花邑の帯あそび

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「竜田川文様」について

2009-09-22 | 文様について

presented by hanamura


明日は秋分の日ですね。
爽やかで気持ちの良い秋晴れの日が続いています。
そろそろ紅葉が色づきはじめる季節なので、
この連休中にハイキングや山登りに
行かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、今回は紅葉がモチーフになった
「竜田川文様」についてお話ししましょう。

「竜田川文様」とは、
色付いた紅葉が川に流れていく様を
意匠化した日本の伝統文様です。
この「竜田川」とは、
どのような川でしょうか。

竜田川は実際に存在している川です。
古来から紅葉の名所として有名な
奈良県斑鳩(いかるが)にある竜田川が
その名前の由来になっています。



川の縁に植えられた紅葉は、
秋になると葉が色づき、
秋風に吹かれると川にひらひらと落ち、
川には色づいた紅葉が浮かび、流れていきます。

秋の竜田川の景観は、
豊かな四季がある日本ならではの
美しい情景のひとつといえるでしょう。
そのためか、万葉集や百人一首には
この竜田川の情景を詠んだものが多いようです。

その中でも有名なのは、
「ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは」
ではないでしょうか。
これは奈良時代の歌人、在原業平の美しい和歌です。
上方落語の人気演目のひとつ、
『千早振る(ちはやぶる』の題材としても有名ですね。

この歌を現代語で訳すと、
「神々の力で不可思議なことがいくらでも起こった大昔にも、
このようなことがあったとは聞いていない。
龍田川の水を美しい紅色に括(くく)り染めするとは」
になります。

ちなみにこの中の「括り染め」とは、
「所々を糸で括って染め上げた布のような」
という意味合いで、
女性の衣服である着物の染め文様を表しています。



この歌を詠んだ在原業平は、
伊勢物語の主人公のモデルにもなっているといわれ、
古代から色男の代名詞としても用いられてきました。

モチーフとなった竜田川の美しい情景を想い起こさせるだけではなく、
この唄を詠んだ在原業平の艶をも感じさせる「竜田川文様」は、
秋の情緒にぴったりな文様であるといえるでしょう。

※写真の竜田川文様の丸帯は花邑にて取り扱っています。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は9月29日(火)予定です。


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