実は私が十代の頃、最も失望させられた作家がこの平井和正です。日本版狼男ウルフガイ・シリーズで有名なSF作家で、その激しい文体には十代半ばの頃、随分と熱中したものです。
平井和正は、人間という生物に悲観し、絶望したがゆえに繊細で傷つきやすい心と無敵の身体(満月期限定ですが)を持ったユニークな狼男・犬神明を生み出しました。堕落したジャン・メ[ル・ベルモンドというか、痩せ落ちた海賊コブラといったイメージの狼男シリーズは、70年代後半から80年代半ばまで、かなり人気を博したヒーローでした。
ウルフガイ犬神明は無敵でしたが、作者である平井和正はついに人間に耐え切れず、神へ救いを求め、宗教に入れ込んでしまいました。たしか高橋圭子が主催する団体だったと思います。ピンと来た人もあるでしょうが、あの高橋信次の系統の新興宗教です。
平井和正本人は、この入信により救われたようですが、それが小説に影響を及ぼしてしまったのが致命的でした。神の愛を語るウルフガイに戸惑い、失望した愛読者は少なくなかったと思います。現在も「幻魔大戦シリーズ」など小説を発表しているし、そこそこ売れているようですが、私は食指が働かず、未だ読んでいません。
その平井和正が最も深く人間に絶望していた時に書かれたと思われるのが、本作「死霊狩り」でした。敵役である死霊たちよりも、死霊と戦う人間の方が、よっぽど恐ろしく残虐であることが印象的な小説でした。救いようのないエンディングにこそ、平井和正の苦悩が顕れている気がします。
私が残念に思うのは、作者が神に救いを求めず、人間の非道さ、残虐さを直視しつつ、その一方で相反する人間の慈悲や思いやり、友愛を信じていたのなら、もっと素晴らしい小説を書けていたのではないか。そんな疑念が浮かんでしまうのです。もちろん平井和正本人は反論するでしょうが、かつての愛読者としては忸怩たる想いを捨て切れません。
平井和正は、人間という生物に悲観し、絶望したがゆえに繊細で傷つきやすい心と無敵の身体(満月期限定ですが)を持ったユニークな狼男・犬神明を生み出しました。堕落したジャン・メ[ル・ベルモンドというか、痩せ落ちた海賊コブラといったイメージの狼男シリーズは、70年代後半から80年代半ばまで、かなり人気を博したヒーローでした。
ウルフガイ犬神明は無敵でしたが、作者である平井和正はついに人間に耐え切れず、神へ救いを求め、宗教に入れ込んでしまいました。たしか高橋圭子が主催する団体だったと思います。ピンと来た人もあるでしょうが、あの高橋信次の系統の新興宗教です。
平井和正本人は、この入信により救われたようですが、それが小説に影響を及ぼしてしまったのが致命的でした。神の愛を語るウルフガイに戸惑い、失望した愛読者は少なくなかったと思います。現在も「幻魔大戦シリーズ」など小説を発表しているし、そこそこ売れているようですが、私は食指が働かず、未だ読んでいません。
その平井和正が最も深く人間に絶望していた時に書かれたと思われるのが、本作「死霊狩り」でした。敵役である死霊たちよりも、死霊と戦う人間の方が、よっぽど恐ろしく残虐であることが印象的な小説でした。救いようのないエンディングにこそ、平井和正の苦悩が顕れている気がします。
私が残念に思うのは、作者が神に救いを求めず、人間の非道さ、残虐さを直視しつつ、その一方で相反する人間の慈悲や思いやり、友愛を信じていたのなら、もっと素晴らしい小説を書けていたのではないか。そんな疑念が浮かんでしまうのです。もちろん平井和正本人は反論するでしょうが、かつての愛読者としては忸怩たる想いを捨て切れません。
合掌!