日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

今年の企業テーマを振り返る~ブラック企業の件

2013-12-29 | 経営
今年も残すところあと3日になりました。今年企業経営に関して話題を集めたテーマについて、時間の許す限り総括していってみようと思います。ますは上半期に話題を集めたこのテーマから。

今年企業を取り巻く事件のひとつとして、「ブラック企業」という話題がありました。その手の書籍がベストセラーになり、ネット上でも様々な議論が巻き起こりました。以前は反社会的勢力を代表例とした法令違反企業を指していたこの言葉が、最近の若者言葉として「低賃金&長時間労働」「休みが取れない」「精神的ダメージを負う」職場のことをそう呼ぶ風潮に移行し大ブレイクしたという印象です。

もちろん労働環境として労基法はじめ明らかな法令違反は論外ですが、明確な法令違反以外の線引きをどう考えるのかというところが実に悩ましい問題であったと思います。今年、随分この問題に関して考えさせられましたが、現時点での結論として「正解はない」ではないかと思っています。ケース・バイ・ケース、って実に逃げっぽいですけど。難しいです。

この問題を取り上げた際に繰り返し述べてきた、コンプライアンスという考え方を使ってアウト、セーフの線引きをすべきである、という個人的な見解は現時点でも変わらずなのですが、コンプライアンスの定義自体が不確定であるというご指摘もあり(私個人は、コンプライアンス・オフィサー認定機構のコンプライアンス・オフィサーなので、その観点で定義づけをしています)なかなか万人の理解は得られにくいようです。

ある種、過去のセクハラ定義づけの過程と似た道筋をたどるのかもしれないなと。今後の「ブラック企業」事件に関する裁判なり、世論形成なりを経て、例えば「自分にその意思がなくとも、相手がセクハラと受け取ったらセクハラなんだ」というような、広く一般に理解されるような「ブラック」に関する定義づけがなされる日が近くあるのかもしれません。

「ブラック」に関してひとつだけマネジメントの観点から申し上げておくとすれば、少なくとも職場内で、個人的な感覚であろうとも「当社はブラックだ」と感じ公言する社員や元社員が出てきたとするなら、その状況を放置することは経営にとっては確実にマイナスであること言うこと。「人材」の問題は、あらゆる組織マネジメント構成要素と密接にかかわっており、長い目で見れば「企業風土」「価値観」にも確実に悪影響を及ぼし、最終的には企業価値にも反映されるものだからです。

「当社はブラックだ」と感じる社員や元社員が出てきたならば、彼は何をもって自社を「ブラック」だと言っているのかに関して十分に検証し、それに対して明確な説明が出来るのか否かを自問した上で、できるのならば詳細に説明をし、できないのならば速やかに改善を検討するという勇気と努力が必要なのではないかと思います。少なくとも現状で「ブラック企業」に関する明確な定義づけがない以上、マネジメント上のリスク管理の観点からも労使間での妥協点を見出す努力も必要なのではないかと思うのです。

「ブラック企業」議論は、バブル崩壊後のデフレ経済の長期化により激変した企業経営環境と労働環境に一石を投じ、新たな時代の労使関係の構築に向けた試金石となる存在なのかもしれないと感じています。来年も引き続きこの問題に関しては各企業が自己の問題として、「どこからブラックになるのか」という観点で真剣に考えていかなくてはいけないのではないかと思います。