のら猫の三文小説

のら猫が書いている、小説です。
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新しい子猫たち No.18

2014-01-31 00:09:01 | 新しい子猫たち 


ジブトラストのその後


時々大儲けを

している三つのグループ




ジブトラスト全体は、もはや信じられないような大儲けを相場でする事は少なくなってきた。実業が占める比重は高く、株式投資の制約は多く、それに運用する金額も多く、市場でも細かい取引をする必要が増え、大儲けをする事も出来なくなっていたのだ。



それでも神之助のグループ、加代子のアメリカそしてリトルチャのリトルキャット運用会社は、株式そして先物を始めとするデリバティブ、商品相場そして為替、債権などの、各分野でそれぞれの守備範囲の中で、相互に連絡を取り合い、機会があれば、仕掛けをして、大儲けする事が時にはあった。



そんな機会は、いつも転がっているわけではなかったが、この三つのグループは、爪を研いで、狙っている動物のように、色々と研究して、お互いに意見交換もして、チャンスがくるのをじっと待っていた。普通の意味では、驚異的な水準で、取引をしてお金を儲けてはいたが、大儲けの機会を狙っていた。



加代子のアメリカも複雑な子会社組織になり、加代子以外の取引の小天才たちもそれぞれ秘術を尽くし、金を儲けて、競っていた。神がかりの加代子も神がかりの状態になる事は少なくなったので、加代子だけに頼っている時代は過ぎ、ライバルとも言えた神帥の会社が実業に比重をおいていたので、神帥の会社を窓口として商品相場も含めて、あらゆる取引に出没し、神之助の複雑なグループやリトルチャのグループとも意見の交換をしていた。



この三つのグループは何故か波長が合い、以心伝心のような状態になっていた。日本、アメリカ、そしてヨーロッパとで、秘術を尽くした仕掛けを考えていた。ただそれぞれ地域別に問題意識や危機意識は異なるので、そこは自ずと各グループの判断が加わった。取引は、相手があって初めて成立するものだけに、一種の神経戦、心理戦でもあった。


それ以外のグループは、大きくなった実業分野を抱え、この三つのグループの動きを遠くから眺めていた程度だった。リトルチャの仕掛けは巧妙だった。その仕掛けが直ぐに判るのは、神之助程度であるが、加代子のアメリカの責任者そして幾人かの小天才たちが協議すると、なんとか判った。



神之助のグループでも神之助から詳しく説明されても数人しか判らないほど複雑怪奇な仕掛けを、リトルチャは考えていた。そんな仕掛けをリトルチャや神之助そして加代子のアメリカの会社はそれぞれ秘術を尽くし、各チームの工夫を加え、機会を待っていた。その仕掛けは、少人数では出来ず、幾つものパートに分かれ、それぞれパート毎に、役割分担があった。



新しい子猫たち No.17

2014-01-30 00:00:37 | 新しい子猫たち 
神太朗と切人



神太朗は、切人とも話をした。切人は、理想主義的な神太朗とは違い、極めて現実的な人間だった。



効率的な運営と、堅実な会社経営を推進してきた人間でもあった。マリアのアフリカへの熱い想いを理解して、マリア財団の財政規模を安定させてはきたが、決して、理想主義者ではなかった。



人間は伝統的な食生活から離れらない。食は一種の文化なのだ。そして、文化は一朝一夕で出来るものとはないと考えていた切人は、食品事業での新しい技術なんぞは、経営評論家の造語や商売用の宣伝文句に過ぎないとも思っていた。



神太朗や猫たちが言っている事は、単なる理想論とも考えていたが、そこは、香奈が好きな猫が絡む問題なので、切人も用心深く、出来るだけの協力はすると言った。


猫たちの考え


日本での牧場、農園、養殖場そして食品加工施設は着々と進んでいた。スイスでも、スイスカナコインが、猫牧場の猫たちとも話し合って、独特の展開をスイスカナコインの食品総合会社に取り入れて、成果を上げていた。猫たちが発想して進めていた事は、一見すると、今までの食品に大きな差はないように思えた、やたらと遺伝子組替えをした原料を使うものでもなかったし、従来の食品と劇的に違うものでもなかった。



