噛みつき評論 ブログ版

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優良企業の恥ずかしい商法

2017-07-23 23:22:41 | マスメディア
 このほど携帯大手3社は販売方法に関して総務省から行政指導を受けた。中でもドコモは特に悪質とされ、条件にもよるが1年以上前の契約まで解約可能となった。総務省は客を装った覆面調査員を使い、17年1月から無作為に選定した各社の販売店で100回ずつ計約300回実施したそうである。以下は2017年7月19日付朝日新聞からの引用である。

『携帯電話を契約してから8日以内なら違約金なしで解約できる制度について、NTTドコモなど携帯大手が多くの店舗で客に説明していなかった問題で、ドコモは昨年5月18日から今年7月2日の契約者について、さかのぼって解約に応じると発表した。ドコモは大手3社の中でも特に悪質として、6月末に総務省から行政指導を受けていた。

 解約制度は、買った端末を自宅に持ち帰ると電波が通じにくかった場合などが対象。昨年5月施行の改正電気通信事業法で導入された。ドコモは制度について十分説明せず、客が自ら契約書の当該部分を指摘しない限り、制度を適用しない社内ルールも作っていた。7月3日から対応を改善したという。

 解約に応じるのは(1)自宅の電波状況が悪い(2)制度についての説明が不十分だった(3)契約書類を渡されていない――のいずれかに該当する場合。購入した端末はドコモに返す必要があり、解約日までの基本料金、通信料金などは利用者の負担になる。

 KDDI(au)、ソフトバンクも、解約制度などに関する客への説明が不十分だったとして総務省から行政指導を受けた』 (引用終わり)

 これを読んで私は「やっぱり」と思った。実は数カ月前、ドコモと契約してひどい目に遭ったという知人の話を聞いていた。詳しいことは省略するが、本人は70歳前半で、以前は携帯電話2回線で5千円/月程度であった。しかし新しく契約した翌月の請求書には16000円余の金額が書かれていた(契約月だけに発生する費用が5000円ほどあるので以後は11,000円程度となる)。請求書はなんとA4用紙5枚にわたりタブレットの購入や通信回線の契約、〇〇パック、〇〇プラン…、〇〇割引などがに細かく書き込まれているが、その意味を解読するのはとても難しい。

 高齢者には理解困難な複雑な契約をさせる商法は限りなく詐欺に近い。よく理解せず契約した知人はその後ドコモに解約を申し込んだが、解約料が高くつくので継続された方がマシですよ、と言われておしまい。知人は争いを好まぬ人であった。

 ま、そういうわけでドコモの手口がようやく白日に晒されることになったことを歓迎したい。しかし、グーグルで調べた限りではあるが、これを報じた大手紙は朝日、日経、産経のみで、テレビはNHKも含め皆無であった。知らないわけはあるまい。公共性の強いニュースであるだけに情けない。テレビの質はいまさら言うまでもないが、マスメディアとしての姿勢が改めて問われる問題である。

 そしてあくまで推測だが、大広告主であるドコモなどからの圧力の可能性もある。そう考えるとこれまで携帯大手の商法を大きく取り上げたメディアがなかったことも説明がつく。今回は総務省がたまりかねて手を付けたが、メディアにとっては少なくとも森友学園や加計学園問題より大事な問題だと思う。

 またドコモのオフィシャルウェブサイトにも解約受付の記載はない。本来ならば指導を受けたこと、過去の解約を受け付けることを記載すべきである。

 前にも触れたが、15年度の営業利益ランキングで、ソフトバンクが3位、KDDIが4位、ドコモが7位と携帯電話大手3社は常に上位を占め、営業利益合計は約2兆3千6百億円もある。しかしその裏には契約を複雑化し、十分な説明をせず、利用者が理解できないまま契約するという詐欺に近い商法がある。それを陰で支えてきたのはメディアなのであろう。またドコモは過去4度の海外投資がすべて失敗、合計で約1兆5000億円の損失を計上している。国内から汚い商法で吸い上げた金を海外でバラまいているわけである。これでも十分な利益を上げるので優良企業なのである。

衆愚選挙

2017-07-09 22:37:16 | マスメディア
  豊田真由子さまによる秘書への暴行・暴言事件報道は実に面白かった。しかしその直前、運転していたトロそうな秘書が高速道路を逆走した事実はほとんど報道されていない。逆走は命にかかわることで、これがあるとないとでは状況は大きく異なる。反応は過剰であるが、逆走が事実であれば頭に血が上ることもある程度理解できる。

 その後、当の秘書は警察に暴行の被害届を出し、受理されたそうだ。ご丁寧にも予め用意した診断書まで添えてである。トロいどころか、ずいぶん用意周到な方とも見える。豊田氏に対するメディアの激しいバッシングに秘書氏は「正義は我にあり」と力づけられ、失意の豊田氏をさらに攻撃したとも映る。水に落ちた犬を叩く、執念の人である。しかし内輪の問題を警告もなしに週刊誌に告げ口する手法には疑問が残る。

 それはいきなり背後から切りつけて致命傷を負わせるような行為であり、きわめて後味が悪い。こんな人とは絶対に関わりたくない。その行為が私怨によるものでなく、大義名分があるというならばせめて名乗り出てはどうか。興味本位に騒ぐメディアと一緒になって、豊田氏を社会的に抹殺するという過大な結果を招くだろう。メディアは共犯だからか、秘書氏を非難する話は聞かれない。密告同様の行為が正当化され、面従腹背の人物がウヨウヨいるような世にはなってほしくない。

 最近、かつての「時の人」籠池氏の自宅にTBSの記者らが訪れ、籠池氏と歓談している様子が放映された。もはや容疑者どころか、有名人である。彼はしつこい人との定評どおり、安倍首相の都議会選挙応援演説に100万円をもって駆けつけたそうだ。そんな金があるのなら、踏み倒した建設会社に支払ってもよいと思うが、ずいぶん厚顔な人である。

 こうしたメディアの姿勢がモラルを低下させる懸念があることは前回述べた。さらにこうした姿勢が都議会選挙に大きな影響与えた可能性がある。自民大敗の原因を森友、加計問題と、豊田、萩生田、稲田、下村各氏の言動や行動に求める議論がある。そうかもしれない。しかしそんなことで選挙の結果が決まっていいものだろうか。つまり今回の都議会選挙からは各党が自らの政策を掲げて争い、それを都民が選択するという選挙本来の意味がなかなか見えてこない。

 端的に言えば、自民党の多くの失点が大きく報じられてイメージが悪化し、都民ファーストという得体の知れない党に票が流れたと見ることができる。民主党が勝利し、その後見事に馬脚を現した2009年の総選挙と似ている。どちらも冷静で賢明な投票行動とは言えない。結果を左右したのは負けた側のイメージ悪化であり、その裏には恣意的にそれを煽ったメディアがある。

 メディアは選挙の意味を失わせた当事者であるからか、こんな選挙が民主主義を危うくしているという問題意識を持っていないようだ。いや持っていても知らんふりをしているだけかもしれない。有権者が賢くなればメディアの扇動力は弱くなり、支配力も弱くなる。かつて「担ぐ神輿は軽くてパーがいい」と小沢一郎氏は言った(注)。この場合、担がれるのは首相ではなく、主権者と持ち上げられる有権者であるが。
 (注 海部俊樹議員を首相に担ぎ上げたときに言った言葉とされる)

 政治が劣化しているという議論があるが、その裏には選挙の劣化があり、さらにその裏に事実の報道より政治的野心を優先する新聞と、おもしろければ何でもよいとするテレビがあるように思う。これも民主主義のひとつの形態である。これを進化というべきだろうか。