アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

先住民族の教育の権利

2009-02-19 20:55:15 | インポート
昨日は事務作業を兼ねて札幌に行き、夜はさっぽろ自由学校“遊”の「先住民族の国連権利宣言」連続講座を聞きにいきました。

ひとり目の講師は、野元弘幸さん(NPO法人保見ヶ丘ラテンアメリカセンター代表理事、首都大学東京教員)。
野元さんは学生時代に指導教師から薦められてパウロ・フレイレに魅せられ、ブラジルに行って学ばれたとか。
P・フレイレの名を四半世紀ぶりに聞いて、懐かしさを覚えましたが、はて? 著書「被抑圧者の教育学」はわたしの本棚の右上の奥にあるということは分かるのですが、内容が思い出せない・・・。詰め込み型の教育(銀行型)ではなく参加型の教育を提唱した人だったなぁ~ぐらい。あらためて引っ張ってきて読み直してみます。神学校で扱いました。

保見ヶ丘は愛知県豊田市北部の郊外に位置する人口9千人の団地で、人口の40パーセント=3,800人がブラジル人とのこと。高齢化の問題、トヨタ自動車関連の下請け・孫受けで派遣会社を通じて働いているが、現在は派遣切りの深刻な問題の渦中にあるとのこと。緊急支援の呼びかけもありましたので、少額ですが協力しようと思います。
(詳しくは以下のURLへ http://www9.ocn.ne.jp/~celaho/)

ブラジル人の子ども達は、一度は公教育に通う経験あり。しかし、学習困難やいじめで不登校へ。野元さんは地域とブラジル人保護者で協力しあい、P・フレイレ学校を建てたそうです(ブラジル国の認可申請中)。
学校は8時半から午後3時までブラジルのカリキュラムに合わせて授業を行ない、3時以降は日本の子どもたちとも合流し、学童的なことを行なうそう。まずは学校の宿題をこなし、母語教育も行なう。現在、60名ほどが集まっているとのこと。

こども達はポルトガル語を学びたがらず、日本人になりたがるとのこと。しかし、親たちは母国の文化を知ってもらいたいがためにフレイレ学校に通わせるのだそうです。こども達は、はじめは抵抗するものの、覚えたての母語で親へ手紙を送ったときの親の喜びようをみて、学ぶ意欲を持つのだそうです。野元さん曰く、こども達は日本語をのばすためにも母語を学ぶ必要がある、と、母語教育の大切さを述べられていました。

これらの活動をもとに、『アイヌ民族学校の構想』について提起してくださいました。
まずは「アイヌ民族教育の全体構想」の点で、憲法や教育基本法に位置づける必要があるとのこと。そして、民族教育を行なう学校・大学などの設置についても議論していく必要性があると語られました。

P・フレイレの解放教育には先住民族差別からの解放という視点があるのでしょうか。本を取り出して確認してみます。


おふたり目の講師は清水裕二さん
『先住民族と教育』のテーマで、アイヌ民族学校の可能性についてお話くださいました。
そもそもアイヌ民族に対する民族教育は、常に露骨な差別教育だったことを述べられ、
①公教育として民族教育を保障すること
②差別を撤廃するような抜本的な政策をすること
③母語や母文化を尊重すること

を求められました。


たいへん印象深く残ったのは、ご自身が覚えている唯一のアイヌ語「ポン・ヘカチ」のお話でした。
フチたちが集まってアイヌ語でしゃべっているところに行くと、その度に「ポン・ヘカチ!」とフチがひと言しゃべり、そこで会話が途絶えたそうです。「ポン・ヘカチ」とは、「小さい・子ども」の意味で、(こどもが来たからアイヌ語で話すのはやめよう)との"合言葉"だったそうです。
アイヌ語を話すことがマイナスになると思わされ(抑圧を受け)ての、悲しく辛いエピソードです。


先住民族の「教育の権利」に関しては、国連の先住民族権利宣言の、第14条、15条に述べられています。

第14 条【教育の権利】
1. 先住民族は、自らの文化的な教育法および学習法に適した方法で、独自の言語で教育を提供する教育制度および施設を設立し、管理する権利を有する。
2. 先住民族である個人、特に子どもは、国家によるあらゆる段階と形態の教育を、差別されずに受ける権利を有する。
3. 国家は、先住民族と連携して、その共同体の外に居住する者を含め先住民族である個人、特に子どもが、可能な場合に、独自の文化および言語による教育に対してアクセス(到達もしくは入手し、利用)できるよう、効果的措置をとる。
第15 条【教育と公共情報に対する権利、偏見と差別の除去】
1. 先住民族は、教育および公共情報に適切に反映されるべき自らの文化、伝統、歴史および願望の尊厳ならびに多様性に対する権利を有する。
2. 国家は、関係する先住民族と連携および協力して、偏見と闘い、差別を除去し、先住民族および社会の他のすべての成員の間での寛容、理解および良好な関係を促進するために、効果的措置をとる。
「市民外交センター仮訳2008年7月31日」より引用


アイヌ民族の教育の権利は、自分たちのやり方で独自にやっていいことが保障されています。教育方法も施設の設置も制度もアイヌ民族のしかたでやっていい、と(14条1)。国はその協力をしなければならない、と14条3に国家の義務も書かれています。その点で、前回の“遊”の小野有五さんの講演で学んだ「土地権」とも密接に関連していくのですね。土地・自然の中で文化や生活方法の知恵を伝えていったのですから。

「教育権」は、アイヌ民族の知恵を伝達することを保障しているだけではなく、14条の2にあるように、日本国が行なっている教育を受ける権利も保障されています。差別を受けることなく学校に通うことが守られ、また奨学金制度を充実させるなどの国の支援も求められていますし、オモニハッキョ(在日コリアンの母親達が日本語を学ぶ学校)のような、識字学校などの検討も必要だと思います。
いい勉強になりました。

それと、昨日は心に触れるあたたかい時を共有できました。
いつもこの講座は質疑の時間を長く取り、参加者も意見を言ったり聞いたりできます。
また、市民の学びの場ですからアイヌ民族のことをご存知ない方も多く来られ、はじめて聞くことに戸惑いを隠せずにおられる方もいます。昨日もそのような方がおられました。そんな中、石狩のAVEさんがご自身も昨年まで何も知らなかったこと、仕事が定年になって、たまたまここに学びに来て、出会いが広がったことを涙ながらに話されたのです。
場が共感に包まれた時間でした。
昨日は疲れが溜まっており、行くのを断念しようとか思っていたのですが行ってよかったです。
生はダイナミックですね。

AVEさんと同じく、ほとんどの方がアイヌ民族のことを正しく理解できていないでしょう。教わることがなかったからです。
権利宣言15条には国家がアイヌ民族への正しい歴史と、偏見や差別がないように効果的な措置をとることを義務づけています。アイヌ民族のことを正しく教えてこなかった国の責任が問われています。学校教育において正しく教えるカリキュラムが必要でしょうし、学校教師たちも学びを必須にするべきでしょう。




凍った滝! 最近、吹雪ばかりで写真が撮れません。昨夜も荒れていました。
夜9時に終わって慌てて帰路へ。吹雪で前は見えないし、滑るしで深夜0時に帰宅。
今日は、明日のアイヌ民族委員会の準備をばっちり決めて、日曜日の準備。
明日早朝に持病の定期検査で手稲の病院に行って、教会巡りをしつつ委員会です。


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