花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯の種類-腹合わせ帯-

2008-04-15 | 帯の種類

presented by hanamura


「腹合わせ帯」について

「花邑の帯遊び」の第1回目で
「名古屋帯」について※お話ししましたが、
帯には、名古屋帯のほかに10種ほどの
仕立て方やつくりが異なるものがあります。
これからは、その帯の種類についてお話ししていきましょう。
今回お話しする帯は、まず「腹合わせ帯」です。



「腹合わせ帯」とは、同じ寸法の布地2枚を合わせて
仕立てた帯のことです。
「腹合わせ帯」の寸法は、長さ9尺5寸、巾8寸~8寸2分。
この寸法は「名古屋帯」と同じです。
そして「名古屋帯」のように、
おもにふだん使いの着物に用いられます。

しかし、かたちは「名古屋帯」とは若干異なります。
「名古屋帯」は前巾を、お太鼓巾の半分で仕立てた帯です。
一方「腹合わせ帯」は、お太鼓のたれから手先までを
まったく同じ巾に仕立てた帯のことを指します。

そのため、帯を結ぶときには、
お腹の部分にあたる前巾の部分を折り合わせなくてはいけません。
このことから「腹合わせ帯」という呼び名がついたようです。

はじめから前巾が折り合わされて、
仕立てがされている「名古屋帯」の便利さに慣れてしまった現代では、
帯を結ぶときに手間がかかると感じる人もいるでしょう。

しかし「腹合わせ帯」は、大正時代までは
もっとも着用されていた帯だったのです。

「腹合わせ帯」は元禄時代(1688年~1703年)につくられたのが
はじまりだといわれています。
現在のものとはかたちがすこし違っていました。

当時の寸法は、長さ1丈5寸8分、巾8寸。
巾は、現在とあまり変わりませんが、
長さは、1尺(3.8cm)ほど長く仕立てられています。
これは、帯の結び方が現在とは違うためです。

また、当時の「腹合わせ帯」は、
黒天鵞絨(くろビロード)と白繻子(しろしゅす)を合わせたものでした。
表地と裏地を反対の色で仕立てたことから、
「昼夜帯」または「鯨帯」とも呼ばれていたようです。

「腹合わせ帯」は、江戸から明治にかけて庶民たちに愛用されました。
しかし、大正時代に「名古屋帯」が考案され、
戦争などで布が不足になったこともあり、
「腹合わせ帯」を結ぶ人は、しだいに減っていきました。

しかし、現在でも「腹合わせ帯」がなくなることはありません。
それは、「名古屋帯」とは違った特長があるからです。

「腹合わせ帯」は、前巾にあたる部分が折られていないので、
体形に合わせて前巾を調節することができるのです。
前巾が調節できれば、
身長に合わせてバランスよく着物を着こなせます。



また、むかしとは違って、
表地と裏地の色柄をさまざまに合わせることもできます。
いわばリバーシブルの帯なのです。
一般的に「腹合わせ帯」は、
「名古屋帯」よりも高価なものですが、
1本で2度楽しめるので“お得な”帯ともいえますね。

「名古屋帯」とは一味ちがった「腹合わせ帯」を
ときには楽しんでみるのもいかがでしょうか。

※2007年12月07日更新のブログ「名古屋帯について」を参照してください。

● 写真の腹合わせ帯は、帯のアトリエ「花邑hanamura」にて販売しています。

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次回の更新は4月22日(火)予定です。


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