酒を止めろと言われたら、その日のうちに止める自信はある。
しかし、タバコを止めろとなると、正直それだけの自信はない。もっとも、私がタバコを止めたのは21歳の秋であり、以来まったくタバコを吸っていない。
不思議なもので、禁煙して30年以上たっているのに、今でもたまにタバコを吸っている夢を見ることがある。別に吸いたい訳でもなく、むしろ日頃はタバコの臭いが服に付くのを嫌がるくらいなのだ。
それなのに、タバコを吸っている夢を見るのだから、タバコの魅力たるや恐ろしいものだと思う。実際、21の夏にタバコを止めた時は、一週間ほど禁断症状に苦しんだ。
丁度、夏風邪を引いていたので、タバコを止めるのに良いタイミングだと考えたのだが、正直あれほど苦しいとは思わなかった。以来、30年以上たったが、何度かタバコを吸いたいと思ったことがある。しかし、禁煙するときの苦しさを思い出して、タバコには手を出さずにきた。
その癖、他人の吸うタバコの臭いは好きではない。なんとも我儘だと思うが、それが正直な気持ちだ。
ただ、最近話題あるいは問題になっている副流煙というか、他人のタバコで健康を害すると騒ぐことには、いささか複雑な気持ちになる。タバコの煙が人体に有害なのは、ずっと前から分かっていることだ。
発がん性物質が含まれているから、危険視する人が少なくないのも当然だろう。また自分はタバコを吸わないのに他人の吸ったタバコの煙で、自身の健康を害されるのは嫌だと思うのも自然だと思う。
それでも、先だって今国会での議決が先送りになった喫煙禁止については、正直あまり感心できない。
なんだか、あまりにヒステリックに過ぎないか?
厚生労働省が旗振りしているようだが、飲食店の全面禁煙っておかしくないか。ならばタバコの販売禁止にするのが筋だろう。これはタバコが国家歳入に少なからず貢献していることを熟知している財務省が反対するだろうけどね。
タバコを嫌がる人が多いのは分かるが、ならば飲食店側に禁煙の店と、喫煙可能な店とを自主的に選ばせるべきだ。たとえ健康に有害だと分かっていてもタバコを吸いたい人は少なくない。彼らの自由を奪うな。
滑稽だったのは、全面禁煙にしたら売り上げが5%上昇したファミリーレストランの例を挙げて、印象操作を狙った大本営発表のニュースだ。お役所の記者クラブで配布された資料の丸投げなのだろう。
ならば、大衆居酒屋や焼肉店、飲み屋、スナックなどで全面禁煙にしたらどうなるか? 別に深く考えなくても分かろう。外食、外飲みが減って、飲食店の売り上げがダウン、替わりに自宅や公園などでの喫煙が増えるだけだ。こんな間抜けな記事を流しているからマスコミは信用を失う。
私はタバコは健康に有害だと思うが、たとえ有害でも喫煙を続けたい人の気持ちは分かる。ストレスの多い現代社会において、喫煙は手軽に出来るストレス解消の手段の一つだ。自ら健康を害しても、得たい悦楽もある。
ただし、周囲にタバコの煙が拡散しても、嫌がられない環境(全面、喫煙可能とされた場所)を整備する必要はあると思いますけどね。
余談ですが、私は高齢化して、寿命も後数年だと云われたら、再びタバコを吸いたいと思っています。そのくらい、魅惑的な悦楽なんですよ、喫煙は。死ぬ間際まで健康にヒステリックにはなりたくありません。
くわえ煙草で死にたいとは思いませんけど、タバコの紫煙を深く胸に吸い込み、再び吐き出しながら、のんびり死を迎える自由くらい、与えて欲しいものです。