噛みつき評論 ブログ版

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法の有害性

2016-10-31 09:12:00 | マスメディア
 天皇が生前退位の意向を表明されました。一般国民の9割以上が賛成したと伝えられるように、しごくもっともな内容です。高齢の方に死ぬまで仕事を強要するとは実にひどい話です。高齢による体の健康だけでなく、長期の認知症の可能性だってあります。現行のままで、そんな場合の対処までできるのでしょうか。

 一方、反対論も根強くあります。反対論は主として憲法学者や歴史学者などの「学識者」「有識者」からのものが目立ちます。憲法などの法理を持ち出して理屈を捏(こ)ねて反対する人もいれば、小堀桂一郎氏のように生前退位を認めれば国体の破壊に繋がるという時代錯誤を思わせる人までいらっしゃいます。

 すべての国民にある人権が、天皇にはないと言ってもよいでしょう。さらに重要な仕事を強制されています。つまり強制労働を死ぬまでさせられるわけです。人権が制限されることについては、天皇・皇族は国民に含まれないためであるとか、様々な特権が与えられているためとかの説がありますが、後から適当に理屈をつけたに過ぎないようしか思えず、ご都合主義に見えます。

 特権があるといっても昔のように実際の権力があるわけでなく、数多くの側室を持てるわけでもないので、人権の制約に見合うものとはとても思えません。即位も退位も自分の意志ではできないわけで、こんなバカな話はどう理屈を捏ねても、現代での正当化は困難です。それが9割以上の国民の現在の感覚なのでしょう。

 生前退位を認めると様々な問題が起きるという意見がありますが、そうかもしれません。しかしだからといってこのひどい人権侵害を放置してよいとは思えません。問題の次元が異なります。

 法は確かに大事なもので、人治国家より法治国家の方がよいのは当然です。しかし一般に法は時代を経るにつれて不適合を起こすので、変えていく必要があります。護憲の立場のように過去の法を重視し過ぎると弊害が起きます。ただ朝令暮改では法の権威が低下しますから、適当な期間がありましょう。

 法学者は法の権威が低下すれば、仕事の重要性も低下し社会的地位も下がるという立場なので、保守的にならざるを得ないのかもしれません。天皇は国政に関する機能を有しない、という憲法の規定を持ち出して今回の意向表明すら否定する学者もいます。これほどまでの形式論は話になりません。ユダヤの律法学者はイエスから強く批判されましたが、現代の法学者も通じるようです。

 多くの憲法学者は安保法案に反対しましたが、それは日本の安全保障より法の権威により多くの関心があったためではないでしょうか。一般国民の意見がいつも正しいとは思いませんが、専門家の意見もまた正しいとは限りません。今回は大多数の一般国民の方が妥当と思われます。それを実現するために法を変えるのがあたりまえだと思うのですが。

 法的な安定性も必要ですが、現実の社会や国家にふさわしい法を作り運用することが基本であって、過去の法に縛られて選択肢を狭めたり、その結果、社会や国家の不利益を招いてはそれこそ主客転倒です。憲法栄えて国滅ぶ、では困るというわけです。法が時代に適合しなくなり有害性を示す状態、それを「法害」と呼んではいかがでしょうか。あるいは「法学者害」とでも。

暗黙のカルテル

2016-10-17 09:05:44 | マスメディア
 オリンピック・パラリンピックの開催費が何倍にも膨らんで問題となっています。数千億円ということで決定したものが2兆円とか3兆円とかになったわけで、これはもう詐欺同然です。たかが十数日間のスポーツの祭りのための費用としては法外とも思われます。期間中、マスメディアが大騒ぎするので、国中がお祭り気分になるように感じられますが、その過半はメディアが自ら作りだす虚像だと思われます。しらける人も相当数いると思われますが、メディアは決して取り上げません。

 また日本が金メダルを百個取ったとしても、日本の国際的地位が向上するわけではないでしょう。最近、日本人のノーベル賞受賞が続いていますが、こちらは世界の医療や食料生産などの科学技術に貢献するため、国際的地位は向上し、尊敬されもするでしょう。その意味では2兆円とか3兆円は自然科学の教育に使った方がマシだと思われます。

