アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

WIN AINU 学習会報告その2

2009-10-26 22:00:21 | インポート
前回blogの報告の続きです。常本照樹さんとWIN AINU学習会参加者との質疑内容をわたしのほうでピックアップし、まとめてUPします。
色変えして以下の通り。

今回の報告書に歴史記述が多いのは、有識者懇は国に対して具体的な政策の実施を促すものだから、その根拠となる部分を重要視した結果だ。細かい部分は批判もあろうかと思うが、①アイヌが日本の先住民族である。そして、②国家の意思として打撃を与えた。だから先住民族アイヌへの特別な政策を実施するには理由がある、ということは書けた。
では、「先住民族とは何か」については、本来は先住民族であるアイヌ民族が考えるべきことは百も承知しているが、今回は国に政策実施を促すのが有識者懇としての目的である以上、その限りで定義をすることは避けられなかった。この定義は二風谷ダム裁判判決当で用いられた定義だ。

報告書の大きな柱のひとつに、国民の理解を求めることがあるが、そもそも国民は加害者側であるわけで、被害者側の救済を要求するに当たって加害者に同意や理解を求めるというのは不当な話だ。それを重々承知の上でなお、今は国民が理解しないと政策が進まないのが事実であり、国民理解のないまま、あえて政策を強行すると新たな差別となることは過去の歴史をみればいくらでもある。その意味で原理的には不当だが、あえて国民の理解を求めることを書いた。

謝罪に関してオーストラリアのラット首相が謝罪したことは評価されることが多い。しかし、ラットにせよ、アメリカの各州にせよ、いろいろな謝罪が行なわれているけれども、それが直ちに具体的政策に結びついているかというと必ずしもそうではない。ラットにしても若干の教育・福祉に関する予算の付け足しはあったが基本的な政策は変わっていない。ハワイ(王国がアメリカに乗っ取られた)に対して、アメリカ政府は謝罪決議をしたが、その際、「これによって政策の変更はいっさい行なわない」と明言した。そういうことはいくらでもある。つまり、謝罪によって大きな政策の変化は望めないし、謝罪をめぐって議論に時間を費やすことで本来おこなうべき政策が遅れると考える。

最近ネットで「アイヌ優遇処置が始まった」ということばを見るが、この報告でも「アファーマティブ・アクション=優先処遇」とは言っていない。アイヌ民族と他の人たちとはそもそも同じ立場(平等)ではない。平等だけれど特別な理由で行なうのが「アファーマティブ・アクション」だが、そうではない。今回はあくまでもアイヌ民族の人々が自らを誇りをもって先住民族アイヌであることを選択できるようにすることが目的だ。

現在、具体的に政策として動いているのは以下の通り。
・ 学習指導要領に書き込む、教科書に記述するよう指導する、道内でしか配布されていないアイヌ民族の副読本を全国に配布する、教職員の研修を行なう、すでにアイヌ民族に関する学習を行なっている授業をモデルとして全国に紹介する、ユーカラ伝承者への表彰(文科省).
・ 人権擁護委員など人権に関わる人たちにもアイヌ民族への理解を促すものを配布する(国土交通省)。
・ 「アイヌ民族の日」をつくって、その日に全国的なキャンペーンを行なう。
・ アイヌ民族に関する映画やドラマ、アニメをつくって有効的なメディアで放映する(内閣官房と関連するすべてが協力)。
・ 象徴的な空間の整備(アイヌ民族への雇用も含む)
・ アイヌ語講座、指導者育成に関してこれまで以上に予算をつけたり、アイヌ語に関する音声資料収集と整理をする。あるいはアイヌ語地名由来研究を行なう(国土交通省、環境省他)。
・ アイヌ工芸品の技術向上・販路拡大、マーケティング調査、技術継承、アイヌブランド確立を国の後押しで行なう。
・ 自治体とアイヌ民族が協同して産業をつくっていく(内閣官房)
これらのことが具体的に予算要求として動き始めているから、アイヌ民族としてこれらの具体的な提案を国に投げてもらいたい。

8月12日に内閣官房にアイヌ総合政策室が設置された。内閣府と内閣官房は別物で、内閣府とは文科省などと同列だが内閣官房はその上にある総合調整機関で、官房長官の手足になって官僚組織全体を動かすもの。いちばんランクの高いところにアイヌ政策室を置いた。これがスタートとして今後より大きくなることはあるが消滅することはない。

審議機関の設置も言われているが、アイヌ民族を複数入れて永続的に発足させることを考えていると聞いている。



他に、日本の先住民族ということでは琉球もあるがどう考えたか、という質問も出ましたが、有識者懇としてはアイヌに関してのみ考えろとのことであったし時間も余裕もなかった、との応答がありました。


25日は札幌地区間交換講壇で札幌元町教会に行って来ました。
小さなこどもからお年を召された方、そして、障がいを持つこどもたちもたっくさん来られ、そのご両親も集まり、たいへんにぎやかでした。とても感動しました。
時間を頂いて、アイヌ民族情報センターの報告もさせて頂きました。特に、わたしたちの日本キリスト教団の教育委員会がアイヌ奨学金キリスト教協力会の献金を突如うち切ったことに議論が沸きました。みなさま、応援よろしくお願いいたします。


ところで、水戸黄門(月形龍之介時代)が松前藩まで出かけてアイヌ民族をいじめる悪人を倒す東映時代劇『水戸黄門海を渡る』を持っている方おられませんか? 見たい!


雪虫が舞う季節となりました。最近、よく虹を見ます。

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