ヌマンタの書斎

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生きる悪知恵 西原理恵子

2014-10-06 13:38:00 | 

悪知恵って必要悪だと思う。

白状すると、私はけっこう悪知恵に長けていた。私は良くも悪くも真面目であり、それが悪いことだと知っていても情熱をもって打ち込んでしまうことが少なくない悪ガキだったからこそである。

だから大人を騙したりするのも平気だし、嘘も方便、ばれなきゃ真実ぐらいに思っていた。ただし、守るべき仁義とか、義理人情はあると確信している。だから無軌道に悪さをすることはなかった。

むしろ良いことをすることだって、私なりに熱心にやっていた。もっとも良かれと思ってしたことが、結果的に良くない結果を生じせしめた苦い経験もある。

世の中、公平でもなく、平等でもなく、理不尽で、残酷だと感じながら生きてきた。おかげで、親の言うことはもちろん、先生の言うことでさえも、それを完全に真に受けることは少なかった。ひねた子供だったと思う。

ところが、どこでどう間違えたのか、十代半ばで真面目に生きることを止む無くされてしまった。正直戸惑ったが、幸い進学した高校は、真面目なだけでなく、悪さもちょっぴりやるぜ、といった同級生が少なくなかったので、それは楽しく過ごせた。

本格的に戸惑ったのは大学である。私の母校は所謂いいとこの御坊ちゃん、お嬢ちゃんが多く通うことで有名であり、入学そうそう私は居場所のない不安感にさい悩まされた。

だからバンからな気風が漂う体育会系のWV部に入部すると、その古臭い気風に染まることで、場違いな大学の雰囲気から距離を置くようになった。でも同じ同級生たちは、これまた上場会社の社長の息子とか、病院の院長先生の御嬢さんだとか真面目っ子ばかり。これには困惑した。

ひねた私からすると、こいつらどうやって生きてきたのだと悩むほどの甘ちゃんばかりであった。しかし、この甘ちゃんたちは筋金入りの真面目っ子であるばかりでなく、世の中の大通りのど真ん中を恥じることなく堂々と歩んできた強者でもあった。

実際、私なんぞすぐに悪知恵を発揮して逃げたり、誤魔化したりするところを、逃げるでもなく避けるでもなく堂々正面からぶつかっていく。そして傷つきながらも正面突破を果たしてしまう。

これには参った。こんな生き方があったのかと目からうろこが落ちる思いであった。悪知恵を発揮するのが恥ずかしくなるような生き方をしている奴らであった。今の私があるのは、こいつらと共に4年間を歩んできたからだと思っている。

それでも私は悪知恵は必要だと思っている。なぜなら、世の中正しいことばかりでなく、悪意や嫉み、貪欲や悪徳がはびこっているからだ。そんな世の中だと、真面目なだけではどこか無理が来ると思っている。

生きてこそ、生き残ってこそ咲く花もある。四面四角の世の中の規則に縛られ過ぎて、却って生きにくいこともある。そんな時にこそ、悪知恵を活かすことで、新たな局面が拓けることもある。

表題の作の著者(多分、口述筆記だと思うな)の西原理恵子といえば、無頼漫画家の筆頭であり、嘘と悪意を売り物にしている困った漫画家である。偽悪的な側面は確かにあるが、私同様世間を信用しすぎることなく生きるために悪知恵を発揮して生きてきた人でもある。

それだけに、その悪知恵には説得力がある。

真面目な人ほど読んで欲しい。西原の生き方を真似するのはどうかと思うが、良識や常識に縛られないその悪知恵は、知っておいても悪くないと思うのです。


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4 コメント

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Unknown (アブダビ)
2014-10-06 17:49:11
西原さんは柳美里とかとの対談を読むに、凄い人だなぁと思います。同じ本で吉本ばなな氏との対談も面白かったですが、吉本氏がたじたじなのが肌で解りました。
でも本音の所で、有意義な人生相談のできる作家さんだと思います。変な意見ですが、その辺りで故人の今東光氏なんかに似てると思います。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-10-07 12:04:33
アブダビさん、こんにちは。柳女史との対談も、西原の手にかかると、とんでもない漫画になっていますね。西原相手では、柳美里ならともかく、吉本ばななでは圧唐ウれるだけでしょう。たしかに今東光氏に似たような気風はあるかもしれませんね。もっとも西原も子供が出来てからは、かなり丸くなったと思います。
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Unknown (アブダビ)
2014-10-09 02:03:40
生きる悪知恵、改めて読んだのですが、早速に参考になりました。
実は突然に他人の店で、元手ゼロの開業することになりました。これ悪知恵の成果です。
て、まあ、裏があるのですが。
鰍ッ持ちのマッサージ業をしていて、先輩の小さな店に引き抜かれて3日目。院長がほぼ再起不能な入院になりました。
地主さんの持ち店ですので、地元で細々やってるのですが、元々、事業として見込んでない。
いきなり失業の憂き目となりましたが、院長の御家族(地主)にしても、いきなり地元民の患者さんらに、本日から閉店…は、手広く地域で稼業を営む関係上、困ると。
その時に西原の本を読んで閃きました。
退職金がわりに、一月だけ私に任せろと。その間の
営業で、私の指名客含めて、事情説明をして、閉店
させるからと。
とんでもない提案ですが、御家族が飲みました。
しかも経費抜きで、報酬は全てャbモノ入れて良い。早速、閉店感謝セールで、いきなり500円安。
したら、来るわ来るわ。
まあ、今月で終わり、閉店して失業ですが、どうせ次の店に入るまで少し時間がかかるし、
それなら一時でも院長をやってやるか!
履歴書に院長経験と書けるし。
開店からレジ閉めに、経理まで 自分でやらねばなりませんが、開業経験には違いないすから。
仕事のペースを落とすつもりの就職先といえ、いきなり3日目の失業には、目の前が暗くなりましたが、気を持ち直すと面白い。なにせ曰く付きでも院長ですから。
西原の本を読み返して、開き直らなければ、御家族相手に交渉をして、こういう退職金を得られなかったでしょう。
読書はやはり役に立つものです。
…という訳で、私はヌマンタさん記事に一年間、全てコメントするという目標を立てていたのですが、
しばらく、記事を読むだけで、コメントを休みます。また、閉店を無事に終えて、失業者・求職者になったらコメントさせていただきます。
最後に、こういう暴挙(御家族の長も笑ってました)
に出たのも、どんな目にあっても楽しむことを忘れないというヌマンタさんの姿勢に影響されたお蔭だと思います。西原氏とヌマンタさん両氏に感謝いたします。それでは、暫くの間、ごきげんよう。
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Unknown (ヌマンタ)
2014-10-09 14:44:49
それは大変でしたね。人生、どこで陥穽が待ち受けているか分からないものです。とはいえ、逆境をチャンスに変えるのも才能であり、その機を活かしたのはアブダビさんの実力でしょう。
とはいえ、当分たいへんだと思います。私はこのブログを、書きたいことを、書きたい時に、書きたいように書くのがモットーです。コメントなんて、余裕があるときにどうぞ。
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