さすがは腐っても鯛。
なにがってロシアである。冬季オリンピックの舞台であるソチは黒海沿岸のリゾート地で、ロシア帝国が奪い取って以降、富裕階級の避寒地として栄えた街である。スターリンをはじめとして、歴代のロシア権力者が豪華な別荘を持ち、外国人を踏み入れさせない秘地でもあった。
グルジア王国の栄えた土地でもあり、その後オスマン・トルコに奪取されたが、露土戦争において取り返し、今日に至るとされている。
しかし、それはロシア側の見解であり、古来よりトルコ系、イラン系などの遊牧民族が占拠し、支配していた土地でもあり、歴史的には紛争の極めて多い地域でもあった。水に乏しいユーラシア大陸中央部にあって、黒海沿岸は豊かな農耕地でもあり、また放牧地域でもあるがゆえに、古来より土地争いの絶えぬ地である。
旧・ソ連時代には、その圧倒的な軍事力をもって黒海周辺部は完全に制圧されていた。しかし、ソ連崩壊後は抑圧されてきた民族感情が噴出し、同じスラブ系であるグルジアさえも一時期は離反したほどである。
ましてイスラム教徒が大半を占めるトルコ系やイラン系の遊牧民族は、古来よりの民族感情をたぎらせてロシアに対して牙を剥きだしている。だから近年のロシアにおいては、この遊牧民族系のテロリストが起こす事件が頻繁に起きていたことは、ニュースに詳しい人ならば常識である。
実際、アメリカのCNNでは、オリンピック開催中にテロの起きる確率は50%以上だとして、渡航は危険だと警告しているほどだ。危機管理にうるさいアメリカならば当然なのだろう。
一方、この原稿を書いている時点(2/21)では、未だソチ周辺でのテロ事件の報道はない。私の記憶では、今年一月に爆弾テロ未遂事件があったはずであり、テロ組織がソチ五輪妨害に向けての活動を止めたとの情報もない。
そうなると考えられるのは、ロシア政府の治安組織が見事にテロを抑え込んでいるか、もしくはテロ事件があっても報道させないで秘密裏に処理しているかの、どちらかであろうことが推察できる。
まだソチ五輪が終わったわけでもないので、安心するのは早計に過ぎると思うが、やはりロシアの治安組織の実力は凄いと云わざるを得ない。冷戦時代より悪名高いかのKGBは、現在はロシア連邦保安局(通称FSB)と名を変えて生き残っており、プーチン大統領がこの組織の出身であることは広く知られている。
FSBがいかにしてテロを抑え込んでいるかは、未だ明らかにされていないが、想像を絶する過酷な手段を用いていることは間違いないだろう。テロを抑える最も有効な手段は、適切な情報による事前の制圧である。その情報を如何に入手しているのか。
テロリストはもちろん、その家族、友人、知人への凄まじい情報提供の強要には、恫喝は当然としても場合によっては拷問、自白剤など非合法な手段が用いられている
可能性は高いと思う。いかにソチの地が風光明媚な景勝地であったとしても、オリンピックの安全は血に濡れれた恐るべき諜報組織が担っていることを忘れて欲しくないものだ。
あまりTVは観てないが、偶に番組を観ると、現地で日本人のアナウンサーやら芸能人とかが浮れているのが妙に気に障る。水と安全はタダではないことをどこまで自覚しているのか疑問でしょうがない。
平和の祭典であるオリンピックに浮れるのは構わないが、平和が如何に守られているのか。ちっとは考えて欲しいものである。