日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「餃子の王将」社長射殺事件と経営者のリスク管理

2013-12-20 | 経営
京都に本社を置く外食チェーン「餃子の王将」の大東社長が、拳銃で打たれて射殺されるというショッキングな事件が発生しました。

現時点では、誰がなんの目的で行ったことであるのか全くわかりませんが、本社前で拳銃で撃たれ、目撃者や発砲音らしきものを聞いたという人もおらず、その筋のプロが明らかに大東社長と認識した上で犯行に出たものであることは確かなようです。会社側は会見で「思い当たるフシは全くない」と話していますが、これだけの大胆かつ計画的と思われる犯行ですから、亡くなられた大東社長本人は少なからず思い当たる何かがあったのではないかと思わされてしまうところです。

経営者のリスク管理という問題は、組織のリスク管理の中でも最重要に位置する問題です。特に創業者、ワンマン、カリスマ…などの言葉で形容される経営者の場合には、その人の身に何か重大な事件が発生することは、組織運営の危機に直結しかねないリスクをはらんでいます。そのような経営者は、自身のプライベートな面でのリスク管理も含めて、自身の健康面、安全面における最善のケアを常に心がける必要があるのです。

具体的なリスク管理要素は大きく分けて3つ。健康リスク、事故リスク、そして今回のような犯罪リスクです。
健康リスク対策は、定期健診と規則正しい生活リズム管理。これは高度成長の時代にはこの部分の管理を怠って組織に多大なリスクを及ぼす経営者が間々見受けられたものですが、予防医学と健康に対する関心の高まりとともに、現在の企業経営者でこのリスクを大きく犯す人は少なくなっているように思います。

次に事故リスク。仕事でもプライベートでも、事故に巻き込まれる確率を最小化することに尽きます。例えば、体調が悪い時に車の運転をしないとか、危険な国や場所に立ち入らないとか、プライベートで危険なスポーツや趣味を遠ざける、などがそれにあたります。私はクライアントの社長には、バイクに乗らない、冬山登山をしない、パラグライダーなどの趣味はやめる等々、必要がなくかつひとつ間違えれば怪我では済まないリスクは取らないことを進言しています。

そして犯罪リスク。この問題の唯一最大のリスク管理ポイントは、反社会的勢力との接点を一切持たないことです。反社会的勢力の定義は、暴力団に限らず暴力や詐欺などによって金儲けをする集団・個人のことです。経営者にまず必要なことは、経営者は彼らから見て“飯のタネ”として魅力的な存在であり、常に狙われる存在であるということを意識することです。会社としてはもちろんのこと、経営者個人としても会食はもちろん名刺交換ひとつもしてはいけないのですが、それと知らずに相手に近づかれ何らかの圧力をかけられる等があった場合には、速やかに警察当局に相談する必要があるのです。

会社でも個人でも反社会的勢力の力を借りて何かことを進めるなどというのは論外ですが、知らず知らずに相手に近寄られた場合でも対面を気にして警察に相談できないというケースも間々あり、そのことが相手に付け入る隙を与えることになる、などということが多いのです。黒い影の接近時には、勇気を持って声を上げることが経営者自身および企業を犯罪リスクから守る唯一の道なのです。

「餃子の王将」大東社長の身に何があったのかは定かではありませんが、事件の概要を聞くにつけ、トラブルにしろ、脅しにしろ、社長ご自身が察知できる何らかの事件の兆候はあったはずではないのかと思わざるを得ません。社内にも社外にも果たして声を上げていたのかいないのか知る由もありませんが、このような結末になってしまったことは大変残念なことです。経営者自身のリスク管理は、経営者自身が細心の注意を持って心がけ万が一のケースでは「見える化」を進める以外にはないのですから。今はただ事件の早期解決と犯人の犯行動機早期解明を切に望むばかりです。

故人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。