のら猫の三文小説

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次平の挑戦 No.19

2012-12-08 18:13:02 | 次平の挑戦

次平一家、長崎に到着



船旅にも、おゆきも子どもも大変喜んでいた。長崎に着くと、石部と鉄平の長崎店の番頭が待っていてくれた。福岡の福田から連絡を受けておりました。長旅ご苦労様です。数日ごゆっくりしてください。鉄平さんが港を見晴らせる屋敷を準備しておられます。そこでお休みくださいと言って屋敷まで案内してくれた。

道中で、長崎の医院は問題ないかと聞くと、「先生が居なくなって、その上何人も抜けた時は大変でした。今は各地から医師も来るし、なんとかやってます。先生今度はゆっくり滞在されるとの事で喜んでおります。」



案内された屋敷は、長崎の港を見渡せる庭園もある広い屋敷であった。管理人によって掃除はされていた。料理店から食べきれないほどの料理も届いた。おゆきは、おいしいと言って食べているこどもたちを見ていた。

次平の長男は功一と言って、17才になっていた。次平に似て、頭がよいが、医術にはあまり関心がなく、算学やよくわからない難しい本を読んでいる。ただ身体はそんなに頑丈とは言えない。注意しないと本ばかり読んでいる。2番目の子は、もう15才になり、女の子だったのに、次平の側にいつもいたがる。医術が好きか次平が好きなだけか分からないが、次平の話を良く聞いている。自分の小さい時とそっくりだ、父上の側がいいといつも言っている。話では、お香さんの子どものお恵さんは、はきはきして思った事をそのまま言うそうだ。この子は、言葉つきまで、次平に似た口調で喋るし、なかなか思っている事も言わない。三番目の子の洋介は、11才になった。まだまだやんちゃで、この頃は木刀を振り回している。身体も頑健で病気した事もない。お腹が一杯になると、子どもたちは旅の疲れもあったのか早くに休んでいた。

みどりだけはまだ次平の側にいたがっていたが、功一がもう寝ようと言うと何か言いかけたが言わず、ついていった。なんか私みたいとおゆきは思っていた。子どもが休むと、次平は庭を歩こうと言って、おゆきと一緒に長崎の港を見晴らせる庭園を歩いた。次平はおゆきに話かけた。




次平「この町で、自分の夢を追いかけ始めた。新しい医術を知って少しでも早く病気の人を直せるように、病気の人が心配なく治療が受けられるに、そしてお金も心配なく受けられるように、質の高い医療を受けられるように、夢を追いかけて挑戦してきた。

鉄平さんは私の夢に共鳴して私を支えてくれ、良質で安くよく効く薬を提供してくれた、そして病気の人に合う食事を、食事の心配なく治療が受けられるように、そして病気が治った人が心配なく仕事がつけるようにと夢をつないでくれ、同じように挑戦してくれた。お前も私を支えてくれている。

お香さんも鉄平さんと一緒に夢を追いかけてくれている。私は、自分の夢を他人に聞かせ、そして巻き込んできた。そして多くの人が支えてくれた。

鉄平さんも同じように多くの人を巻き込み、夢を追いかけてくれている。 お香さんは少し違う。私や鉄平さんと一緒に夢に挑戦してくれているが、私たちは自分の夢を追いかけ、他人を巻き込んでいるが、お香さんは他人に夢を語らせながら、私たちの夢と結びつけて、夢を大きくしてくれた。だからもっと多くの人を巻き込んでいく事が出来た。」



おゆきは、先生がこんなに熱心に話す事を見たことがなかった。

おゆき「先生は挑戦し、夢を実現した。それをあの子たちが、継いでくれますよ。鉄平さんたちの子どもたちも、鉄平さんやお香さんの夢を継いでくれますよ」

次平「いや、まだ挑戦中ですし、いつか多分私たちの挑戦は負けるような気がしています。」とそして言いづけた

次平「今なんとか寄付で維持していけている。始めの数年は寄付が多く集まり、それを鉄平さんに相談すると、お香さんが色々な所で、色々な両替商に預けたり、色々と運用してくれている。

各医院が足りなくなると、それで補充することにしました。江戸の医院では、はじめ大きな寄付が多く、余剰金が最も多かった。それが段々大きな寄付も減り、運用資産の利益から補填するようになりました。

最近は、多くの人を巻き込むお香さんの事業が拡大してきて、その人たちが寄付してくれているので、補填する事も少なくなりました。長崎では厳しくなりつつある。

最初から大きな寄付がない松江は、多くの人が少しつづ出してくれて、逆に持ち出す事が少ない。これは多くの人が支えてくれているからなのです。

大坂では鴻池が多大の寄付をしてくれるし、鉄平さんやお香さんの関係者も寄付してくれるが、普通の人からの寄付はそんなに伸びてない。

今はお殿様が支えてくれている萩や福岡も、永遠には続かない。今は私が巻き込んだ人と鉄平さんとお香さんが巻き込んでくれた人が中心に支えています。そしてはいつかやっていけなくなる気もしています。多くの人が、今よりももっと多くの人が、支え合う事が必要なんです。