 前置きが長くなりましたが、まず2兆円とか3兆円という金額がどれほど大きいかを示したかったのです。国家予算の2~3%に相当します。そして携帯電話大手3社の毎年の営業利益がこの程度になります。その元は携帯電話の利用者から集めた金です。以下、以前に書いたものですが再掲載します。

『15年度の営業利益ランキングで、ソフトバンクが3位、KDDIが4位、ドコモが7位と携帯電話大手3社は常に上位を占め、営業利益合計は約2兆3千6百億円もあります。しかしその裏には料金体系を複雑化し、利用者が簡単に理解できないようにしたり、悪名高い2年縛りを全社が「協調」して採用する、長年の固定客からの収益を乗り換え客優遇の資金にするなど、高いモラルを持つ業界だとはお世辞にも言えません。固定客からの収益で新規客を優遇するのは新聞社と同じですが、どちらも不公正な収益構造です。

 表面的には激しい競争をしているように見えますが、競争は限定的であり、料金は高止まり、結果としては3社が仲良く繁栄を謳歌してきたわけです。携帯電話は今ではインフラと言ってもよく、電力や水道、ガスのように公共的な性格が強い事業です。電力やガスの会社がコストからかけ離れた高い料金で、巨額の利益をあげていれば、当然問題になります。本来のコストの低さは格安スマホの料金を見ればわかります』

 問題は大手3社には実質的な価格競争がないということです。そこには暗黙のカルテルといったものがあるのではないかと疑われます。明示的なカルテルの存在が証明できなければ、独禁法には触れないので、違法とは言えませんが、実質的にはカルテルがあるのと同じです。

 10月1日、格安SIM大手の日本通信はソフトバンクがSIMロックをなくすよう、総務省に申し立てた、というごく小さい記事が載りました。現在、大手3社から買った端末は6ヵ月間、他社のSIMに乗り換えらません。この制限を外せ、というわけです。既にドコモは回線を貸している格安SIM業者には外しているそうです。SIMロックは他社への乗り換えを防ぐ手段ですが、利用者にとっては自由な選択を妨害するものであり、不当な手段に見えます。

 NTTドコモは過去4度の海外投資がすべて失敗、合計で約1兆5000億円の損失を計上しているそうです。国内から吸い上げた金を海外でバラまいているわけです。ソフトバンクも1兆6千億円で買収したスプリントでは損失を出しています。結果はわかりませんが、最近買収した英アームは3兆円だそうです。ずいぶん気前のいい話ですが、この背景には日本市場で確実に稼げる仕組みがあるのでしょう。米国では料金の値下げ競争があるそうで、それがスプリントの不振の理由のひとつとも言われています。寡占状態でも競争原理が働いているようです。

 明示的なカルテルがなかったとしても実質的には価格競争が制限され、利用者の利益を損なわれている状況は看過できないと思うのですが、マスメディアはなぜかずいぶん寛容です。独禁法が機能しない以上、不正義を認識させるのがメディアの役割の筈です。下らない報道は山ほどあるのですが。

 この春でしたか、安倍首相が携帯料金の値下げを要求しましたが、さほどの効果はなかったようです(政府の競争促進策も十分とは言えません)。首相が気づくほどのことをなぜメディアが気づかないのでしょうか。キャリア3社の広告費が巨大なため敢えて黙認しているのではないかと勘繰りたくなります。しかしNHKも同様であることを考えると、メディアには見識ある人がいないのではないかとも疑いたくなります。メディアが大騒ぎしている、政務活動費や豊洲の地下空間の問題とは比較にならない大事な問題だと思うのですが。

メディア内言論統制

2016-10-03 09:10:39 | マスメディア
 大騒ぎになった豊洲問題ですが、いまメディアの関心は地下空間のできた過程に向けられています。しかしこれは豊洲問題の本筋ではなく、重要なことは市場としての安全性が確保されているかどうかです。橋下徹氏がこの問題に対して興味深い発言されています。以下、プレジデントオンラインに紹介されたものからの抜粋です。

