噛みつき評論 ブログ版

マスメディア批評を中心にしたページです。  姉妹ページ 『噛みつき評論』 もどうぞ(左下のBOOKMARKから)。

帰国希望者を見殺し、アフガン自衛隊

2021-08-29 22:28:48 | マスメディア
 アフガニスタンがタリバンに占領され、カブールの空港では国外へ避難する人たちの大混乱が起きている。すべてを捨て身ひとつで避難を求める人々の気持ちはいかばかりか。まさにこの世の地獄である。そこに自爆テロが起き、100人以上が死亡した。自爆したテロリストは天国に行けると信じて一瞬で「玉砕」するとされる。捕まえて罰することもできない。イスラム教の恐ろしさである。

 米国は大規模な避難作戦を実施し、まだ継続中であるが、英、仏、独、加、伊、韓国など主要国は既に数千人規模の避難計画を終了したと伝えられている。これに対してわが日本は大型の自衛隊輸送機を3機派遣したものの、救出できたのは日本人1人とアフガン人十数人だけという。救出作戦が他国よりずっと遅れた結果であろう。ワクチン接種がOECD37ヵ国中37番目だったことと同じである。

 自衛隊は安全が確保されている場所にしか行けないとされ、行動は空港内に限られていたそうである。空港外の危険地域にいる避難希望者を尻目に戻ってきたのであろう。まさに見殺しである。どっから見ても実体は軍隊である自衛隊が危険地域に行かずに誰が行くのか。危険地域で行動する装備や能力を他の誰が持っているというのだろうか。

 避難希望者約500人の生死がかかっている大問題である。タリバンに命を狙われ恐怖におびえている人々もいることだろう。アフガン人の多くは日本の事業の協力者であるという。多くの他国が避難を成功させたのに対し、日本だけがこの有様では日本の国際的な信義が問われる。恥ずかしいことである。さらに避難を指揮すべき大使館員は全員が早々と逃げ出したらしいが、これもまた無責任であり、恥ずべきことである。

 さらに気になることは、避難民の救出に失敗した問題に対するメディアの冷淡さである。今夕のNHKではパラリンピックや高校野球、各地の高温、アフガニスタン 米軍撤退の動きを伝えていたが、日本の救出作戦には全く触れていなかった。日本人などの生命に危険が及んでいるときにどうしてこうも無関心でいられるのか、とても疑問である。

 今後、タリバンと話ができて解決の道が開かれるかもしれない。しかしタリバンは北朝鮮のように話ができない相手である可能性が高い。だからこそ各国は急いで救出を行っているのであろう。まともな政権なら慌てて救出する必要はない。

 何の苦労もなく育ったボンボンは現実を認識するのが不得手であることが多く、危機になると的確な判断ができない傾向がある。イスラエルのような周囲との緊張状態が常である国は危機に対応する能力が優れている。日本は世界のボンボンなのだろうか。

 NHKなどのメディアがアフガニスタンの自国民救出問題の失敗を報道しないのは、失敗が自衛隊のあり方、自衛隊を縛っている様々な法律への批判を招くことを恐れているのかもしれない。自衛隊の種々の行動制限が危機対応能力を削いでいる事実を知らせないために。ワクチンにしろ、救出作戦にしろ、日本の統治能力が問われる問題である。

感染リスクの認識がおかしい

2021-08-22 22:23:30 | マスメディア
 デルタ株の感染力は英国由来のアルファ株の2倍と言われている。さらに1人が何人に感染させるかという数値では最大9人という話もある。どちらが正しいかわからないが、ここではアルファ株の2倍としよう。現在の1日あたりの感染者数は全国で約2万5千人であり、これは現在までの1日あたりの平均感染者数は概算で約2300人(総感染者数を560日で除した数値)の10.8倍に達する。

