花邑の帯あそび

1本の帯を通して素敵な出会いがありますように…

帯仕立ての道具 -あて布とネル-

2008-02-19 | 帯仕立ての道具

presented by hanamura


「あて布とネルについて」

シャツやスカートなどの布にできたしわをのばしたり、
折り目をきれいに整えたりするときには、
「アイロン」をかけますよね。
「アイロン」は、だいたいどこのおうちにも
1台はあるでしょう。

帯仕立てのときにも、
日常生活で用いるのと同じ目的で、
アイロンを使用します。

帯になる「布」=「帯反」に
アイロンをかける場合は、
「あて布」と「ネル」をつかいます。

「あて布」は、日常アイロンをかけるときにもつかいますよね。

Tシャツぐらいの薄い木綿布を
のばしたり整えたりしたい布地の上にかさねて敷いて
アイロンをかけます。
布地に「てかり」が出てしまうことを防ぐためですね。
アイロンをかけると、布の繊維はアイロンの圧力によりねてしまうため、
表面に「てかり」が生じてしまいやすいのです。

あて布は帯仕立てでも同じようにつかわれます。
また、「てかり」を防ぐことのほかにも
アイロンと帯反との「クッション」のような役割もはたします。
同時に、たいせつな帯反に傷がつかないように守る役目もします。

このため、帯反の表地にアイロンをかけるときに
あて布は欠かすことができません。
アイロンをかける範囲の広さによって使い分けられるように
長さや幅がさまざまなあて布を揃えます。



一方の「ネル」は、帯反の下に敷いて使用します。

「ネル」とは、「コットンフランネル」の略語です。
起毛をしている毛足の生地は、厚くて丈夫。
肌触りがやさしいのでベビー服やパジャマなどにも
よく使用されていますよね。

帯仕立てのときの「ネル」は、
「地伸し(地直し)」のときに使用します。

「地伸し」とは、
仕立てる帯反の布目をまっすぐにする作業のことです。
布目は、たいてい左右どちらかにひっぱられて歪んでいます。
まっすぐな帯を仕立て上げるためには、
布目をまっすぐにしてこの歪みを直さなくてはなりません。
ネルはこのときにつかいます。

まず仕立て台の上に「ネル」を敷きます。
そして帯反を裏返してネルの上に置きます。
このとき帯反の布目は、
ひっぱられているほうが右側にくるようにします。

次に 置いた帯反に霧吹きをかけていきます。
そして、 帯反の右側に自分の右足をのせ、
体重をかけて布を固定します。
右足を重石がわりにして手で布を左にひっぱりながら
アイロンをかけていきます。

このとき 起毛した「ネル」は、布が滑らないように、
そして帯反の表側が傷つかないようにするためにつかわれます。

この「地伸し」という作業は、力のいる仕事です。
もちろん繊細さも求められる作業ですが、
なによりも「地伸し」をしているときの姿は、
男まさりを感じさせる風景です。

想像してみてください。
仕立て台の上に足を上げて、布と奮闘している女の姿。
「よござんすね」とでも気張ってしまいそうです。
でも、着物が持つ清楚なイメージとはちょっとかけ離れているので
あまり人にはお見せしたくない姿です。

実は、「帯仕立ては男仕立て」という言葉があるぐらい、
帯の仕立ては、たいへんな作業なんです。

花邑のブログ、「花邑の帯あそび」
次回の更新は2月26日(火)予定です。


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