花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

和更紗の文様について-昭和初期-

2009-09-15 | 和更紗

presented by hanamura


晴れたり雨が降ったり、
すっきりとしない天気が続いていますが、
雨が降るたびに気温が下がり、
秋が深まっていくようです。

さて、花邑では9月1日から「更紗の帯展」を開催しています。

この企画展にちなんで
こちらのブログ「花邑の帯あそび」では、
和更紗の文様についてお話しをしてきました。(※1)

和更紗の文様は、
製作された時代の影響を色濃く受けながら、
さまざまな特徴を持ち、変化してきました。

江戸時代の異国への憧憬が表現されたような文様、
明治時代の古い文化と新しい文化が融合した文様、
大正時代の文様は、細かで洗練された柄行きが粋な文様でした。

今回は、続けて大正時代後期から昭和初期頃の
文様についてお話しします。
第一次世界大戦が終わって好景気に沸いた後のこの時期は
第二次世界大戦の予兆も見えはじめますが、
科学技術が飛躍的に発展し、
新しいものが続々と発明され、
社会全体に活気が満ちあふれた時代です。

東京では日本初の地下鉄が走るようになり、
テレビやラジオなども世に出ました。
また、自動車も多く製造されるようになり、
自家用車を購入する人も徐々に増えていきました。

いままで見たこともない新しい技術や製品に、
当時の人々は驚きと興奮を覚えたことでしょう。
その驚きをあらわすように、
この時期につくられた和更紗には、
電車、自動車、テレビなどをモチーフにしたものが
数多く登場します。

一方、それまで和更紗の文様に用いられる文字というと、
和歌を詠んだ「かな文字」や「漢字」が多かったのですが、
この時期の和更紗には「カタカナ」が多く見られるようになります。

これは、当時の教科書や新聞に「カタカナ」が
多用されていた
ということもありますが、「カタカナ」を通して、
それまでとは異なる時代のニュアンスが
微妙に表現されているのでしょう。

外国人の方には「日本語=カタカナ=近未来SF=クール!」
と感じるという方も多いといいますね。



上の写真は、日本のおとぎ話を意匠化した和更紗です。
うさぎが手を添えているものは小舟です。
小舟の後尾には「タヌキ」と書かれていますね。
皆さんおわかりの通り、
おとぎ話の「カチカチ山」をモチーフにした意匠のようです。

たぬきの絵を意匠化するのではなく、
カタカナで「タヌキ」と書いて、
柄のアクセントにしている点がおもしろいですね。

この時代の和更紗には、
上の和更紗のような、日本の伝統文様を土台としながらも
新しい時代の文化を大胆に取り入れた、
たいへん変わっているものが増えてきます。
思わず微笑んでしまうようなものも
数多くありますね。

そこには、明治時代の和更紗にも見られるような
新しい時代への希望とともに、
まさに日本が西欧化、近代化をさらに深めていくうえでの
変革への意識といったものが潜在的に具象化されている気がします。

※写真の和更紗は「更紗の帯展」にて取り扱っています。

(※1)2009年8月25日更新のブログ「和更紗の文様について」を参照してください。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は9月22日(火)予定です。


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