「今後、落としどころに向かって事態収拾を図るには次の方法しかない。現在の築地の大気・土壌・地下水を徹底的に計測して公表し、豊洲と比較するというものだ。
というのも、豊洲が目標としている数値は、ある意味とんでもない数字だ。市場建物内の大気が、環境基準を満たす必要性があるのは当然。ところが、分厚いコンクリートの建物床の下やアスファルトの下の土(建物下は4.5メートルは空洞になっていたが)、そしてきれいな土でできた盛土の下の土が、環境基準を満たすこと、となっている。環境基準とは直接その土の上で70年間生活したとしても人の健康に全く影響が出ないというものだ。そもそも豊洲市場で、土に触れることはないにもかかわらず、そこまで土をきれいにする。

さらに凄いのが、地下水だ。豊洲全体の地下水を、70年間毎日365日、2リットルを飲み続けても人の健康に全く影響がないレベルまできれいにする。これが豊洲土壌汚染対策の目標だ。
(中略)
繰り返しになるが、市場内の空気が環境基準を満たすことは必要だ。ところが人が触れることがないようにコンクリートや盛土で覆われた土を、その土に直接触れる形で70年間生活したとしても大丈夫なレベルまできれいにし、人が飲むことも触れることもない豊洲の地下水を、70年間毎日2リットル飲み続けても大丈夫なレベルまできれいにする必要が本当にあるのか。
(中略)
さらに豊洲の建物内に環境基準以内のベンゼンが検出されたと騒ぐ。ところが排ガスに晒されている築地の方がベンゼン値は高い。
築地だけではない、東京の飲食店が集まっている場所のベンゼン値を計測してみればいい。そしてアスファルトの下の土の状態を、またその地下水の状態を計測したらいい。そうすれば、豊洲で今騒いでいることが、バカ騒ぎ、カラ騒ぎであることがはっきりするだろう。俺達って、もっと汚いところで、平気で飲み食いしているよね、って。
「今の豊洲の状態をしっかりと都民に伝えるためには、まず現・築地市場の、大気・土壌・地下水の状況の数値を表に出して比較すべきだ」

……と、テレビ番組の討論中に力説したら、ゲストに来ていた築地の業者さんが、苦笑いして「それは勘弁してくれ」と言っていた。築地の状況は表に出せないよ、と。

もうこれだけで豊洲の騒ぎが、カラ騒ぎであることが分かるよね。東京都民は、現築地市場や、自分の住んでいる地域の環境、そして東京全体の環境と豊洲を比較して、豊洲の安全性についてもうそろそろ冷静に判断すべきだ」
(引用終わり)

 極めて常識的でかつ面白く、説得力のあるご意見だと思います。アホな報道に左右されず、問題の核心を正しく理解されているのがわかります。安全に対するメディアの異常なこだわりが背景にあるとの指摘もあります。まさにその通りで、メディア全体がアスペルガー症候群を呈しているようです。しかし残念なことにこのよう主張は決して主流になっていません。メディアの関心は依然として地下空間のできた過程にあり、犯人捜しをやっているようですが、それは別の問題です。

 新聞やテレビは恐らく全部で数千人規模の記者や解説者・コメンテーターを抱え、日々の出来事を報道・解説しています。きっと豊富な学識を備えた立派な方々ばかりなのでしょう。しかし橋下氏の意見を取り上げるメディアはほとんどなく、見当違いの騒ぎをしています。問題の核心を理解するという点で、数千人が束になっても橋下氏ひとりに遠く及ばないと私には思えます。多数の意見がことを決するのが民主主義ですが、こんな例を見ると民主主義のいい加減さを感じずにはいられません。

 むろん中にはまともな見識を持つ人もいるのかもしれません。しかしマスコミの持つ特性、つまり不安を煽る、騒ぎを助長する、正義面をして誰かを裁く、などの特性に支配され、全体としてはアホな方向に走ってしまうのでしょう。例えば、朝日の人間は誰ひとり戦争抑止力の重要性を説かないように、マスコミ内部では実質的な言論の自由はないのかもしません。それは建前であって実際は見事な「言論統制」があるというわけです。言論の自由を叫ぶ前に、自分たちの言論を自由になさってはいかがでしょうか。