ヌマンタの書斎

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「宇宙皇子」 藤川圭介

2008-08-27 12:17:16 | 
読んでいない本の批判は、フェアじゃないと思うのでしないことにしている

ただ、40巻を超えるシリーズともなると、完読するのも容易ではない。いつのまにやら、読むのを止めてしまったので、感想を書くのを、いささか躊躇う。半分以上は読んでいるとはいえ、やはり最終巻を読んでないので、公正な評価など出来るはずもない。だから、愚痴だと思って、読み流していただきたいのです。

表題の本は、20代の病気療養の時分に読んでいました。20数巻め煉獄編の途中で、読むのを止めてしまったのです。既に完結しており、読み直すかどうか、いささか迷ったが結局読み返す気になれなかった。

平安時代を舞台にした伝奇ファンタジーなのだが、思い出すと妙に気恥ずかしい気持ちにさせられる。読み返す気になれない最大の理由は、主人公のあまりの理想主義者ぶりに付いていけないからだ。

弱い者が権力者の犠牲になる現実社会に絶望し、自ら力をつけて理想の王国を築かんと突き進む主人公だが、その前途は厳しい。仲間を集い、超常的な能力を身につけ、様々な難問苦難に立ち向かう姿は、十代の若者なら共感できるかもしれない。

実際、病気で病み衰えた20代当時の私には、当初は心地よく感じた作品でもあった。しかし、身体が回復してきて、社会復帰に向けて現実的な動きを始めてみると、この主人公の理想主義者ぶりが鼻に付くようになった。その悩みに共感できなくなっていた。それゆえ、完結したのを知りつつ、再び読み始める気になれなかった。

理想という夢をみることは、若者の特権だし必要なことでもあると思う。しかし、大人になっていく過程で、その理想を現実の流れに晒して、磨いて、削り落としていかねば、儚き夢のままで終わってしまう。

少年の夢をそのままに具体化させることは、難しいというより、むしろ幼稚でさえある。夢の根幹をしっかり見据えた上で、現実に可能な計画へと昇華してこそ、夢は実現する。

実現できない夢をそのままに抱え、立ちすくみ、ついには現実に眼を背ける若者を甘やかしてどうする。そんな感慨を得てしまったが故に、最後まで読むことを放棄してしまいました。もしかしたら、新たな展開を切り開いたのかもしれません。だから、この本について私が語るのは適切でないのでしょう。

読み始めた本を、途中で放り出すことは滅多にしない私ですが、その数少ない例外が「宇宙皇子」でした。どうも、私は夢見る少年に厳しいようです。
コメント
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