 感染する確率はウィルスをまき散らす感染者数と感染力を掛け合わせたもので表されると考えてよい。とすると現在の感染確率は10.8×2で21.6倍にもなる。我々はこの現在の高い感染確率を理解し、それにふさわしい行動をしているだろうか。いままでとは状況は大きく異なって、ウィルスをまき散らす感染源がウヨウヨしているのである。人流の計測値が発表されているが、それを見ても大きく行動が変化したとは見えない。格段に強い対策をとらなければ感染の拡大は抑えられない。

 繰り返される非常事態宣言やまん延防止等重点措置に国民は「慣れ親しんで」その効果は低下傾向が顕著である。当然「オオカミ少年」効果もあろうが、政府の発表やメディアの報道にもその原因はあるように思われる。メディアは新型コロナニュースを連日トップで報道しているし、十分な時間・紙面を使っている。しかし人流の変化に表れているようにその効果は十分ではない。報道の方針に問題があると思わざるを得ない。感染確率が過去の平均の20倍余であることが理解されれば恐らく人は慎重にならざるを得ないだろう。

 デルタ株の感染力は予測されたよりかなり強いようである。というより予測自体が誤っていたと言ってよい。甘い予測で対応できると判断した政府・関係者の責任は大きいが、その判断にはメディアの報道も関係している。極論すればメディアの的外れな報道が政府・国民の甘い認識を生み出したという面が否定できない。感染の行方を左右するのは人々の認識である。その認識はメディアの見識にかかっている。

予測通りの展開に慌てる政府

2021-08-01 22:04:41 | マスメディア
 新型コロナウイルスのデルタ株の活躍が目覚ましい。拡散の速さは出身地のインドや欧米諸国で確認済である。さらにその感染力は英国のアルファ株の1.5倍とされている。アルファ株は中国製の従来株に対して感染力が1.5倍とされていたのでデルタ株は元祖中国株に対して2.25倍の感染力を持つことになる。この事実は既に5月21日に田村厚労相の発言として報道されている。

 2.25倍の感染力があるということは感染の主な原因となる人と人の接触を中国株に対する規制をもっと強力に行う必要があることを意味する。大雑把な計算であるが過去の非常事態宣言のとき、人流が50%減ったとすれば、今回は同じ効果を出すためには約78%減らす必要ということになる。同じ非常事態宣言でこんな効果は期待できないばかりか、その効果は低下しているので尚更である。

 5月に感染力が政府レベルで明らかになっていたわけだから、今急激な感染拡大は容易に予測出来た筈である。むろん100%の信頼のある予測は無理であるが、このような緊急時はある程度の確度があればよい。もし根拠に基づく科学的な実証を求めていたら流行が終わってしまうだろう。感染力の強さからも、また外国の例からも感染急拡大は予想できた。そして従来通りの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置では歯が立たなくなることもかなりの確度で予測できたと思われる。

 従来通りの手法で感染の抑止が可能である可能性もあるかもしれないが、そうでない可能性も否定できないのなら、ロックダウンなど、より強力な強制力を伴う措置などを用意しておくのが政府の役割であろう。新型コロナが拡散し始めてからもう1年半も経っており、立法の時間はあった筈だ。これを千載一遇の機会として非常事態法を作り、ようやく世界の諸国の仲間入りをしてもよかった。今からでもないよりはマシである。

 一部では報道されているが現在の感染拡大状況に危機感が伴っていないことが問題視されている。その通りだと思うが、一方で、菅総理の会見で目立つのは非常事態宣言によって人流は減ってきている、ワクチン接種は着実に進んでいると、いまさらの自慢話である。国民に危機を伝えるという意思は感じられない。つまり問題の認識が十分ではないと感じる。

 新型コロナの重大性を読み誤り、ワクチン接種の実施においてOECD37ヵ国中の最下位に甘んじて、遅れによる経済的損失は何兆円か何十兆円が知らないが莫大なものになる。ワクチン遅れによる損失額を計算してほしいと思う。前々回も書いたが、新型コロナを通じて我が国政府の統治能力に疑問が生じた。とはいっても野党となるとさらにレベルが低い。民主主義、それを支える選挙民、それに影響するメディア、いったいどれが悪いのだろうか。