金融庁の思慮足らずの報告書で露呈した国民年金の積み立て不足。
ですが、年金の積み立て不足の問題は、20年以上前から霞が関では認識されていたはずです。そこから生まれたのが、日本版401Kと呼ばれた確定拠出年金制度でした。
日本の年金制度は3階建て。一階は全ての国民が強制加入の国民年金。二階には厚生年金と国民年金基金があり、3階には企業年金基金がありました。しかし、これだと大企業と公務員以外の国民が不利になる。そこで作られたのが確定拠出年金制度でした。
たしか2000年前後であったと記憶しています。しかし、この制度、アメリカの401Kとは似て非なる制度でした。アメリカのは、個人が自らの意志と判断で掛金を株式市場に投資して、将来の生活資金に充てるものです。
しかし、日本版401Kは、投資の主体が企業もしくは個人(実質、証券会社ですけどね)であり、どちらかといえば企業主体の年金制度です。
当時、大蔵省では「貯蓄から投資へ」を合言葉に、盛んに個人の資金を証券市場へ還流させることを目指しており、その一環としての制度であったと私は理解していました。そして、だからこそ信用できないと考えていました。
アメリカは移民の増加などもあり、人口は増加傾向にあり、当然に株式市場も拡大の方向に向いていましたから、将来の生活資金として個人が株式投資することには、それなりの可能性が十分あったと思います。
しかし、日本は違います。当時でさえ21世紀中盤には人口の減少、高齢化社会の到来が確実視されていたのです。社会の規模が小さくなる以上、当然に株式市場も縮小されると考えるほうが自然だと思います。
で、なんで将来の生活資金を株式市場に投じるの?
普通に考えたら、将来成長が望める市場に投資すると考えるべきではないでしょうか。仮に投資するなら、より安定性の高い国債などを対象とするなら、まだ理解できます。
日本の公社債の安定性については、若干の疑問はあれども、倒産の危険性を孕む株式市場よりは安心だと私は考えていました。だから、個人向けの401Kをやってみようなどとは、思ってもみませんでした。
思うに、当時も今も、日本政府の考えていることは、国民の老後の生活の保全よりも、今の株式市場を活性化させることが主要な目的なのでしょう。だからこそ、金融庁は国民年金が足りないから、個人で投資しましょうとの報告書を書いたのでしょう。
私は株式投資を否定している訳ではありません。事実上のゼロ金利政策が継続している以上、預貯金の投資としての価値は安全性だけ。とても将来価値の上昇は望めません。
さりとて、人口減少が分かっているのですから、安易な不動産投資はむしろ危険です。だから十分な経済知識がある人が、自らの判断と決断で株式投資することは、ある意味当然の流れだとさえ考えています。
でも、その対象者はそう多くはないはずです。大半の国民は、どの株に投資すべきかさえ確信は持てずにいるのが普通だと思います。では、国民年金では足りない部分をどう補えば良いのか。
政府を批判するのは心情的には分かります。でも、本当に考えるべき問題は別にあるはず。賢しげに批判している人は多いですけど、ならば、本当に有益な将来の投資対象は何なのか。
批判するだけで、対案無しのおバカな意見がまかり通っていることが、私は大変に不愉快です。