フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

8月12日(火) 晴れ

2008-08-13 02:47:22 | Weblog
  この時期、一般の会社は夏休みのところが多い。大学の事務所も今週は閉まっている。世の中全体が夏休みの真っ只中である。娘も今週は夏休みだが、週末に劇団の公演があり、最後の追い込みで連日稽古に出かけている。前回の公演は3人芝居だったが、今回は2人芝居なのだそうだ。

  ドラマティック・カンパニー・インハイス第4回公演「夜見の鳥」
  作・演出:左観哉子
  出演:紺田タカシ・大久保舞子
  於:アートスペースプロット(阿佐ヶ谷)
  日時:8月16日(土) 13:00 16:00 19:00
     8月17日(日) 13:00 16:00
  料金:2000円(前売り・当日)
  問い合わせ:inhighs@ezweb.ne.jp

  午前中のルーティンワークを終らせて、新宿武蔵野館へ是枝裕和監督作品『歩いても歩いても』を観に行く。この映画については、7月の初旬に心理学の豊田先生から「今年のこれまでのナンバー1」とのメールをいただき、放送大学の坂井先生も御自身のブログで取り上げておられた。このお二人が高く評価している作品であれば間違いはない。夏休みになったら観ようと思っていたが、今日、ようやく観みることができた。小津安二郎の『東京物語』が家族の崩壊の物語であるとすれば(小津自身がそう言っている)、『歩いても歩いても』も同様の意味で家族の崩壊の物語である。ただし、ガラガラと音を立てて崩れ落ちるような崩壊ではなく、耳を澄まさなければ聞こえないほどの静かな軋みの音を伴った崩壊である。うっかりすると「ほのぼのとした家族」のある夏の一日の物語だと誤解する人もいるかもしれない(まさか)。考えてみれば、世の中の多くの家族はややもするとバラバラになってしまいそうな家族の断片をセロテープで繋ぎ止めながら、なんとか家族らしい体裁を整えてやっているのかもしれない。老人も中年も若者も子どもも、それぞれの立場で、家族の軋みの音を聞きながら、でも聞こえない素振りをしながら、その場その場の修復作業に勤しんでいる。観客はみな各自の立場でこの映画の中に自分の同士を観る思いがするであろう。したがってそこには共感と慰めがある。家族というのはやっかいだが、でも何とかやっていけるだろうと。

         
         
  帰りに、恵比寿で途中下車して、東京都写真美術館で開催中の「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」展(第一部)を見物した。第三部まであるので、感想はいずれまとめて書くことにする。

         
                      あめりか橋から