のら猫の三文小説

のら猫が書いている、小説です。
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新しい子猫たち No.2215

2022-05-31 00:19:05 | 新しい子猫たち 
神太郎は馬鹿ではない。証券不況で潰れそうだった 証券会社を立て直し 今では世界のナンタラと言われる程大きな会社にして、関係する証券会社は世界中にあった。それも神太郎がしたのだ。そしてジブ直属の企業の幾つかは神太郎が作った。自前の販売網なき 大手の食品食品会社と言われ、世界の食品業界でも もはや大手になった治部食品も神太郎が作ったのだ。それも有能な人材を見つけ出しソイツらに任せ、時々チェックし 指導した。ただ神太郎の指導は ソイツらが真面目に努力している時はべったりと甘えても面倒みる。ついつい部下たちも相談する癖がつく。香奈は まずは自分で考えなと完全に任せるので ソイツらは必至で頑張るのに対し 神太郎は部下に甘える癖をつけるのだ。そしてカバーできる分野が減る。香奈は遺伝子研究所から 知財を扱うコネコ研究所も 果ては 野菜 果物等を扱っている会社まで及ぶのだ。


香奈の後継と言われて 久しいが 知れば知る程 香奈の大きさを知っていた。


香奈オフィスは香奈から瑠璃に経営を譲り そして香奈オフィスは 世界の資源エネルギー分野での大手になった。ただ瑠璃に反発する幹部たちがいて 香奈はその人たちを元に海外でのジブトラストの基礎を作った


神太郎も薄々 香奈と瑠璃との間の葛藤は知っていた。世界の資源エネルギー分野のハゲタカと言われた ハゲタカ瑠璃でも 香奈オフィスの全権を掌握出来なかった。香奈は巧く 幹部たちの反発独立ではなく ジブが香奈オフィスの人たちを引き継ぐ形にしていた。


ジブ直属の企業群は今や大小合わせて 大きな勢力であった。香奈は 強い指導はしていないと言っているが、香奈が任せ、そして任された人たちが大きくしていた。この企業群は大きな利益を出しているが 香奈の それとなく の指導もあって 目の前の利益よりも将来の利益を目指して 社会貢献もする。ゼニゼニとはいわない。下はトップを見ているのだ。もっともこれらの企業群は財政基盤もいい事もあった。


この直属企業群が今や 神太郎にとっては脅威となっていた。彼らはじっと見ていて、もし神太郎が香奈程 任せるという対応が出来ず、目の前の利益に走ったら、彼らは実質的に独立していくだろう。別に財政基盤が危ない企業群ではなく むしろ優秀な企業群なのだ。資本関係がドーダは何のつっかえ棒にはならない。神太郎系の直属企業群は資本関係から見て 本来の窓口である ジブの管理ではなく 神太郎を頼りにしている。ジブの管理もこうした企業群には、余計な指図はせず 神太郎オフィスに任せている。それと同じなのだ


ジブは実質的に 神子や神之助たちグループとの連合でもあるが 問題は神子や神之助たちだけではないのだ


神太郎オフィスは盛んに 企業の社会的責任を口にするが 別に道義的な問題だけでなく、我々は目先の利益だけを追求しているのではないと 社内に公言している意味の方が強いのだ

新しい子猫たち No.2214

2022-05-30 00:15:22 | 新しい子猫たち 
聞いていた人たちは みんなシーンとなったが


神之助が ぼそっと言った。


彼の事は噂でしか知りませんが あの国どころか 世界でも有数の人格者にして優秀な為政者だった と言われてます。驕らず 自分に対し 真摯だった とも聞いてます。ただそんな人程 自分の評価が曇るのでしょうね。あの国も彼がいなくては 一気に冬の時代になると金融屋たちは言ってます。彼の代わりはそう簡単には出ない。香奈さんも同じですよ。香奈さんも注意してくださいね。


香奈は

私は人格者とは程遠い存在だよ 

と言ったが


神太郎は こう言った


その人が人格者である必要はない。頑張っている人を評価し、有能な人材を育てればいい。そして有能な人材に任せればいい。自分に過信すれば 注意する。それで充分ですよ。それが香奈さんです、ジブがここまで大きくなったのは香奈さん一人の努力では勿論ないが 香奈さんがいなかったら とてもこんな大所帯に育てあげ 有能な人材がその力を発揮できる組織にはなっていない。私は後継と言われ 色々と調べると調べる度に絶望的にすらなる。判っていても出来る事には限界があるんですね

