アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「アイヌ民族との共生の象徴となる空間」

2009-12-24 12:43:38 | インポート
今朝の北海道新聞にも新たなニュースが入っていました。
「アイヌ民族との共生の象徴となる空間」について。今朝のも道新のHPにはUPされていません。
HPの記事はあくまで呼び込みのためのショー・ウインドウのようなものなのですべてを掲載していないんだとか。そうでないとお金を出して新聞を買う意味がなくなりますしね。しかし、長文だとデーターにするには時間がかかるので面倒。が、皆さんにも紹介したいので頑張りました!少々、長いですが、以下、引用。

アイヌ民族と共生の象徴 大規模公園 政府が構想
政府は23日、「アイヌ民族との共生の象徴となる空間」を新たに整備する方針を固め、新設する「アイヌ政策推進会議」で具体像を検討していくことを決めた。アイヌ民族の伝統技術や生活様式を体験できる大規模な公園を、道内を軸に整備する構想が浮上している。鳩山由紀夫首相は、自身の掲げる「共生」社会の象徴的存在と位置付けたい考えだ。(解説2面)

慰霊施設の設置も
政府は年明けから議論を開始する同会議の結論をまって、2010年度中にも整備に向けた制度設計に着手する。
政府内では、自然の中でアイヌ民族の生活様式を再現し、訪れた人が民族の文化を体験できる施設とする案が浮上。アイヌ民族が大事にしてきた「自然との共生」を伝える狙いもある。
また、全国の研究機関などに保管されているアイヌ民族の遺骨を納める慰霊施設の設置も検討している。アイヌ民族文化に関する教育・研究・展示施設も整備し、伝統工芸の担い手育成の場とする方針だ。
共生空間の整備は、自公政権時代のアイヌ民族政策に関する有識者懇談会が7月末にまとめた報告書でも提言されていた。これまで国や道は「イオル(伝統的生活空間)再生事業」を胆振管内白老町と日高管内平取町で進めていたが、鳩山政権の共生空間の構想は、より大規模なものとなる見通しだ。
一方、推進会議ではアイヌ民族への全国的な生活・教育支援策の前提となる道外の実態調査も検討する。共生空間整備と合わせ、会国規模でアイヌ民族との共生への理解も広げたい考えだ。
(北海道新聞 2009年12月24日(木) 14版 第一面)

<解説>政府が整備方針を固めたアイヌ民族との共生空間は、過去の政権でも浮上していた構想だが、鳩山由紀夫首相が「友愛社会」の柱である「共生」の象徴的存在と位置付けたことで、実現ヘ向け一歩を踏み出すことになる。
政権内でアイヌ民族政策は、道内選出議員である首相の「担当分野」(周辺〉とされ、10月の就任後初の所信表明演説ではアイヌ民族を「先住民族」と明言。政府は共生空間の具体像を検討する「アイヌ政策推進会議」にもアイヌ民族5人を起用し、その視点を生かす考えだ。
共生空間の整備は、従来の「イオル(伝統的生活空間)再生事業」の延長線上にある。だが、これまではイオル再生の先に、伝統行事への和人参加拡大など具体的な共生の姿をどう目指すのか、国の強い意志はうかがえなかった。こうした理念の欠如が、アイヌ民族政策をばらまき的な補助金支給に偏らせてきた側面は否めない。
真の「共生」に向けては、まず首相が目指す将来像をわかりやすく示す必要がある。財政難の中で施設整備に理解を得るには、理念を粘り強く説明し、道内だけでなく、全国民の意識を変えていく作業も欠かせない。道をはじめとする関係自治体や団体も、政権交代をアイヌ民族政策転換の好機ととらえ、望ましい共生の姿や地域の実情を積極的に発信する必要がある。(小倉敦)
(北海道新聞 2009年12月24日(木) 14版 第二面)


アイヌ民族政策について鳩山さんは「強い思い入れ」がある(23日道新記事)そうですから、ハコ物の前に立法措置についてしっかりと取り組むと明言されることを期待していました。
文中にあるように、この施設は有識者懇の報告書の「具体的政策」の「②広義の文化に係る政策」に書かれているものですが、その部分もちょっと引用してみます。

ア 民族共生の象徴となる空間の整備
アイヌという民族に関する歴史的背景、自然と共生してきた文化の重要性、国民の理解の促進の必要性等にかんがみれば、アイヌの歴史や文化等に関する教育・研究・展示等の施設を整備することや伝統的工芸技術等の担い手の育成等を行う場を確保するとともに、併せて、アイヌの精神文化の尊重という観点から、過去に発掘・収集され現在大学等で保管されているアイヌの人骨等について、尊厳ある慰霊が可能となるような慰霊施設の設置等の配慮が求められる。これらの施設を山、海、川などと一体となった豊かな自然環境で囲み、国民が広く集い、アイヌ文化の立体的な理解や体験・交流等を促進する民族共生の象徴となるような空間を公園等として整備することが望まれる。
これらの施設及び空間は、本報告書のコンセプト全体を体現する扇の要となるものであり、我が国が、将来へ向けて、先住民族の尊厳を尊重し差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴としての意味を持つものである。


有識者懇の会議上では、「過去に発掘・収集され現在大学等で保管されているアイヌの人骨等」について、第5回会議(2009/2/26)で、篠田謙一さん(国立科学博物館研究主幹)が触れていました。
そこには国立科学博物館に5,000体くらいの人骨があると言っています。それらがどのように収集されたかを資料提示していますが、小金井良精(東京帝大)、清野謙次(京都帝大)、児玉作左衛門(北海道帝大)らの名前があるのです。彼らの収集したのが博物館にあるということでしょうか・・・。児玉が収集した遺骨は北大にあるのに東大・京大にはないのか・・・・。
いずれにせよ、収集の倫理的な責任について「反省しなければいけない」と篠田さんは語っていながら、具体的なことがなんら述べられず、その後の質疑にも触れられていません。収集にあたって、その方法や倫理的な問題、収集後の管理問題など相当な問題があるにも関わらず、その調査もしないまま、各大学や博物館から遺骨を移動させるだけであるなら慰霊にはならないのではないでしょうか。杵臼のアイヌ墓地(11/10 blog参照)での証言を聞いただけでも真実を調査するべきだと考えます。「遺骨収集」ではなく、「遺体盗掘」となりかねませんから。
これらの重要な問題が、さもないかのように「アイヌ民族と共生の象徴 大規模公園」の構想として書かれ、付随的に「慰霊施設の設置も」などと続けられると、加藤アイヌ協会理事長の政策提案(3)の「啓蒙」と和解の象徴となるような施設の設置という主旨ともずれるとおもうのです(第2回有識者懇ヒアリング)。その当たりはこの度できた「アイヌ政策推進会議」でしっかりと踏み込んで議論をしてもらえたらと願います。



夕方にキャンドルを付けてもう一度シャッターを押しました。自作ながら、かわいくてしかたがない!
今晩のキャンドル・サービスの時も点灯します。


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