フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

11月8日(日) 雨

2015-11-13 00:50:11 | Weblog

7時、起床。

昨日は持ちこたえてくれた天気だが、今日は朝から雨が降っている。高原の晩秋の雨だが、寒くはない。むしろ暖かくさえある。変な天候だ。

8時に和楽亭を立って、Kの車で茅野駅まで送ってもらう。

朝食は美味しいと評判の駅構内の立ち食い蕎麦屋で食べる。

生蕎麦から茹でるので普通の駅蕎麦より少々時間はかかるが、美味しい。山菜、かき揚げ、生卵が入っている。

9時8分発のあずさ1号に乗って松本へ。30分ほどで松本到着。

ホテル(ドーミーイン)で宿泊の手続きをして荷物をあずかってもらい、街歩きの開始。

ブックカフェ「栞日」(しおりび)に立ち寄る。

前回、8月31日に坂井先生に連れてきてもうったカフェである。

私には最初に誰かに教えてもらって、馴染みの店になったカフェが何軒かある。「まやんち」しかり。「パン日和あをや」しかり。この「栞日」もそうなるだろう。

コーヒーとドーナツを注文し、若いご主人とおしゃべりをする。

雑誌を3冊とポストカードを3枚購入する。

  絵葉書を出してみようか冬の旅  たかじ

散歩の初めに本を購入するのは(荷物になるので)あまり賢いやり方とはいえないのだが、一方で、食物や本や人との出会いは一期一会であるから(とくに旅上では)、そのときに購入するのがベストだともいえる。おそらく坂井先生なら購入して店で預かっておいてもらって、あとで(宿に戻るときや電車に乗る前に)受け取るだろう。私の場合、それだと重量を気にしなくてよくなるので、買物をしすぎてしまう恐れがある。手にしている品物の重量がおのずと買物の歯どめになっているのである。

松本市立美術館に行く。松本に来たときはたいてい行く。春夏秋と三回来て、それぞれ違う企画展をやっていてくれるので楽しめる。

とくに秋は館外の自然の芸術も楽しめる。、

人工池の水面に落ちた枯葉が・・・

紅葉の山を貼り絵的手法で描いている。

今回の企画展は「橋本邦雄と幻の四天王」。日本美術学校(芸大の前身)の一期生である4人の画家(下村観山、横山大観、菱田春草、西郷弧月)と彼らの先生(橋本邦雄)に焦点をあてた企画展。

大変興味深かったが、発表当時「朦朧体」と揶揄・批判された作品にとくにひかれた。それは日本画の基本的特徴であるはっきりした輪郭線のない日本画で(下の2枚のポストカードの絵は菱田春草の作)、日本画に西洋画の技法を積極的に取り入れようとした跡が見える。

ショップにて本を購入。

西郷弧月という名前はこの企画展で初めて知った。30代で亡くなった不遇の画家だったようであるが、下のポストカードの絵は彼の代表作 「春暖」。芥子の花の中の馬を描いた作品で、なかなかに味わい深い。

ギャラリーカフェ「ガルガ」に行く。

一階はカフェで、これまでここで個展を開いた作家さんたちの作品が展示・販売されている。

まずは腹ごしらえ。チキンカレー(中)を食べ、デザートにモンブランを食べた。

二回は企画展示室。今月の展示会は阿久津真希「ポトフの器」展。

モノトーンのすっきりしたデザインの器たち。

オブジェも少々。 

色違いのコーヒーカップを2個購入。研究室で使う。

一階のショップでも購入。

これは「phono kafe」へのお土産。大原さんはもう体調は回復されたろうか。

これは自分用のポーチ。

これも自分用のペンダント(「ガルガ」のご主人の作品)。

「ガルガ」を出て、ホテルにチェックイン。「栞日」と市立美術館と「ガルガ」で購入した品物を部屋に置いて、再び外出。

「開運堂」で買物をしているときに見知らぬ男性に「大久保先生でいらっしゃいますか?」と話しかけられる。「えっ?」とその男性の顔を見ながら、どこかでお会いしたことのある方かを必死で思い出そうとするが思い出せない。

