涼しい夜こそ読書に相応しい。
宵の口を過ぎても昼間の熱波がおさまらない暑すぎる8月が過ぎて、残暑に苦しむのかと思いきや、9月半ばにして涼しい夜が楽しめるのはありがたい。
私は昔から、涼しくなると読書量が増える傾向にある。本棚を整理していたら、奥から出てきたのが表題の書。ちょっとライトノベルチックな表紙のハードカバーだが、田中芳樹らしく軽妙に語られるので、私はライトノベルだと思っている。
実際、一晩で再読を終えた。翌日は少し寝不足気味であったのは、やはり体力が落ちているからだろう。
この書の主人公は、花木蘭。といっても分からない方の方が多いと思う。十数年前にディズニーが製作したアニメ「ムーラン」の方が良く知られているかもしれない。
実在の女性ではなく、シナの南北朝時代に書かれた民間説話が元ネタとされている。現在でもシナの京劇などで演じられる人気の演目なので、そちらで観た方もいるかもしれない。
ムーランは想像上の女性だが、シナの歴史には実在した女性将軍は幾人もいる。平陽公主、秦良玉、梁紅玉あたりが有名であり、女性で構成される娘子(じょうし)軍のみならず、男性兵士をも率いて実際に戦場に出て功績を挙げている。
日本でも巴御前をはじめとして数人、女性でありながら武器をもって戦場で活躍した女傑はいるが、指揮官として戦場を駆けた人はほとんどいない。
これは古今東西、どこでもそうなのだが、女性を兵士として活用する国家は少ない。別に女性差別という訳ではない。ただ単純に戦闘能力の低さが原因であろう。
古来から武器は重いため、どうしても上半身の筋力が重要となる。そして女性は筋肉量が男性よりも少ない。必然的に武器を扱う技量が低くなる。だから、女性は兵士として活用しずらかった。
でも、それも過去のこと。
日本に限らず先進国では、少子化が社会的な悩みである。当然、兵士として活用できる人材不足が生じる。特にハイテク兵器を数多く備えた軍ほど、人員不足に悩んでいる。
ハイテク兵器は、その操作方法習熟が難しく、高卒レベルでは十分対応しきれない。だから大卒以上、出来るならIT技術者としての実務経験が望ましいほどだ。しかし、従来の軍隊は、高卒で体力があれば十分であったため、ハイテク兵器を使いこなせないことが問題となっている。
だからこそ、PMC(民間軍事会社)を活用しているのだが、軍首脳としては、やはり自前の兵士で対応したいのが本音(コストが違う)だ。そこで注目されるのが女性である。ハイテク兵器のなかでも、今後主流となるのは無人兵器である。
既に実戦投入されている無人航空兵器であるプレデターを始めとして、遠隔地から操作することで戦えることは、人的ロス、すなわち戦死者を出さない。それゆえに、無人兵器は今後大きく展開される予定である。
これらの無人兵器の操作に強い筋力は不要である。つまり精強な男性兵士である必要はない。頭の柔らかい知性あふれる女性兵士を操作員として活用することは、今後増えていくと思われる。
ただし、実際に敵地を制圧するためには、兵士の投入は不可欠であり、すべてが無人兵器で代替できる訳ではない。だから屈強な男性兵士は今後も必要ではある。それでも今まで以上に女性兵士が軍隊に採用されるケースは増えると予想される。
花木蘭が細身の剣を振るって戦場を駆け抜ける場面なんて、完全に過去のものとなったのかもしれません。京劇でも人気の演目なので、エンターテイメントとして面白いのは確かですから興味があったら是非どうぞ。
田中先生の小説は結構買って読んでいます。風よ万里を翔けよもいい本だと思います。田中先生の小説は登場人物すべてに背景を感じさせる描写を埋め込んでいるところが凄いところで、ある意味登場人物が作者に愛されているので読んでいて引き込まれるところが多いですね。
まあ、ときどきセリフやキャラクターで作者の主張や趣味で文脈から見ると滑ったかというところもありますが、これはご愛敬。
今全盛のライトノベルの走りは田中芳樹と栗本薫だと思っています。
軽い文章とイラストの連動があって売れる小説の先駆ですね。
まあ今のラノベのマンガ絵と違って、重厚なイラストでしたが。
ただ、ご指摘とおり、いささか個人的志向から滑ることあります。まァ、これは作家の特権だと許容できます。許しがたいのは遅筆の酷さですね。アルスラーンとタイタニアこそ完結しましたけど、まだまだ未完の放りっぱなし多いです。
きっと出版社の再販売キャンペーンが始まると思います。