噛みつき評論 ブログ版

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主義主張より優先すべきもの

2022-06-18 20:27:27 | マスメディア
 最近中国であった話である。飲食店で4人の女性が食事をしていた。そこへ数人の男が入ってきて1人が女性に触ろうとした。女性はそれを払ったところ、男は逆上し、女性4人を店外に引きずり出し暴行加えた。女性2人は入院するほどの怪我を負った。これを助けようとした男は誰もいなかったということが中国で問題になっているという。もしかしたら周囲にいた男たちは平和主義者ばかりで暴力はいけないと思っていたのかもしれないが、そんな理由は世界に通用しない。

 フィンランドとスウェーデンは長年の中立政策を破棄しNATOへの加盟を決定した。またその前にはウクライナへの軍事支援を実施した。ロシアがならず者であることが明確になったことを受けて旗幟を鮮明にしたわけである。またスウェーデンでは原発の維持に国民の84%が賛成だという。両国の現実的・合理的な対応が私には羨ましく感じる。1人当たり国民所得が世界のトップクラスであることも合理的判断ができる結果だろう。日本はエネルギー価格の高騰のために貿易赤字を続けているが、まだほとんどの原発は停止したままであり、電力不足が懸念される上、電気料金も世界有数の高さになった。産業弱体化の理由のひとつである。

 日本はウクライナに対して援助をしているが、軍事支援は拒否している。ウクライナが何にもまして軍事支援を必要としているにもかかわらずである。東部戦線ではロシアとの火力差が10~15倍になるという。軍事支援の遅れがウクライナの敗北につながる。前にも述べたがロシアの軍事侵略を許すことは戦後営々と築かれた国際秩序の危機を意味するから、あらゆる手段を用いて、何としてもロシアの野望を阻止しなくてはならない。しかし日本では軍事支援に反対する意見が強い。恐らく「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…」という憲法前文の理念、を愚かにも信じているためであろう。しかしいま暴れているロシアは平和を愛する国ではない。前文にある理念の前提はすでにないのである。

 中国の飲食店での例で言うと、日本の行動は女性への暴行を直接止めることはできないが、女性が怪我をしたら治療費を出しましょう、亡くなったら葬式代を出しましょう、ということである。目前の暴力に対抗できるのは実力だけで、カネではない。日本では理念や主義主張という言い訳が通用するが、世界からみればただの偽善、卑怯と映るだろう。とても武士道の国とは思えないに違いない。湾岸戦争のとき、各国が軍を派遣して血を流す中、日本はカネだけを出して世界の顰蹙を買った。それを繰り返すのだろうか。

 フィンランドとスウェーデンの対応は大いに参考になる。両国とも平和を望んだ結果の判断である。NATOという集団的安全保障と軍事予算の増加によって平和を実現しようとするものである。平和のための当然の、最適の選択だと思うが、日本ではそうはいかない。必要最小限度の戦力、専守防衛などと言ってきたが、それでは相手を戦争の誘惑に駆り立てるだろう。核を持つ、ならず者独裁国家が3つも周囲にあり、しかも敵対関係になりそうである。

 また、他国が侵略してきたとき、戦うかという問いに対し「戦う」が国民の15%しかいない国である日本は特殊な国である。自国を防衛する気概を持たない者が85%程もいるというのは情けない。現実の認識が異常であるとしか思えない。このような認識を生み出したのは左派勢力の長年にわたる努力の結果であろう。とくにマスメディアが左寄りであったことが大きく影響していると思う。

 日本の防衛問題に関する空想的な認識は軍事的な安全保障だけでなく、エネルギー安全保障や食料安全保障にも悪影響を与えている。左派勢力の膨大な努力が日本の軍事的リスクを増大させたのは確かだろう。彼らがそれを正しいと思ってやっていることがまた厄介な点である。情勢への正しい認識は実に重要であり、それを誤れば致命的な結果を招くことがある。

医師の女性の胸舐め事件ーわからんものはわからんでよい

2022-06-04 20:30:58 | マスメディア
 もしウクライナの人々が最高裁まで争ったこの事件を知ったら、日本はなんと平和な国なんだと驚くことだろう。

 2016年8月に起きた事件である。手術直後の女性患者の胸を舐めたとして、医師が準強制わいせつ罪に問われ、一審の東京地裁で無罪とされたが、二審東京高裁では懲役2年の有罪判決を受けた。そしてこの2月18日、最高裁は高裁判決を破棄、審理を高裁に差し戻した。主な争点は女性患者が訴えたことが事実か、あるいは術後の麻酔から覚める過程で生じる譫妄(せんもう)によるものかと、乳房から検出された医師のDNAが舐めたことによるものか、あるいは会話や触診などによるものなのか、の2点である。また医師は左手で女性の胸の衣服を持ち上げながらを右手で自慰行為をしたというが、これは控訴審では公訴事実から外された。女性の主張が不自然だと判断されたのだろう。

 検察側、弁護側、判事などの関係者が大勢集まって4回にわたって医師がオッパイを舐めたかどうかを厳密に審理を行うことになった。しかし、大勢の偉い人たちが集まって何年も審理してもわからないことはいくらでもある。それを「あてもの」のように、あるいは勘違いや思い込みのためであっても結論を出すのが裁判所である。当然ながら判決は高い確率で間違いが起こる。証明するのに十分ではない材料だけで結論を出すのだから必然的にそうなってしまう。悪いことに、裁判の判決には権威がつけられているから間違いが正しいことにされてしまう。

 これは大変な制度上の不正義である。いくら調べてもわからないものは世に存在する。それを「わからん」と言えないから、ウソをつかざるを得なくなる。ウソが日常茶飯事の国なら知らないが、日本では裁判のウソは困る。この不条理を改めるには「わからん」という判決を出せるようにすればよいだけのことである。

 「疑わしきは罰せず」あるいは「疑わしきは被告人の利益に」という言葉があるが、これは正しい判断ができない場合を想定した上のことである。そして冤罪を出すよりは被告の逃げ得を許す方がマシという考えでもあるのだろう。検察にとっては聞きたくない言葉だろうけど。

 この裁判に関して医師側にも女性患者側にも支援組織が結成され、事件は科学的な真相解明から離れ、政治的なゲームの様相を帯びている。しかし当事者の医師にとっては影響はまことに深刻である。約6年間、被告のままで、仕事や社会的立場、信用などを大きく毀損することになった。今度の最高裁の差し戻しでさらに苦難の年月を重ねることになった。無罪の判決を出すこともできたと思うが、最高裁は判断から逃げた。裁判の長時間化はどうでもいいらしい。

 対して女性の方はどうか。彼女はDVDや動画に20以上出演していて、いずれも性的刺激が強そうな題名のものばかりであるという。こちらの受けたダメージは医師と比較にならないと思われる。

 わからんことをわかったことにして有罪判決を出せば、冤罪の可能性はとても高くなる。明らかな不正義が権威ある筈の裁判所で行われることになる。ウソをつかざるを得ないシステム、最悪である。