アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

「エメラルド・フォレスト」と「ぼくはこうして猟師になった」

2009-01-17 17:32:19 | インポート
明日は手稲はこぶね教会から礼拝のお話をしに来て下さるので、
準備をしなくてよかった分、昨日から事務仕事や映画鑑賞、読書をして過しました。


映画は「エメラルド・フォレスト」を観ました。
これは最近お知り合いになったODAさん(北大大学院文学研究科准教授)のブログを見ていて、紹介されていたもの。
(http://odahiroshi.blogzine.jp/webessay/2008/12/post_52af.html)

1985年のアメリカ映画で、先住民族とアマゾンの熱帯雨林「開発」の関係がテーマ。
内容に関しては、詳しくODAさんのブログに書かれているので興味のある方は是非!

わたしも読んで興味をわき、すぐに購入(1500円だったので・・・)して観ました。
とてもいい映画でした。紹介してくださったODAさん、ありがとうございます。

アマゾン川流域に住む「見えない人々」の成人になるための儀、婚姻の儀、葬りの儀なども興味深く観ました
(誇張されているようですが)。

エンディングに以下のことが書かれていました。

アマゾンの熱帯雨林は一日に20平方キロメートルの割合でなくなっています。
かつて四百万人いたインディアンは十二万人しか残っていません。
数種類の部族は外の世界と交わったことがありません。
彼らは我々が忘れてしまった事をいまだに知っています。







読書は、千松信也著「ぼくはこうして猟師になった」(リトルモア社)。
千松さんは三十代前半の若者。数年前に旭川の川村アイヌ記念館のチセ(笹の家)造りで一緒に仕事をした仲。
京都大学の後輩らを連れてよく働かれました。
彼は卒論で新渡戸稲造とアイヌ民族の研究を行い、「殖民学」について調べたというので読ませてももらいました。
分かりやすく良くできたものでした。
当時はすでに猟師だったのですね。どうりで山に笹を採りにいったときの山の歩き方が違ったわけだ。

お若いのに小さい頃には薪風呂だったり、大叔母さまやお母さんが豆狸(まめだ=全国各地に言い伝えが残っている
妖怪で、親指ほどの大きさでいたずら好き)を見た話や、ガタロ(河太郎=河童)の話が自然に話題になる環境で育ち、
虫や動物などともよく触れあった子ども時代を送ったようで、思い出ばなしもとても面白い。

この本には猟師になるまでの話から、ワナの説明や実際に獲物をどう捕るか、さらに、処理の仕方、食べ方までと、具体的。
初めての鹿猟もイノシシ猟も仕留めるまで読みながら緊張するほど細かく描かれています。
猟師になりたい人への貴重な入門書と言えるでしょう。

猟をするには免許がいること、猟には期間が設定されている(11月15日~2月15日)こと、
獲ったらいけない非狩猟獣(猿など)がいること、狸やキツネは臭くて煮ても焼いても喰えない事、
いがいにアナグマは旨かったこと、どんぐりを食って育ったイノシシは脂がのって旨いこと、
イノシシの心臓の刺し方は前足から後ろへ指三本ほどの中心からがいいこと(牡丹鍋にするバラ肉を傷つけなくてすむ)、
内臓を傷つけないように解体すること(破れて肉に臭みが付かないように)、特に膀胱と肛門の処理は丁寧にすること、
内臓を取ったあと鮮度を保たせるためにすぐに氷などで冷やすこと、
カラー写真でイノシシと鹿の解体方法や皮のなめし方まで載っていました。

イノシシ肉ベーコンや鹿肉オイル漬けなどのレシピ、睾丸や血、耳や骨スープ、さらにイノシシの胆のう(薬)の使い方も。

そして網猟では無双網やすずめ猟のメカニズム、捕獲したカモの人差し指だけでのすばやい血抜き方法などなど・・・。

すんげぇ~生き方してんなぁ~と、感心しつつ、あっという間に読み終えてしまいました。

猟師である二人の師匠と出会い、ワナ猟、網猟の技術や知識、さらに狩猟にあたっての心構えから
自然に対する考え方なども学ばせてもらったそうです。
今では、けもの道に付けられた痕跡で動物の姿が見えるようになったとか。ワナ猟のマナーについても書かれていました。
毎日見回れるよう1時間ほどの距離に仕掛けるのだと。数日おくとワナにかかった獲物が死んで血が抜けず臭みが残ったり
腐ったりして食べられなくなってしまうのだと。自分が獲った獲物は最大限努力して美味しく戴くことがその動物に対する
礼儀だし猟師のマナーだと。

あとがきで彼はこんなことを書いています。

「七度目の猟期を迎えて思ったのは、やはり狩猟というのは非常に原始的な
レベルでの動物との対峙であるが故に、自分自身の存在自体が常に問われる行為であるということです。
地球の裏側から輸送された食材がスーパーに並び、食品の偽装が蔓延するこの時代にあって、自分が暮らす土地で、
他の動物を捕まえ、殺し、その肉を食べ、自分が生きていく。そのすべてに関して自分に責任があるということは、
とても大変なことであると同時にとてもありがたいことだと思います。逆説的ですが、自分自身でその命を奪うからこそ、
そのひとつひとつの命の大切さもわかるのが猟師だと思います」


う~ん。分かるような気がします。
自分は命の大切さを分かっていないかも・・・とも。
さらに、彼は自然との共生の大切さについても述べていました。

読みながら、アイヌ民族も狩猟民族としてこのような豊かな生き方をしてきたんだろうな、と思いました。
お勧めです。薦めてくれたHATAさんありがとう!





朝焼けの大雪(12日早朝の網走に向かう途中で)