フィールドノート

連続した日々の一つ一つに明確な輪郭を与えるために

4月28日(金) 晴れ

2006-04-29 02:01:51 | Weblog
  地下鉄早稲田駅側の「サブウェイ」で昼食用にサンドイッチを買う。新発売(期間限定)のアボガドベジーを注文。「サイズはどういたしますか?」と聞かれたので、以前B.L.TサンドイッチのMサイズを注文していささかもの足りなかった記憶があったので、今回はLサイズを注文してみた。目の前で注文した品が作られていく。LサイズというのはMサイズ(15センチ)の1.5倍くらいかと思っていたら、2倍だったので驚いた。ボリュームたっぷりだ。しかし、もっと驚いたのは、完成したLサイズのサンドイッチを、私に何の断りもなく、包丁でさっくり2つにカットしてしまったことだ。そ、それじゃあ、Mサイズのサンドイッチを2個注文したのと同じではないか?!いや、金額的には同じではなくて、Mサイズ2個の場合は360円×2=720円だが、Lサイズは660円で、60円お得なのである。しかし、私が言いたいのはそういうことではない。LサイズのサンドイッチはLサイズであることに意味があるのである。10カラットのダイヤと5カラットのダイヤ2個では、絶対、10カラットのダイヤの方が価値があるはずである。ああ、Lサイズのサインドイッチを両手でもって頬張りたかった。一瞬、駄々をこねてみようかとも思ったが、職場の近くということもあり、思いとどまった。
  ある授業で、学生に父親の職業を尋ねていたときに、「小説家です」と答えた学生がいたので、「えっ、小説家?! お名前は?」と聞くと、有名な方だったので、驚いた。
  その授業の後、研究室に戻ろうとキャンパスを歩いていると、この春大学を卒業したばかりのOさんが私を見つけて駆け寄って来て、「今朝、先生が夢に出て来たんです!」と言ったので驚いた。一瞬、何と返答していいかわからず、「そ、そうですか」と答えたが、研究室に戻ってから、「いや~、偶然だね。実は、僕もあなたの夢を見たんですよ」くらいのことは即座に返せないといけなかったなと反省した。まだまだ未熟である。
  別の授業で、授業が終わった後、一人の学生が教壇のところに来て、自己紹介をした。この春、社会科学部の大学院に入学したS君である。私の授業を聴講したいのだという。大学院の学生が学部の授業を聴講というのは珍しい(大学院の演習を履修したり、もぐったりするのが普通である)。「研究テーマは何ですか?」と尋ねたら、「清水幾太郎です」と答えたので驚いた。正直、今年になって一番驚いた。20代の青年が「忘れられつつある思想家」清水幾太郎の研究で修士論文を書こうとしているとは!
 「しかし、何でまた清水幾太郎なの?」
 「清水の本を読んで興味を覚えました」
 「何を読んだの?」
 「『倫理学ノート』です」
 「『倫理学ノート』! 最初に『倫理学ノート』を読んだの?!」
 「はい」
『倫理学ノート』は清水の98冊の著作の中で最高峰の一つで、おそらく一番難度の高いものである。普通は、『本はどう読むか』とか、『論文の書き方』とか、『社会学入門』とか、その辺りから入るものである。最初に『倫理学ノート』というのは、登山の初心者がいきなり冬の槍ヶ岳に挑むようなものである。しかも「それで清水に興味をもちました」とは恐れ入る。学部の授業では清水幾太郎の話なんかしないから、大学院の演習の方に来るように勧めたが、S君は昼間は会社勤めをしていて夜間の授業でないと出られないのだそうだ。そうですか、じゃあ、たまにこうして清水の話でもしましょうと言っておく。
  というわけで、今日はいろいろと驚くことがあった。