日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

使いたくないe-Taxから漏れる官僚文化の匂い

2013-03-15 | その他あれこれ
個人的なお話で恐縮ですが、昨日無事24年度の確定申告書書類の提出を完了したしました。ここ数年、この作業中に毎年出くわす事象。「今年こそはe-Taxに移行するか」と思いつつも、「やっぱり、やーめた」になるという流れです。

一番のネックは何と言っても、自宅あるいは事務所のPCとネット接続環境だけではe-Taxの手続きが完結しないとい言う点です。電子証明書の取得とICカードリーダライタなるものが必要になるんだとか。私は毎年毎年「今年は、やり方が変わったかな」と思いつつ動き出しとともに、e-Taxの説明を読んで「なーんだ、まだ変ってないのか、じゃ今年も見送り」を繰り返しているわけです。

電子証明書は、住民票のある市役所等の窓口で住民基本台帳カードを入手し、「電子証明書発行申請書」等を提出して電子証明書(公的個人認証サービスに基づく電子証明書)の発行を受けるそうです。その際に手数料が、市町村によって若干の上下はあるようですが500円程度はかかるそうです。しかも、有効期限があって3年ごとに作成のしなおしをしないといけないんだとか。ICカードリーダライタは、この入手した電子証明書で本人確認をして、納税義務者本人として納税データの送付をおこなうために使うものだそうです。市販で2~3千円程度。

なんでこんなめんどくさいやり方にしたのでしょう。念には念を入れた本人確認の徹底がその理由なんでしょうか。本人確認の重要性はよく分かりますが、でも入口の本人確認さえできればIDとパスワードの発行をするなりなんなりで、あとはそちらのシステム内でうまく対応するなりなんなり、もっと簡便にできないものなんでしょうかね。だいたいが納税を「なりすまし」で赤の他人にやられるリスクってそんなに大きいのかと、ちょっと疑問に感じなくもないです。素人考えではありますが、やり方が非常に悪いような気がしています。

それと心象の問題。要するに納税の電子化は、国税庁、税務署関連の納税事務の効率化が目的なわけじゃないですか。それを納税者本人の負担を経てすすめようという態度が見えて心象悪いわけです。電子申告者への税金軽減措置もあるようですが、なぜ軽減措置であって奨励金による一律配布にしないのか。それも疑問です。納税額の有無によって恩恵の有無が違うのって、電子申告を奨励するという趣旨から考えて非常におかしな感覚でもあり、この点もまた心象を悪くしているわけです。

そもそも、自己のメリットのために何か物事をすすめるのであれば、利用者サイドの金銭的、労力的負担を前提とするやり方はおかしいと、やる前に気がつくべきじゃないのでしょうか。電子証明書とICカードリーダライタを使ったやり方では、利用者の立場に立って考えられていないとなぜ導入前に気がつかないのかです。そういうところが、日本の官僚文化のもっとも正さなくてはいけない部分であり、この辺りの考え方に「これではまずい」と気がつかない限りは、官僚制度改革などというものは結局、永遠に実現することはないのではないかとすら思わされてしまうのです。

昨年はe-Taxによる申告の比率が、個人納税者の所得税申告で4割を超えたという話ですが、この利用率には税務署で申告相談に訪れた人をPC申告に誘導して、スタッフのヘルプの下、その場でe-Taxを使って手続きをとらせた人の数がカウントされているそうで、これが利用者数の大半を占めているのが実態のようです(税務署の相談窓口に行くと、手書き申告書持参でも即PCコーナーに誘導されます)。つまり、個人ベースでの本当の普及は、悲惨な状態であるのは想像に難くないところです。

国税庁としては、普及率が低いままだと「多額の開発費をかけてこの普及率はなんだ。この税金泥棒!」と言われることが怖くて、数字だけをカクフラージュで作っているというのが実情なのでしょう。このままで良いわけがないです。いつまで、確定申告時期に多くのヘルプ作業員の膨大な人件費をかけて、カムフラージュを続けるのでしょうか。

こんな状況下で常識的にまずやるべきことは、なぜ「利用率が上がらないのか」を正直に自覚し、「その原因となっている問題の解決のためにやるべき改善策」に動き出すべきなのです。すなわち、先の電子証明書とICカードリードライタを使用するやり方の見直しに、早期に着手すべきなのではないでしょうか。

毎年確定申告のたびに、官僚文化の嫌なにおいを感じされるのはなんとも不快です。日本の行政をあるべき姿に変えていくためには、生活者に近いこの辺りからしっかり変えていく意識を持ってほしいと思います。