しかし、原料の収穫量は多く、そして食品原料である農作物の味も向上し、当然製品の味も向上していた。


農作物は歴史的にも、一定面積当たりの収穫量は増えているのだ。農業は、地道で昨日と同じ事だけをしている伝統産業ではなく、本来、技術革新の多い産業なのだ、植物も無限の可能性を持っている。単に土と水と肥料だけから、太陽の力を借りて、米や野菜、麦そして果実まで作り出す偉大な産業でもあるのだ



遺伝子組替えは、自然に起こる突然変異を限られた条件下で促進するだけに過ぎない、長い目でみれば、米も麦も、けっして昔の米や麦ではない。長い間に品種交配もされ、植物自身の都合でなく、人間の都合により、変えられてきた歴史があった



猫たちは、遺伝子研究センターでの研究を通して、植物自身の本来の遺伝子が持ちながら、眠っている偉大な力をより発揮できるように、遺伝子を調査しながら、新しい技術の開発を進める事にしていた。



新しい子猫たち No.16

2014-01-29 00:00:32 | 新しい子猫たち 

忽然として現れたリトルキャット運用会社




リトルキャット運用会社は、相場師的な感覚で、成長会社と安定会社を混合した投資としての独自のポートフォリオを持った運用をしていた。


しかし、猫独自の能力を活かせる事業展開をリトルチャやリトルホワイトたちが考えるようになり、スイス組の株式グループもそれに影響され、国内組の株式グループも、それらも事業展開に役立つ事も念頭に置いた投資を心がけるようになっていった。



猫たちも単なる売買差益だけの取引から変化の兆しが見えていた。近くにあったジブ総合研究所やジブ大学院大学で、勉強した事を活かせる事業展開を考えていた。


それに猫だけでなく、多くの人間との協力を求めやすい、事業展開を考えていた。



神太朗はリトルチャたちの事業展開の方針を聞いて、猫達が事業展開しようとする分野が、今までのジブトラストとしては経営を任せていた企業群である事に気付いた。資源、エネルギー、ハイテクそして食品、医薬と云った、香奈オフィス、毛利貴金属そして切人達のグループそして広い意味では快適グループや製薬、香奈ハイテクといった、ジブトラストにとっては、近くて遠い分野である事にも気付いていた。一族の会社が主導する立場にあるので、ジブトラストとしては、積極的な関与をむしろ控えていた分野でもあった。



これらの分野では、ジブトラストは身近に関係する企業群が存在するだけに、ジブトラストとして事業に主体的に取り組むよりも、香奈オフィスに頼むとか製薬に任せるとか独自の事業展開を認めるなど、必ずしも協力関係を密接に取ってこなかった分野であった。



神太朗は、リトルチャやリトルホワイト達とも、猫語翻訳機を通して話をした。次第に神太朗にも猫チャンネルも出来た。新しい技術開発をして、新規な形で事業展開をしていきたいと猫たちは考えていた。そして、リトルキャット運用会社の株式保有を、チャタロウが猫たちと相談しながら、猫たちの計画している新規事業のための協力を求める企業群を中心に株式を保有する事に変更しつつあるとリトルチャは言った。



チャタロウとリトルチャは、兄弟だが、性格も違い、そんなに仲が良くはなかった。しかし、香奈亡き後の猫軍団の将来を考え、二匹は協力する事になった。猫たちに慕われていたチャタロウが、猫たちのまとめ役になり、事業計画は、リトルホワイトが研究担当や技術担当と相談して起案するシステムになった。リトルチャは、後方で資金供給に頑張る事にした。



猫たちは、勉強してきた事を中心にして、存在するであろうスイスの異才たちの能力も借り、地域猫、所謂野良猫たちの眠っている才能も喚起して、猫たちのアイディアと人間たちの行動力やアイディアを結びつける事業展開をしたいと言った。



