元横綱の曙が亡くなった。
若貴のライバルというよりも敵役としての扱いが多く、やもすると悪役的役割を担わされた感がある。まぁ日本人ではありえない異形の肉体だけに、下手すりゃ怪獣扱い。でも根は非常に真面目で、自分なりの相撲の確立に試行錯誤したが故に横綱まで上り詰めたと思います。
それでも上半身の強さに頼り過ぎた。あの長い手から突き出される突っ張りは、巨漢の大乃国ですら土俵外へ吹っ飛ばす。しかし、下半身が細く、重量感のある上半身を支えるのには足りなかった。結果的に膝を壊しての引退であるから残念だ。
膝を壊した格闘家は無残の一言に尽きる。しかも両足の膝だけに格闘技への挑戦は無理過ぎた。だからこそプロレスのほうが才能を活かせた。それでも自分なりのプロレスを身に着けるのには苦労している。
相撲引退後の曙は、負け試合が続いたので弱いと思われがちだが、私は間近に見た印象からすると、絶対に強いと感じた。あの上半身の分厚さと、長い両手はそれだけで強力な武器であり、威圧感は半端ではなかった。ただ膝のハンデは大きすぎたが故に、格闘技では勝てなかっただけだ。
もし三畳くらいの狭い部屋でやりあったら、大半の格闘家を圧倒できると思う。ちなみにプロレスラーで格闘技志向の強かった船木は、エレベーターの中でケンカになったら相撲取りが最強だと云っていた。あの肉体の圧に潰されて御終いだと私もそう思う。
ちなみに心臓疾患で亡くなっている。あの体つきでは仕方ないようにも思うが、彼が土俵に上がっていた時の存在感は別格であったと思う。その意味でも早すぎる死は残念ですね。
合掌。