前哨としてヴェルレーヌの高名な詩から奏でる・・・「秋の日のヴィオロンの溜息の ひたぶる に心悲し<うらがなしい>~」・・・記憶は定かではないが青春期に意気揚々として "ひたぶる" に暗唱した一齣である。 注:ひたぶる(頓・一向)=一途なさま。向こう見ずなさま。・・・
「秋の歌」(「土星びとの詩」より)/ポール・ヴェルレーヌ
・・・《原詩を直訳》・・・
秋の ヴァイオリンの 長いすすり泣きは 単調な物憂さで私の心を傷つける。息苦しく青ざめた すべて、時を告げる 音の鳴るとき、 私は昔の日々を思い出し そして私は泣く。そして私は去って行く 意地悪い風に 運ばれて こちらに、あちらに、枯れ葉の ように。・・・
【注釈】上田敏の名訳で有名なヴェルレーヌの詩「秋の歌Chanson d'automne」である。邦訳・翻訳に際し原作以上の名訳とされているが一語一語の字句の解釈の相違で賛否両論があるが省略させてもらう。・・・
さて、秋を代表する名歌・・・『旅愁』・・・原詩は次の通り―
Dreaming of Home and Mother Dreaming of home, dear old home! Home of my childhood and mother; Oft when I wake 'tis sweet to fine, I've been dreaming of home and mother. Home, dear home, childhood's happy home When I played with sister and with brother, 'Twas the sweetest joy when we did roam Over hill and thro' dale with mother. Dreaming of home, dear old home, Home of my childhood and mother; Oft when I wake 'tis sweet to fine, I've been dreaming of home and mother.
『更け行く秋の夜、旅の空の、わびしき思いに、ひとりなやむ。恋しやふるさと、なつかし父母、夢じにたどるは、故郷(さと)の家路(いえじ)。更け行く秋の夜、旅の空の、わびしき思いに、ひとりなやむ。』 ~以下、略。
【注】:作詞の犬童球渓の「旅愁」の舞台は丹波柏原の八幡神社の森の社。軍国色濃厚な当時の世相を反映し赴任中の音楽教師の追い出しの一幕に「心痛め夢破れ~」としたのである。秋の夜長に青春時代を振返ってみるのも心の休養には良き栄養剤となる。原詩を翻訳してみるのも頭の体操になり恰好の資料で頭と心には一挙両得だ。暫し世知辛い世相を離れ一服の清涼剤を堪能しよう!・・・