香奈と云う巨木の陰で、永遠にのんびりとは出来ない。金だけを基金として貯めても、自分たちの能力を活かす事もなく、のんびりするのも生まれてきた意味がない。猫たちも自分の役割があると思う。それを無理のない範囲で少しずつ追求していきたいと語った。



神太朗は、話をしてみて、激しく感じる点があった。香奈が築き、色々な人の力や能力を活用して、大きくなったジブトラストではあったが、自分達の能力や役割を果たしていく事を、ジブトラストのみんなは、意識しているだろうかとも思った。



新規事業は大変な事だけど、今までの関係する事業を調整しながら、新しい技術や開発を行いながら、事業展開していく事に、ジブトラストの実業分野として、全面的に協力していくと話した。



猫たちが事務を取ったり、販売する事は出来ないが、新しい技術や開発に協力する事は出来るとリトルホワイトは言った。株屋が勢いに任せて、既存の会社を丸毎、買収する事ではなく、新しい技術、発明そして新しい知見を製品として形に表し、それを社会に役立てていきたい、人間の協力を得ながら、猫と人間の協力関係の新しいページを作っていけるかもしれないとまで、リトルホワイトは言っていた。



新しい子猫たち No.15

2014-01-28 00:00:16 | 新しい子猫たち 



神太朗は


ジブの実業ネットワークと保有する株式の企業分析をして、ジブそして関連グループとの調整に努め、ヨーロッパ内のジブネットワークの構築を進めて、協力しながら、事業展開をして行こうと努力していた。ヨーロッパ内のジブ連絡会議も開き、お互いに刺激しながら、協力できる所は協力して行くようにとの指示を出し、スイスカナコイングループとの協力関係も進みつつあった。



ヨーロッパでは、ジブと香奈海外とは、香奈傘下の同格の組織としての意識しかなかった。スイスカナコインなどは香奈直轄の企業と見なされていた。



香奈は90歳以降は全く海外には行かなかったが、しかしジブの海外と云っても、香奈オフィスの相場部門を前身としている事もあり、所詮香奈グループと云う意識が、ヨーロッパの人には強かった。



ヨーロッパでは、ジブトラストの名前も有名だったが、香奈オフィスそして香奈ファイナンシャルはもっと有名だった。香奈オフィスはアメリカが大きいと云っても、ヨーロッパでは、香奈オフィスが香奈筋と云われ、一世を風靡した仕手筋と知られていた。



その後、瑠璃がハゲタカと陰口を叩かれながらも、金を貯め、資源利権を買い、香奈オフィスを大きくした。その後、奈津美は協調開発路線を打ち出し、買うよりも採掘権の交渉をして、資源探索を進めながら、多くの鉱山を掘り当て、飛躍的に伸びて、資源メジャーの一角にのし上がっていた。



瑠璃も奈津美も結婚して、姓は替わったが、会社の名前は香奈オフィスで替わらなかった。資源ではヨーロッパを仕切っていたような会社だった。



切人が香奈のひ孫だと云う事は決定的だった。香奈も大岩だったし、切人も大岩だった。



神太朗は、証券会社を再建させたように、理想主義者でありながら、実務家としても優れ、指導力のあるリーダーだったが、切人も、香奈直系としての影響力が強く、自分の子供たちや弟子とも云えた人たちが、切人達のマリアホープそして海外香奈が多く保有する企業のみならず、聡美や神元達が過半数近く持っている大きな企業の経営に関与していた。



切人達は、食品事業を中心とするヨーロッパの企業グループを、神元達のグループが保有する商品相場から派生した食品の原料会社、快適農園グループ、神帥の食品会社などと協力しながら、運営して、ヨーロッパの食品産業を幅広く握っていた。



切人自身と云うか、香奈海外とマリアホープそのものは、中クラスの食品会社群、特に裏方に近い食品会社群の株式を多く保有していたに過ぎないが、大手の食品会社を神元や聡美が、過半数に近い程保有していた事もあって、切人グループに、その経営を任されていたので、それらの大きな会社を含めると、ヨーロッパの食品産業そのものを切人が握っていると言ってもいい状態になっていた。



