アイヌ民族情報センター活動日誌

日本キリスト教団北海教区アイヌ民族情報センターの活動日誌
1996年設立 

島国・大和民族・単一民族

2007-02-27 15:16:57 | インポート
font size="2">たまたま読んでいた本「日本社会と天皇制」網野善彦著(岩波ブックレットNO.108 1988年2月22日発行)に、
日本は“島国の中の単一民族か”の問いに、はっきりと否と言っています。
「海に囲まれた島国」感覚は、海が人とひとを隔てる役割をはたすと見ているのですが、むしろ、時代を遡ればのぼるほど、海は人と人を結びつける機能を持っていることがわかる、と。

「アイヌはどこまでも続く道(海)を小さな舟ひとつで出かけていって貿易をした」と、あるエカシ(翁)が言われたことを思い出します。海はどこにでもいける道だったのですね。


白老ポロトコタンの湖に浮かぶチプ

もう一つ、よく言われる「日本は均質な民族である」との考え方にも網野さんは否を言います。
たとえば東日本と西日本はイギリス人とドイツ人、スペイン人とイタリア人などの差異と同じぐらい異質だ、と。事例として最近(昭和40年代)の統計でも、東日本人と西日本人の結婚の比率は10%以下だとか(それほど東西の交流が少ない)。そもそも縄文時代から弥生時代に移るのが東日本のほうが200年ほど遅かった、西日本と東日本よりも西日本と朝鮮半島の社会の類似性のほうが高かった、と。

「日本を単一民族とするみかたで、日本の社会をみてしまいますと、そういう違い(東西の全く違った二つの社会)がまったくわからなくなってしまいます」(同著18ページ)

「さらにもう一つ」と、網野さんは、日本と言う国は7,8世紀以来から現在まで「日本国」という一つの国家だけあったという「単一国家」説の批判を続けます。
14~15世紀には確実に成立していた琉球王国、さらに北海道の南部にかかわりがあったであろう夷千島(えぞがちしま)王と名乗る人が活動し、その使いが昆布やトナカイの角、錦・綾などの織物(蝦夷錦?)を持って朝鮮国王に献上したという事実が確実な資料から出てきた、と。当然、アイヌ民族もいたわけです。

asahi.comによると、伊吹文部科学相が、日本について「極めて同質的な国」などと発言したことについて26日、記者団に「単一民族なんて言っていない。日本国民が、大和民族がずっと統治してきた国で、そういう意味で極めて同質性があるということを言った」と述べたとありました。

網野さんの説によればそれも間違いですね。
そして、単一民族とは言ってはいませんが、日本が「日本民族が、大和民族がずっと統治してきた国」と言うときに、少なくともアイヌ民族や琉球王国の人々は入りませんね(もっぱら大和民族とは「本州・四国・九州の領域に住む民族」(ウィキペディア)との説明がありますが)。

「海で隔てられた島国」、「単一民族」という考えから発想すると、「大和民族がずっと統治してきた国で」「極めて同質的な国」となるのでしょうね。

その発言に対して安倍晋三首相は、首相官邸で記者団に対し「(日本は)だいたい仲良くやってきたということじゃないか。特に問題だと思わない」と擁護した(毎日新聞)、と。「だいたい」って?「じゃないか」って? なんだか、真面目な返答ではありませんね。


先住民族のみならず、日本・大和民族・単一民族ということも深めて行きたいです。