日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

「シャープ=サムスン」資本提携は、「売国」ではなく「愛国」として評価すべき

2013-03-07 | 経営
家電大手のシャープと韓国企業サムスンの資本提携が発表されました。資本提携とはいえ、実質的にはサムスンが不況にあえぐシャープに約100億円の出資をすることで“救いの手”をさしのべる、そんなことがその実態であります。

予想されたことではありますが、一部では今回の資本提携を捉えて、シャープを「国賊」「売国奴」呼ばわりする声も出ているようであります。しかしながら私は、相手が韓国であるとかないとかといった問題以前に、シャープに延命策が講じられたことを日本経済の景気回復を第一に考えた視点から大変よかったと評価したいと思っています。

今の我が国が出口のない不況に陥れた民主党政権が終わり、“アベノミクス効果”もあってようやく景気回復ムードが感じられつつある状況下であることから、とにかくここで景気回復ムードを腰折れさせないことが重要であると考えています。そもそも現状の“アベノミクス効果”などというものはまったく実態のないバブルそのものであり、こうような状況下でもし万が一実態のある日本を代表する大手企業の倒産などという事態に陥ろうものなら、それこそ再び不況のどん底に逆戻りだってあえたわけです。

シャープの動向は予断を許さない状況が続いていました。台湾企業の鴻海(ホンハイ)に約1年にわたって翻弄され(もちろんシャープ・サイドの問題も多々ありました)、取引金融機関からは最後通告を突きつけられて“シャープ・ショック”のXデー間近がチラついていただけに、サムスンの“救いの手”は裏にどんな思惑があるのかは分からないにしろ、現時点で我が国経済の安定を最優先で考えるならいいことに違いありません。

一部でシャープ虎の子の技術「IGZO」の技術情報の漏えいを心配する声がありますが、これが万が一「鴻海との提携不調→銀行融資の引き上げ→シャープの倒産」によるサムスンの買収という事態にでもなっていたなら、事態はもっと悪い状況になっていたかもしれないと考えると、不幸中の幸いと考えるべきなのではないかと思うのです。

それともうひとつ、我が国の景気回復に向け私が個人的にその必要性を主張させてもらっている「脱iPhone不況」に向けても大きな一歩であると思います。iPhoneの動向に大きく業況を左右される現状の我が国家電業界は、“反アップル”という意味ではなくアップルの影響力過多の状況下からは早期に逸脱すべきであり、世界の液晶部門で大きな存在感を持つシャープがアップルとライバル関係にある(部品では垂直関係もありますが)サムスンとの提携関係強化は、この点でも大きな一歩になるのではないかと考えています。
◆iPhoneが日本の景気を悪くした?
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/f3d2e1e664bd42ef92ff1fa0e79a3437
◆景気回復本当のカギは、脱「iPhone不況」
http://blog.goo.ne.jp/ozoz0930/e/1151a1dd653ad8ecc48039fb04d1397f

「アップルが好き」「サムスンは嫌い」とかそういう問題はなく、それもこれもすべて、我が国の経済的な安定と景気の本格回復を願えばこその話であります。こんなエントリを上げるとまたぞろ「国賊」だ「売国奴」だと言われるような気もしなくはないですが、我々が日々専心する企業活動は日本経済の健全性があってはじめて成り立つとの前提に立ちこれからの日本を成長させていくために何が必要であるのか、「愛国リベラル」の観点で考えればこその主張なのです。

シャープには、今回の資本提携で一時的に作られた下り階段の踊り場に踏みとどまり、日本経済の本格景気回復に向けた牽引役となるべく、その世界に通用する技術力を活かしての企業再生を見せて欲しいと思っています。