男性は名刺を差し出した。愛知県立大学の久保田先生という方である。「あっ、どうも」とあいまいな返事をする。「先日、本をお送りした者です」と言われる。「あぁ・・そうでしたか。ありがとうございます」とあいまいない返事をしつつ、それが何の本であったか思い出そうとうするが思い出せない。見知らぬ方からときどき本を送っていただくが、「先日」とおっしゃているから最近のことであろう。しかし、思い出せない。一番最近ちょうだいした本は岡部先生ほか3名の方の共著『ズレてる支援』(生活書院)であるが、その3名の中に久保田先生のお名前があっただろうか? いや、なかったと思う。う~ん、わからない。結局、事情が呑み込めないままにしばしの会話を交わし、「では、失礼します」と言って先に店を出た。

【後記】11月11日(水)、大学に出ると、教員ロビーのメールボックスに久保田先生からの本が届いていた。そうか、私が旅行に出ている間に届いたのか。通りでわからなかったわけだ。

久保田貢『知っていますか?日本の戦争』(新日本出版社)

面識がなく、専門も違う私になぜ本をお送りいただいたのかという疑問は、添えられていたお手紙を読んで氷解した。久保田先生は私のブログの読者だったのである。ご実家も大田区で、「phono kafe」にも行かれたことがあるそうだ。「開運堂」で私を見かけて私であることがわかったのはブログの写真で私の顔をご存じだったからである。そうか、そうだったのか。このブログをいま久保田先生はご覧になっているだろうから、この場を借りて、本をいただいたお礼と、先日の失礼をお詫びを申し上げます。ありがとうございました。そして失礼いたしました。 

手紙の最後には、「松本には講演仕事でときどき行きますし(週末も行きます)、実家も時おり行きますので、どこかでお目にかかる機会があるかもしれません。その折にはお散歩のお邪魔にならないようにお声をかけさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」と書かれていた。

まさに予言どおりになったわけである。びっくりぽんや。

「コトコト」に顔を出す。いつものご主人ではなく、女性が店番をされていた。てっきり娘さんかと思ったら、奥さまであるとのこと、びっくりした。

奥さまは明るく楽しい方で話が弾んだ。

yanyanさんにお願いしてキープしてもらっていた刺繍ポーチ「けちらしてやれ!(エール)」を購入。面白いタイトルであり、デザインである。

これも購入。「リボンのヤング」

これも購入。「めがねのぼうしちゃん」

「グレイン・ノート」に顔を出す。

マダムは村上春樹訳のレイモンド・チャンドラー『リトル・シスター』を読んでおられた。村上春樹の翻訳もの、とくにサスペンスが大好きなのだそうである。

しばらく文学談義をしてから、湯呑(お気に入りの作家田中一光さんの作品)を1個購入して店を出る。

夕食は「女鳥羽蕎麦」で食べる。以前、「パン日和あをや」のご主人が私に話してくれた「女鳥羽川沿いにあるお蕎麦屋さん」というのはここかもしれない。

鴨肉のローストを前菜として注文。

一番人気の三段重ねせいろ。

上段には海苔。

中段にはとろろ。

下段には抹茶がのっている。

蕎麦甘味「女鳥羽の友」。この蕎麦がきはもちもちで美味しかった。次に来たときは蕎麦がきをメインで注文してみよう。

夕食を終え、すぐにはホテルに戻らず、夜なのに暖かかったので、街をぶらぶらする。

普通のお店は閉まっているが、遅くまでやっている「想雲堂」という古書カフェがあったので、入ってみる。

店内を一目見て気に入った。 

コーヒーを注文。

長居を決めて小倉トーストも注文。

地方都市はお店が早くしまるのが私のような人間には困りものであるが(居酒屋とかバーには入れない)、こういうカフェがあるのはありがたい。今後、松本の夜はここで決まりですな。 

8時頃、ホテルに戻り、最上階にある露天風呂に浸かって、今日一日の疲れを取る。ドーミインはこの露天風呂が魅力である。

部屋のテレビで『下町ロケット』を観る。大衆演劇の王道をゆく展開(勧善懲悪)であり、演出(単純明快)である。

旅行中のブログの下書きなどを書いて、12時就寝。