おゆき「そんな 先生は夢を実現し、鉄平さんもお香さんも私たちが見てきた通り、 多くの人に安い薬や食事を提供し、仕事を提供していますよ。」

次平「私は支えてくれる鉄平さんに出会い、おゆきに出会った。そして松江のお殿様、黒田のお殿様、毛利のお殿様そして先帝にも可愛がって貰えた。 そしてお香さんまで私たちの夢を追いかけてくれて、より多いの人を巻き込みながら支えてくれている。奇跡に近い事です。

だから今は実現できるているのですが、限定的なものでしかありません。人は永遠には生きられない。私達も鉄平さん達もいつか死ぬ。私たちの夢が、多くの人の夢とならない限り、実現しつつげる事はできない。多くの人が支え合い続ける事は難しい事なんです。一部の人だけが寄付してくれるだけでは、無理なんです。

多くの人が、もっと多くの人が支え合う事が出来なければこんな事はできない。私たちも、鉄平さんやお香さんも、今大きな寄付をしてくれる人もやがては、いなくなります。 それに私たちの子どもも鉄平さん達の子どもも、自分の夢を追いかけますよ。

おゆき「悲しいですね」

次平「いやいつも挑戦しつづける事が大切なんです。 あの子たちに私の夢を語り、挑戦しつづけた事を話していきたいと思っています。そしてあの子たちも自分の夢に挑戦できるように育てよう。自分の夢に共鳴してくれる人を見付け、そして出来れば多くの人たちの夢を結びつけ大きな夢に出来るように、そしてそれに挑戦できるように。私は結局 あの子たちにお金や財産を残す事は出来そうもない。残せるのは、自分の夢に挑戦しつづけた事だけかもしれない。」

おゆき「しかし 私もお香さんも自分の夢は実現しましたよ。だって、今私は先生の側にいて、先生の心に触れているし、お香さんも今頃鉄平さんと生まれたままの姿で抱き合ってますよ。」と言って、次平の胸に飛び込んできた。


おゆきは、内心鉄平がこの屋敷を自分名義にしている理由が少し分かっていた。管理人が預かっていましたという行李の中にお金が入っていた事も知っていた。次平が先帝から賜った物を入れようとして気が付いた。鉄平からの手紙も入っていた。「次平先生には黙って、万一の時に使ってください。」と手紙だった。このお金は黙ってそのままにしておいた。

みどりは先生の後を継いで、医者になるもしれないが、みんなを説得したりするのは難しいだろう。功一は学者になるか、それともお香さんの事業にも関心があるみたいだ。どちらにしてもあの子には似合いそうだ。先生の後を継ぐ気はなさそうだ。洋介が医者になればとも思ったが、まだまだ分からなかった。あのお金は、先生にも黙って、あの子たちの為に取っておこう。


次平は、おゆきを抱きながら、
思っていた。



心の病の外科的な手術も、より安全にやりたいと言う事は夢かもしれない。多くの人がお金を気にせずに、適切な医療を受けられ続ける事も夢かもしれない。しかし自分の夢を語り、挑戦していけば、たとえ自分の夢が、挑戦が、いつか負ける事があっても、だれかが、もっと大きな夢に挑戦していってくれると信じていた。




次平の敗北に続きます。


次平の挑戦 No.18

2012-12-08 11:15:36 | 次平の挑戦

次平一家は、福岡に到着した



福岡につくと、田宮は福岡医院で待っていた。挨拶して、暫く殿様の様子などを話していたが、次平をさらうように城につれていった。

黒田家は先君の道隆は隠居して、若君の黒田道直が後を継いでいた。「お殿様 お元気そうで、なりよりです。」
道直「次平先生に助けられました。田宮は、いつも側にいて守ってくれています。 それにお殿様はやめて下さい。 先生は従四位なんですよ。」
次平「いや 助けたのは、私ではなく、天命なんです。道直殿は天命によって、多くの民を救う運命だと思われます。ご自分だけの身体ではないのです。ご自愛下さい。」
道直「過分なるお言葉を頂きました。心して努めます。父上もお会いしたいと申しております。」
道隆が現れ「道直殿 失礼しますよ。次平先生、長い間お会いしていませんが、相変わらずお若いですね。道直殿 次平先生をお借りしますよ」
道直「お父上 私の悪口はご容赦ください。」



別室に案内して、道隆は言った。「次平先生は従四位なのに、あの時とまったく変わりませんね。道直はあの歳まで生きています。次平先生には感謝の言葉もありません。田宮に聞いてもよく分かりませんと言うばかりですが、道直は大丈夫しょうか。」
次平「田宮から最近のご様子を聞いております。もう異常は感じられないようです。道直殿には申し上げましたが、これは天が生かしているとしか申し上げられません。てもご注意は必要です。」
道隆「田宮にはいつも側にいてもらえるように、御殿医ではなく、家老格の用人になって貰っています。田宮は不満そうだが。 道直には少し早いが後を継いで貰ってたが、もう少し後でもよかったと思っています。」





