正直言って、死体は好きではない。
ただ、怖いというわけではない。死体は動かないし、処理さえしてあれば臭いさえしないことは分っている。綺麗な棺に入れられて、美しい花に覆われていても、やはり死体にはあまり近づきたくない。
たとえ、その亡くなった方が敬愛する人であったとしても、出来るなら死体とは距離を置きたい。いささか失礼だとは思うが、それが私の本音だ。
臆病と誹られても仕方ないと思うが、死という現実が具体的な形となっていることに、どうしても耐えられない。否定したいのに、厳然と死という現実を突きつけてくる威圧感に圧唐ウれる。
多分、本能的な拒否反応で、なにか理屈があってのものではないと思う。物心付いた頃から、死というものから距離を置きたい気持ちを持っていたと思う。
ところが、世の中には奇特な人たちがいて、死体を見ることに強い関心を持つ。禁じられた行為だとは言わないが、ある種の後ろめたさを持つ行為だと思う。
そんな異様な行為を、あえて意図的に、積極的に、そして冷静に行う若者たちを主人公に据えたのがライトノベルの世界で名を上げた乙一氏であった。
本人もまさかと思っていたようだが、表題の作は日本ミステリー大賞を受賞している。サイコではないが、正統派のミステリーでもない。しかし、ホラーでもないし、ライトノベルでは断固無い。
私のようなホラー好き、サイコ・ファンにはいささか物足りないが、それでも面白いことは否定できない。正義もなければ、倫理にも乏しい。さりとて狂気には程遠いし、共感はさらに遠い。
でも、一読すると忘れ難い印象が残る。そんな一風変わったミステリーです。残暑の夏を足元から、じわっと冷やしてくれるようなホラーの味付けもある変り種なので、興味がありましたらご一読してみてください。
短いので気軽に読めると思います。でも、読後感の異様さは簡単には拭えないと警告しておきます。そんな作品ですよ
案外、常識派のkinkachoです。
したがって、この作者の作品は読めてません。
思い切り壊れていたら取り付くきっかけもあるのですが、どうにもボーダーな出来が苦手です。