日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

宮崎駿よ、あんたは何様だい?!

2007-11-13 | ニュース雑感
宮崎駿=スタジオジブリのキャラクター商品製作のライセンスを持つ企業コミニカの社長が、法人税法違反で逮捕されました。容疑は約2億円の所得隠し。脱税額は5700万円に上る模様です。

この事件を受けて、宮崎駿氏が「怒りのコメント」をしたとTBSで伝えられました。

「怒りのコメント」?
宮崎駿さんよ、直接コミニカなる会社に対して「怒り」をぶつけることはともかく、あなたがマスメディアを通して伝えるべきメッセージは、少なくとも「おわび」のはずであって「怒り」ではないのではないですか?

コミニカが権利もなく、勝手にキャラクター商品を作って売っていたというならともかく、重大なコンプライアンス違反である大きな脱税事件を起こすような企業に、ライセンスを供与し脱税のもととなるようなビジネスをさせてしまったことをどう考えるのか?

もちろん、宮崎駿=スタジオジブリに脱税事件の責任の一端があるとは申しあげません。しかしながら、そうではあっても、製作会社の「任命責任」「管理責任」を少しなりとも感じていただき、「怒り」は論外、むしろ「おわび」の一言があってしかるべきではないのかと思うのです。

聞けば、脱税対象は原価の水増しによる利幅の拡大部分利益とのこと。すなわち、下請けが脱税目的とはいえ努力をして原価の低下が実現できたわけで、その事実をライセンス元であるスタジオジブリがちゃんと把握していたなら、その分を脱税ではなく商品の値下げとして利用者に還元する事だってできたはずではないのでしょうか。
それを、他人事のように「怒りのコメント」とは、聞いたこちら側が「怒り」がこみあげてきます。

大手企業では、下請け企業の重大なコンプライアンス違反が発覚した場合、「お詫び会見」ならびに「他の下請け調査の結果報告」、「再発防止策」に及ぶ、対応を求められるケースが間々あります。
今回の件に、そこまでは求めないとしても、関係先しかもライセンス供与と言う自社の協力企業のコンプライアンス違反は、そのぐらい重大な問題であるとの認識を持つべきであると、声を大にして言っておきたいと思います。

「宮崎駿氏は芸術家でありそこまで求めるのはいかがなものか」との声もあるのかもしれません。しかしながら、一般人にとっては、宮崎駿=スタジオジブリであり、芸術家であると同時に社会的存在としての当然の自覚も持ち合わせるべきでなはないでしょうか。
コンプライアンス・オフィサーの私からみれば、「思い上がりの激しい、恐ろしく社会性に欠けた無知な芸術家」としか写りません。

それともう一点。
宮崎駿氏に勝手なコメントをさせた、スタジオジブリの危機管理、対マスコミコメント統制も実にオソマツ極まりない。例えオーナーであろうとも、リスク管理の観点から企業として、対外コメントの統制を図ることは基本中の基本です。
スタジオジブリは、作品制作のみならず、グッズ販売、展示館運営など既に社会的存在として十分な存在感を持つ企業になっているのであり、いいアニメ作品を作ることだけではなく、企業の社会的責任を自覚した対応が求められているのです。