新しい子猫たち No.2213

2022-05-29 00:07:43 | 新しい子猫たち 
香奈はその席上 あの独裁者みたいなオッサンの話をして みんなに柔軟性を求めた。


あのオッサンは 真面目過ぎ そして潔すぎだったと香奈は言った。それが彼の欠点だと何回も言ったのに と悔しがった


彼は真面目 真摯 と云う点では、抜きんでていた。あの国の歴史でも稀有の存在だろう。ただあの国で完全な医療体制は まだ できない。神三郎君のエンゼルホープ病院は幾つかの偶然により優秀な医師たちが集まり 神三郎君の天性の医術 そして加代子さんの財力 カヨコファイナンシャルの優れた運営力等もあって 今の世界ではあり得ない程充実している病院になった。そんな病院は 優れた為政者だけで出来るワケがない。


だから 彼の体調不良を聞いて、私は何回も連絡したし、管理から人まで出して エンゼルホープ病院に来るように勧めた。彼は 奥さんを早くなくした事もあって 権力を掌握すると医療体制の充実に努めたらしい。その自分が自国の医療体制を信じず、エンゼルホープ病院に行けないと言ったらしい。


柔軟性が彼に欲しかった。自分でエンゼルホープ病院の医療水準の高さを実感したら、医師を時々勉強させるために送り出す事も出来たし、私に言ってもらえれば財政的な支援もした。いくら正しくても 潔くても それに固執してはいけない。


彼亡き あの国は 折角彼が育て、頑張っている人たちの後ろ盾が突然と消え、そして彼らも自分の権力に溺れだすかもしれない。権力を持てば持つほど 真摯になれる人材なぞ そんなにはいない。


彼は自分の価値を正しく理解していない。彼がいなくては育つ人材も育たない。


香奈がこんなに 人を高く評価するのは珍しく みんな驚いた。

新しい子猫たち No.2212

2022-05-28 00:07:43 | 新しい子猫たち 
香奈は超高齢の自分に依存する部分がどこまであるか 不安になった。常務にその点を確かめるように言って、香奈個人ではなくジブトラストの執行部が肩代わりできるようにしようと思った。言った場所がジブトラストの幹部会。


神太郎はあっさりと言った。

それは無理です。香奈さんのしようとしていた事を我々がどれだけ引き継げるかが問題ですが 香奈さんの問題ではないです。我々の課題ですが 香奈さんが元気でこれからもリーダーシップを取ってもらい、我々がそれを尊重していけるのかにかかっています。香奈さんの問題ではなく我々の問題です。


幹部会はその指摘に ぐうの音も出なかった。まさしく 神太郎の云う通りなのだった。今でも通常業務は神太郎オフィスの差配に従っていた。ただ香奈直轄の管理は今まで通りだった。そして神太郎オフィスの云うのは本質的には正しいが 正しさに対する過信と硬直性があった。この硬直性は香奈直属の管理の姿勢で緩和されていた。ただ全体として緩むとそれはそれで問題なのだった。その案配が実に難しい。

新しい子猫たち No.2211

2022-05-27 00:04:22 | 新しい子猫たち 
ただ このオッサンはある程度経つと ちょっとした病気でなくなった。ちょっと難しい病気なので 病気になった時に 香奈は人を派遣して 日本のエンゼルホープ病院にくるように勧めた。ただ このオッサンはこの誘いを断った。医療体制を充実させなかった責任は私にある。エンゼルホープ病院は世界でも稀なほど医療水準が高い病院とは知っているが この国の医療体制に責任のある私が逃げるワケにはいかない。それで亡くなってしまった


ただ子供は可愛いので 難病にかかっていた息子は 香奈に託した。子供は直ぐに治った。香奈は日本にいるように勧め、この子は誰かの養子と云う形になって日本で育った


この息子に 香奈は言った。

お父さんは立派だったが 彼がもっと長く生きていればあの国はもっと良くなった。今後は民主制になるように彼は進めていたが ただドーンと統治水準は落ちるだろう。彼が育てた人も 彼がいなくては 次第に劣化していくのは、目に見えている。彼は稀有の存在なのだったが彼にその自覚がなく そう思うのは自惚れと思うタイプ。その柔軟性が欲しかった。彼がそうだったとあの世で思うためにも 君は生きていくのが一つの宿命なんだよ と言った


あのオッサンは私欲の欠片もない人でゼニも残さなかった。香奈は色々と誘いは出したがそれも断って、そんな金は社会保障とか医療体制への助けとして欲しいと云う奴だった。香奈はそれも知っていたのだ。あの国に帰れば 単に旗として使われるだけになる。香奈は彼をジブ関連の企業で その子の意見を聞きながら 生活できるようにしてあげた。それは彼に対する供養にもなると思った。