騒々しい世相だからこそ心の平安を求めて現世を逃避する衝動に
駆られて寄り道をしながら模索した。それも又、一つの生き方であ
る。懸案の世界名作 大河小説を読破するのも終生の願望だった。
頻発する事件事故のささやかな論評を試みるのも価値があると思
うのだが、一歩、引き下がり人生を俯瞰するに過去を振り返り未来
を予見する事が有力な手段だとも思った。それには定番となってい
る世界の大河ロマンにその糸口を見出すのが有効であるのでは、
と思う・・・。トルストイの「戦争と平和」は波乱万丈の雄大な人間模
様を描ききった名作である。梗概を概観しながら感想を述べたいと
思う。・・・『「戦争と平和」から→「戦争と民衆」が事の本質を表現し
ている表題ではないのかと思う。帝政ロシアの貴族の生活を活写し
ながら実は<民衆の強かさ、エネルギー>が主題になってい
る。』・・・1805年のナポレオン戦争勃発から15年間の戦争を背
景として描いた大河ロマンである。トルストイは5年をかけて完成し
た。ロシア貴族の興亡を通して新しい時代への息吹を描写する。そ
れは歴史小説にもなっている。全編を貫いている普遍のテーマは
時の貴族や皇帝ではなく歴史に翻弄されながらも逞しく生きる<民
衆のエネルギー>であり<限りなく生き切る逞しさ・強かさ、生き方
>である。歴史の舞台に登場する民衆の総体であり総和である。
因みにロシア語では「平和」も「地球」も「民衆」も同一の単語であ
る。だから「民衆」が→「平和」と翻訳された。・・・歴史的背景を観
るに第一次ナポレオン戦争勃発直前(1805年)から1812年の祖
国戦争とエピローグまでの15年間の戦争である。60万の大軍を
率いたナポレオンのロシア侵入の1816年からの舞台である。ナ
ポレオン軍はロシア軍の抵抗を受けることなくモスクワに入城する
が大火によって廃墟と化したモスクワを撤退する羽目になる。そし
てロシア軍の追撃を受けるに到る。その間の登場人物は優に550
人を超えている。実在の人物としてはアレクサンドル一世やナポレ
オン、トルストイの肉親など多彩である。主要人物はアンドレイ、ピョ
ートル(愛称ピエール)、ナターリア(愛称ナターシャ)の3人の人生
模様で描かれている。当事の貴族社会の虚偽、欺瞞、退廃と対極
にある対照的な民衆社会、理知と素朴、人工と自然、その対比が
見事に浮き彫りにされる。文豪トルストイならではの離れ業であり
見事な活写である。人間の素朴さと雄大なロシアの自然との対
比、トルストイの自然を愛し人間肯定の思想が如実に顕現されてい
る。温故知新は世界の、日本の、名作に紐解くのもその回答が得
られる。有閑マダムならぬ有閑亭主族は偶(たま)には定年の特権
を有効に活用して読書三昧に浸るのも乙なものである。端折って記
述したが一度は世界の日本の名作を渉猟するのを薦めたい。・・・
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