そうすると、利益配分を、切人自身の保有する会社群に、少し多めに配分する事程度は出来た。もはや、食品産業を中核とした、一つの大きなグループを、ヨーロッパに作り上げていたと言っても過言ではなかった。



切人は、景気動向に大きく左右されない食品産業をベースにして、大きな企業グループをまとめていた。切人自身は、そんなに多くの会社の役員になった訳でもなかった。ジブトラストの役員と、香奈海外とマリアホープの社長、そして全ヨーロッパを管轄する食品会社本体の役員になっている程度であったが、その影響力は強かった。



切人自身は、実業だけと云うよりも、相場と実業とをミックスさせたような運営を行っており、ヨーロッパの隠れた大物と言われていた。



正人は、金融を中心とする香奈国内のネットワークを作り上げながら、香奈ハイテクを中心としながら、リトルキャット系列の実質的な責任者とも見られていた。実際は、香奈ハイテクの事業そのものは、正人を子供扱いするような、実際にも親や祖父たちの超高齢者たちが、運営していたし、リトルキャット運用会社系列は、猫たちが直接運営していたし、株式会社リトルキャットは、不動や快適が運営していた。経理ベースの管理を、正人がもう一つの大きな銀行の退職者を派遣して、行っているにすぎないので、正人自身は、お世話係と言っていたが、それをそのまま信じる人は少なかった。



世間は、切人が香奈海外を担当し、正人が香奈国内を担当する、香奈の後継者と考えていた。そして奈津美が香奈オフィスを担当している後継者と考えていた。


神太朗もジブトラスト本体として、食品事業群との協力関係を進めていたが、それでもやはり、食品企業群は、香奈グループの本当の本家だとする意識もあり、一種の独立空間に近い雰囲気はやはり存在していた。切人は表だって神太朗に反論しないものの、香奈の一声がある時とない時では対応が違うような雰囲気があった。



新しい子猫たち No.14

2014-01-27 00:00:25 | 新しい子猫たち 

香奈グループのヨーロッパでの充実


そこにスイスカナコインが登場した。スイスカナコインは、始めはスイス国内の小規模の自分達の会社を数社運営していただけだったが、コッソリートの証券会社を買収してからは、かなりの株式保有を保有する事を契機にして、各方面で、協力関係を築いていた。



そしてスイス総合企画で、広い分野で会社を再生したり、起業を手伝ったりするようになり、これらの協力関係も使い、会社を成長させていった。



スイスカナコインは、香奈直轄の企業群なので、香奈ファイナンシャル、つまり香奈海外には近親感があり、協力関係を築いていた。ジブトラストの各グループにもそれなりの協力関係もできた。



ロボット工学や未来エネルギーのヨーロッパ販社の筈だった未来テクノも、再生ファンドとなったカミヨエンジニアリングが出資して、ハイテク分野を中心として、幾つかの先進的な企業群を傘下にして、大きくなっていた。



ヨーロッパではジブ系列そして香奈直系系列と分かれながら、ジブトラストグループは、大きな会社から小さな会社まで、多数の企業群を有する有力なグループだった。ただ取引でも並立と云うより、乱立に近い程、幾つにも分かれていたし、実業ではもっとそれぞれの会社は、協力はしながらも、やっぱり独自の方針で運営している状態だった。



ジブトラストは当然アメリカでも取引は盛んに行っており、一族の会社もアメリカに協力企業も持っていったが、ジブ最大の取引子会社と言えたカヨコトラストとファイナンシャルは、実業への深入りを避けて、取引に純化していた事もあり、ジブ傘下の企業はアメリカでは少なかった。



アメリカでは、神帥は、商品相場関係から、実需関係にシフトして、関係会社を増やしていたが、神帥は仲買や取引窓口のように地味な分野で、独自に会社を展開していた事もあり、アメリカでは、一般にはそれほどジブトラストの名前も香奈ファイナンシャルの名前も知られていなかった。