平和を守るとは、紛争解決の手段として武力行使はしないことではない。
日本国憲法は、紛争解決の手段として武力の行使を否定している。だがこの異様な規定、特に第9条は太平洋戦争直後のアメリカ政府の意向を汲んだものだ。アメリカ建国以来、初めて近代兵器をもって戦争を挑み、苦戦し恐怖さえした日本帝国軍の牙を抜くための平和憲法であった。
ところが仇敵として日本を憎み、徹底的に骨抜きにするつもりでGHQの首班として赴任したダグラス・マッカーサーは自分が誤解していたことを実感した。朝鮮半島に敵対的勢力があると、日本列島の安全を守ることが出来ない現実を知ってしまった。すなわち朝鮮戦争である。
だかこそ警察守備隊から格上げして軍隊を作ることを日本政府に命令した。マッカーサーは日本国憲法を軽視していたのではなく、改正すれば良いだけだと考えていた。しかし時の日本国首相であった吉田茂は、疲弊した日本を再建するためアメリカの軍事力を利用し、日本軍は平和憲法を盾に極力抑制する方針を貫いた。
この吉田の低軍事路線は、日本の経済的再建に大いに貢献し、遂には世界第二位の経済大国にまで上り詰めた。一方、軍隊は極めて脆弱で規模が小さいままであった。しかし、溜め込んだ貿易黒字に目を付けたアメリカの軍事産業が、新たな輸出先として金満日本に狙いを付けた。
ここで一度整理しておくと、現在のアメリカには日本に対し軍事面で3っつの考えがある。一つはかつての敵国なのだから、アメリカの軍事的コントロール下に置いておくべきだと考える。もう一つは、もう自立させてアメリカの従属的同盟国として利用すると考える。そして決して大声で語られることはないが、アメリカの潜在的敵国として活用すべきだとする考えだ。
三つ目はまだ少数派なのだが、日本政府が左派勢力に牛耳られシナやロシアと組むことを想定しており、アメリカ国内をまとめるに足り得る十分な敵として切り離すことを考えている。日本には潜在的に独立志向があることをアメリカはしっかりと認識している。日本にとっては最悪、最強、最恐の敵がアメリカである。だからこそ仲良くする必要がある。
そんな馬鹿なと思う人は少なくないだろうが、アメリカは長期的には衰退傾向にある。そう遠くない将来、アメリカは分裂する可能性さえある。そのような状況になったら日本国内の反米自虐勢力が元気づくのは必然であろう。もっとも私の考えでは、日本の方が先に衰退すると思うので、アメリカに反逆する力はないように思う。ただ国内に高度な工業技術があるので、それを狙われるだろうし(今もだが)、敵に渡すぐらいなら破壊してやれとアメリカが考えても不思議ではない。
順番は前後したが、一番目の考えもアメリカ国内にはけっこう根強い。アメリカは最新兵器をよく日本に買わせるが、実はアメリカ軍用のものとはワンランク落ちた性能の兵器を売りつけているのは、知る人ぞ知る事実である。当然ながら原子爆弾や原子力エンジン搭載の軍艦を認める気もない。
そして一番現実的なのは、二番目の考え方だ。実際、イギリスやドイツ、イタリアなどもこの路線でアメリカの世界戦略に活用されている。同じ西側諸国ではあるが、軍事超大国アメリカの前には国家としての矜持を押し殺さざる得ない。だからといって反発心がないわけではない。
その一例だと思われるのが次期戦闘機の共同開発だ。戦闘機の開発で一番難儀なのがエンジンである。西側諸国ではアメリカのGE及びP&Wとイギリスのロールスロイス社の三強がほぼ独占している。だが、最近はロールスロイス社は第六世代にあたる新型エンジンの開発に難航しているらしい。
日本は長年GEやP&Wの下請けとしてエンジン部品を製造してきたが、独自のエンジン開発は遠い目標であった。しかしアメリカ軍の了解のもとF15用のエンジンを単独で請け負ったり、得意の高硬度ブレードタービンなどを製造してきた実績をもとに新型エンジンであるXF9-1の開発に成功した。
それを聞きつけたイギリスのロールスロイス社は戦闘機の共同開発を持ち掛けてきた。さらにイタリアまでもが共同開発への参入を言い出し、三か国での共同開発となったことは既に既報のとおりです。ちなみにアメリカですが表向き反対も賛成もしていませんが、武器制御関連では参画しているので、一応内諾しているのでしょう。
私はF2の頃から日本の単独開発には否定的であったので、日本、イギリス、イタリアの三か国による共同開発には肯定的です。ただし、三か国とも戦闘機の使い方が異なるので、開発が難航することは予測済み。なによりも多額の開発費用を分担できるメリットは大きい。なによりも実戦参加経験が70年以上ない日本にとって今回の共同開発から得られる経験は貴重なものでしょう。
ところがここにきて第六世代の新型戦闘機であるF3について輸出は認めないなどと云いだす輩が出てきた。確かに日本は武器の輸出は認めない間抜けな国家ではある。しかし、これは西側三か国による共同開発である。いずれの国も多額の開発費用を少しでも軽減するため、また製造コストを下げるためにも輸出は必要だと考える。
いくら日本が平和馬鹿とはいえ、世界の常識からかけ離れた馬鹿げた発想にイギリスやイタリアが付き合う気はない。
21世紀の今日でも武器がなければ平和、武器がなければ戦争は起こらないなどと幼稚な考えを振りかざす馬鹿が居ること自体、呆れてものがいえない。
一応書いておくと、アフリカや中央アジア、中南米諸国では日本製のトラックが大人気である。荷台を改装して重機関銃を据え付けて活躍している。故障が少なく、安くて修理も簡便な日本製品は、平和を守る最適な道具として、どこの国でも愛好されている。
日本のように武器がなければ戦争は起こらないなどと馬鹿げた考えを持つ人たちは皆無だ。この現実をいい加減直視して欲しいものだ。日英伊の三か国共同開発の最新戦闘機は、アメリカと友好的な関係とは言いかねる国々にとって期待の兵器である。もちろん値段次第だし、西側もしくは西側寄りに限定されるのは当然だ。
本音は実戦経験豊富なアメリカ製の最新兵器だが、なにかと制約をつけるのが不愉快に思う国々にとっては、平和を守る手段として極めて有望な戦闘機がF3となるでしょう。まだ開発前なので期待し過ぎの感じもありますが、世界平和に貢献する道具としての兵器が世界共通の認識である現実は認めて欲しいものです。