ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ドイツ海軍の落日

2021-07-12 12:50:00 | 社会・政治・一般
日本人のドイツ製品に対する信頼は厚い。

デジカメ全盛の今でもライカを信奉するカメラマンは少なくない。自動車ならばベンツとBMWは一度は乗りたいと思うドライバーは多い。また工業製品においてもドイツ製品のブランド力は健在だ。

いささか武骨なデザインであるが、堅牢で信頼のおける製品、それがドイツ製品である。ちなみに子供の頃、プラモデル好きであった私が、一番多く作ったのはドイツ製のプロペラ戦闘機や、ドイツ製の戦車である。

日本同様に敗戦国であるため、大型の軍艦や戦闘機の独自開発はやっていないが、それでもレオャ泣h戦車やUボートと称される潜水艦では戦後も一貫して一流品を生み出してきた。そのはずだった。

しかし、現在ドイツ海軍がおかしい。

212型と呼ばれる通常型潜水艦が主力であり、日本同様に非大気依存型推進装備を備えた最新鋭であるはずだ。しかし、その212型は現在、ほとんど稼働していない。

軍事機密の壁に阻まれてはいるが、それでもNATOの合同訓練への不参加や、ドイツ議会での追求などから、現在は大半の212型がドッグで修理中だとされている。

いや、潜水艦だけではないらしい。ただ軍事は機密事項に属するため、どこまで本当かは分からない。事が露見したのは、ドイツ議会における海軍の予算査定の過程で問題視されて明らかになったからだ。

その後のドイツのメディアの論調等をみていると、どうもドイツ政府としてはこれ以上、海軍に予算を割きたくないようだ。既に国防はNATO中心であり、長年の敵であったフランスとも協調路線が確固たるものとなっている。無理に海軍力増強に金をかけたくないのが本音らしい。

ここまでならば、ドイツの国内事情である。私が呆れ、かつゲンナリしたのは、その後のドイツの輸出戦略である。

ドイツの潜水艦は歴史的にも有名であり、前作の209型がベストセラーであったので、当然に212型の輸出仕様である214型も数多く輸出されている。

しかし、212型に基本設計のミスが疑われる状況で、果たして214型は大丈夫なのか。そう疑うのが自然であるが、なにせ軍用潜水艦は軍事機密の塊であり、その情報はなかなか外に出ない。

どうもギリシャでもトルコでもトラブルを頻発させているらしい。この両国、ともに相手を敵視しており、そのせいで余計に情報が出てこない。だが、ドイツのHDW社は、修理などで大儲けしているのは確かなようだ。

ところで214型のライバルといえば、やはり潜水艦に長い歴史を持つ日本である。日本の双竜型もまた214型とほぼ同じ排水量1800トンであり、非大気依存型のスターリング・エンジンを持つ。

そしてその日本をライバル視する南コリアは当然のようにドイツの潜水艦を輸入している。特に沿岸警備に向いた209型は主力潜水艦として長く活躍していた。だからこそ、後継の214型も入手している。

ただしライセンス生産方式である。南コリア初の国産潜水艦との触れ込みだが、設計も主要パーツも全て輸入品である。その第一号が孫元一級と呼ばれているのだが、これがトラブルだらけ。

スクリュー軸からの異音、ボルトの欠陥、バッテリーの故障などトラブルの多さから、製造後ほとんど修理ドッグで鎮座している。普通ならばトラブルの原因究明と解決後に2番艦を造る。が、南コリアにそんな常識はない。

ひたすらに同型艦を作りつづけ、その全てがまともに運用できていない惨状である。つい最近も、タグボートに曳航されて戻ってくる間抜けな映像が公開される有り様である。

当然ながらドイツのHDW社は技術者を派遣したり、修理パーツを輸出したりと大儲けである。ただし、修理の成果は出ていない。まあ、ライセンス生産を請け負った南コリアの造船会社のミスなのだからと、お気楽なものである。

しかしなぁ~、元々の212型の基本設計ミスが疑われる以上、もしかしたら確信犯かと疑いたくもなる。ドイツって、これほどまでに性悪だったかと改めて呆れてしまう。

ちなみに南コリアの潜水艦を巡るドタバタ騒ぎには続編がある。気が向いたら書こうと思っています。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 熱海 土石流災害 | トップ | 最終予選組合せ決定 »

コメントを投稿

社会・政治・一般」カテゴリの最新記事