは滅多にないと思っておきましょう。

 法案通過後の12月7日にようやく特定秘密保護法の全文が掲載されましたが、約17500字もあり、理解するのは大変です。新聞に反対意見を掲載された作家、映画関係者などの有名文化人のセンセイ方は果たして法案を十分理解した上で意見を発表されたのか、訊いてみたいものです。

 安保騒動では多くのマスコミが反対運動を煽った結果、大規模な政治運動になりました。しかし学生など参加者のほとんどは安保条約の条文を読んだことがなかったとされています。彼らはあまり理解もせず、マスコミや進歩的文化人に踊らされていただけです。そのマスコミや進歩的文化人にしても十分な理解があったのかどうか疑問です。後に、安保条約は評価されることになります。

 マスコミや出版、映画関係者、左翼の意見を連日大きく載せ、戦前に戻るなどと恐怖を煽るやり方はまさに煽動です。国民が自ら判断する資料を提供するのではなく、自分達の判断を押し付けるのは、民意を大切にすると見せかけて、実は民意をコントロールしようとする行為です。これは偽善と呼んでもいいでしょう。

不徳の判決

2013-12-02 09:19:25 | マスメディア
 10月9日、認知症の男性が線路内に立ち入り電車と接触した死亡事故について、JR東海が遺族らに列車が遅れたことに関する損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁は注意義務を怠ったとし男性の妻と長男に請求全額にあたる約720万円を支払うよう命じました。

 JR東海には過失がないため損害を自分で負う必要はない、従っていかに僅かな不注意であっても誰かに賠償責任を負わせなければならないという単純な論理なのでしょう。しかし賠償責任を負わされた家族側が事故を予見できたかどうかは疑わしく、また徘徊を完全に防止する現実的な方法があり得たかどうかについても疑問が残ります。死亡したのが子供の場合でも、JR東海や裁判所は失意の親に対し、非情にも賠償を迫るのでしょうか。

 判決は認知症の人を24時間の厳重な監視か、あるいは鎖にでも繋いで完全に拘束することを求めているわけです。その結果、認知症の人には非人道的な扱いも止むを得ないという風潮が生まれることでしょう。

 もうひとつの問題は親の介護をしていた長男は賠償責任を負わされ、介護していなかった他の兄弟は賠償責任を逃れたことです。つまり認知症の人の介護には経済的なリスクをも負わなければならない状況をこの判決は作り上げたわけです。事故の状況によってはさらに高額の賠償もあり得るので、介護者は深刻な事態に追い込まれる可能性があります。

 この判決はJR東海に720万円という僅かな金額を与えることと引き換えに、認知症の人には非人道的扱いを促し、介護者には経済的リスクを求めるものです。これらは社会に大きな不徳をもたらす可能性があります。

 恐らく部分的な論理だけを考慮した「木を見て森を見ず」の判決なのでしょう。判決は時として大きな影響を社会に与えます。重要な判決は視野狭窄でない、まともな判事に担当していただきたいものです。

 これと対照的なのが昨年の衆院選をめぐる最高裁の判決です。「一票の格差」が最大2・43倍であった選挙は違憲状態であるが、選挙は有効とされました。違憲状態で行われた選挙が有効とは実に難解な理屈ですが、事情判決と呼ばれる、ご都合主義と言えるものだそうです。

 これは行政事件について、無効とすれば公益を大きく害するものについては論理を曲げても現実的利益を優先しようという、まことに便利な考え方なのです。法の世界では論理は大変重視されますが、それは部分的なことであって、事情判決や憲法解釈のような大枠に於いては論理は絶対でないということです。部分的には精密だが全体としてはいい加減という不思議な世界だといえましょう。

 司法試験の合格者を3000人とし、弁護士を何倍にも増やし、あらゆることを法で解決するというのは司法改革審議会が目指した法化社会です(早くも頓挫気味ですが)。JR東海の裁判はその模範例と言えるでしょう。しかしJR東海にとって720万円は僅かな雑損であり「しゃあないなあ」で済ませることもできたでしょう。猪か熊がぶつかったと思えばよいわけです。マスコミが好む、厳格に責任を追及する社会より、多少の損は「しゃあないなあ」で済ませる世の中の方が好ましく思います・・・少なくとも法曹が幅を利かせる「法化社会」よりも。