花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯仕立ての道具-帯芯-

2008-02-12 | 帯仕立ての道具

presented by hanamura


「帯芯」について

「帯」には欠かすことができない帯芯。
今回は、その帯芯についてお話します。

帯芯の素材には、「三河木綿」※などの木綿が
古くから使われてきました。

絹や他の素材ではなく、
なぜ木綿が帯芯として使用されるのでしょう?
それは、木綿が「丈夫でしなやか」で、
ほどよい伸縮性をもっているためです。

絹や化繊などの素材は、伸縮性がとても少なく、
帯芯と合わせる帯反が少しでも伸縮してしまうと、
帯反との馴染みが悪くなってしまいます。
そのため、仕立てあがった帯が歪んでしまうのです。
しかし、木綿はほどよい伸縮性をもっているので、
帯反が伸縮しても、
その伸縮に合わせることができ、
仕立てあがった帯が歪むことはありません。

一方、伸縮性をもつ木綿には、
水につけると縮んでしまうという性質もあります。
汗や湿気などで縮んでしまうこともあります。
そのため以前では、
帯芯にする木綿には必ず「湯のし(水通し)」をしていました。
はじめから水に通し、縮ませておくことで、
水分によって縮んでしまうのを
最小限にすることができるのです。

「湯のし」は、たいへん手間のかかるものだったようです。
帯芯1枚1枚に霧吹きをていねいにかけ、干して乾かし、
十分に縮めてから使用していました。
雨の日には家中の天井から帯芯が
「いったんもめん」のように垂れ下がって、
干されていたようです。

現在の帯芯用の木綿には、
はじめから「湯のし」、または「防縮加工」がなされています。

また、帯芯の表面をよくみると、
片面がすこし起毛していることがわかります。
この起毛しているほうを帯反側にして
帯芯と帯反を綴じて(=縫い合わせて)いきます。



帯反と帯芯の合わせる面が滑らかだと
帯を結んだときに帯芯がずれてしまい、
かたちを保ちにくくなります。
しかし起毛していれば、
帯反と帯芯は、ずれにくくなります。

実は、この起毛の処理も
いまでこそはじめからなされていますが、
以前はそうではなかったようです。

ひと昔まえは、
帯反と帯芯をずれにくくさせるために
真綿を用いていました。
20cmから30cmほどの真綿を4枚に裂き、
「湯のし」をした帯芯の表面に1等分をうすくのばして、
均等にひいてから帯芯を綴じていたようです。



上の写真は、昔の帯をほどいたものです。
中に入った帯芯に真綿がひかれているのがわかるでしょうか?

昔は、帯芯を帯に綴じるのにも
一苦労だったんですね。
しかし、両方とも帯反と帯芯の馴染みをよくするための知恵であり、
とてもたいせつな作業でした。

現在使われている帯芯は、
こうした昔のような手間をかけずに、
そのまま帯に綴じることができます。

また、帯芯の種類も増え、
季節や帯の種類、帯反の硬さによって
帯芯の厚さとやわらかさが選べるようになっています。
黒や朱色などの色がついた帯芯もあり、
帯反の生地に合わせて応用がきくようなものも
つくられています。

しかし、現在のような手間のかからない帯芯が
つくられるようになったのは、
昔の職人たちのかけてきた手間が
現代へと伝えられてきたからこそでしょう。

上質な帯を仕立てるために欠かすことができない帯芯。
その帯芯には「上質な帯をつくる」ための職人たちの
「こころ」がたくさんこめられているのです。

※1月22日更新のブログ「三河の味」を参照してください。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2月19日(火)予定です。


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