福岡の医院に戻ると筆頭の福田から説明を受けた。

福田「医師志望の学生は藩命でくる事が多く、毎年多額の寄付を貰っています。郡部への巡回診察でも十分な報酬を頂いている。富裕な町人も一般の方も寄付してくれています。それに鉄平さんの薬種問屋だけでなく、お香さんの福岡事業も拡大していて、今は100人を超えてます。そして働いている人たちの分といって多額の寄付を頂いています。普通の店もそれを見て比べられるので、寄付をしてくれるようになりました。検診担当が二人、医師見習いをつれて検診に回ってます。診療にも十分な体制で望む事ができております。先生のお屋敷で、学生たちを教えています。」、

次平「私が診察した方がよい病人さんはおりますか?」

福田「今特に先生に診ていただくほどの病人はいません。ただ心の病の方がいらっしゃるので、診ていただければ私たちも勉強になります。先生どの程度滞在されますか?」、

次平「奥と子どもたちもまだ元気なようだ 1週間程度いる予定です。長崎へは船が早いかな。」、

福田「ここからならそれほど差はないようですが。奥様とお子さまには、山道よりも船がいいかもしれません。船は10日後に出ます。お疲れでしょうから暫くお休み下さい。3日後から何日か診察して頂けますか?私たちも勉強になります。」、

次平「私は宿にいてますので、何かあったら呼んでぐさい」、

福田「お屋敷は学校にしてしまいました。申し訳ありません。」、

次平「それは私からお願いした事です。」




翌日、福岡藩の家老の大元が宿を訪れた。



大元「次平先生には、始めてお目に掛かります。福岡藩の家老職を勤める大元と申します。お香さんからお手紙頂きまして」
次平「ご家老さんはお香さんをご存じなんですか?」
大元「普請奉行しておりました時にお香さんにお会いしまして、今福岡事業といっております計画の案をお聞きしまして、失礼な事を申し上げました。しかし今は織物縫製工場と鉄工作業場を抱え、100人を超す人が働いておりますし、福岡の産物も多数販売してもらっております。お香さんは季節毎に、ご丁寧な連絡を頂きます。次平先生にもしお時間がありましたら、お香さんの福岡事業を見て頂ければと思い、参上しました。実は、この事業には、私も多少お手伝いしました。私も自慢している事業でもあります。お香さんの福岡事業の責任者に案内させます。」

次平「これは楽しみです。そうだ。奥もお香さんとは友達なんです。つれていってもいいですか?」

大元「勿論構いません。いつが宜しいでしょうか?」

次平「明日でも結構です。」

大元「海岸付近なので、ここからは近くです、では明日の昼すぎにお伺いします。」

おゆきと話を聞いた功一が行くと言ったので、結局三人の子どもが全部付いていった。


大元が自慢するだけあって、大変立派な工場であった。大元は「しかしお香さんはすごい人ですね。十年たらずでこんな立派な工場を作り上げてしてしまうのですから。 私は始めてあった時に、こんな夢のような事は、お香さんのような綺麗な奥方が道楽でやる仕事じゃないと言ってしまいました。ここから福岡の産物や産業が育つと私は確信しています。」と言った。

福岡事業の責任者が説明した後も、「お香さんの指示で、お香さんがこのように変えた等」とお香を誉めていた。福岡事業の責任者は、丁寧で親切に説明して、最初は、誇らしげな顔つきだったが、最後の方ではあまり口を利かなくなっていた。



次平は大元に聞いた。
次平「私たちが来て、お邪魔だったのでしょうか?」
大元「いや 私がお香さん、お香さんと気安く言い過ぎるからでしょう。連中にとっては、大切な人で、お香様とか旦那様とか言っています。他の人が気安くいうと気に入らないのてしょう。私が殿のご命令で他藩の人を案内しても、お香さんと気安い言葉を言いすぎるといつもそうなります。お香さんとは言い過ぎないようにしているのですが、お香さんの夢の原点とも言える次平先生に、お香さんの成果を見せたくて、つい言いすぎてしまいました。」



功一は珍しく目を輝かせて時折、質問したりしていた。おゆきは洋介が走り回らないように気をつけて、みどりは次平の側にじっと付いていた。次平は、思った。「ここでもお香さんは多くの人の夢を私たちの夢に結びつけているのだ。功一はこんな事が好きなのだ。



福岡の医院では、次平が滞在していると聞いて、多くの病人がやってきていた。医師3人が事前に問診し、診断して、次平が診察した。あまり丁寧に診察するので時間が遅くなったが構わず診察した。明らかに軽い病気とか他の病気は筆頭の福田が私ではご不満でしょうがと言って診察した。福田も福岡では名医の評判が高く、病人は納得して帰った。次平は事前に診察した医師3人と診断結果について話あった。福田も同席して聞いていた。



みどりは、こっそり陰に隠れて聞いていた。こんな診察が5日間あった。事前診察する医師は福田が指名していた。



明日長崎行きの船に乗る前に、福田が挨拶に来た。「事前診察した医師には大変参考になったようです。長崎には長くご滞在でしょうか?」、
次平「まだよく分かりませんが、出来れば1年は居たいと思っています。」、
福田「それは石部さんも喜ぶでしょう。長崎に医師達を研修にいかせても宜しいですか?」
次平「結構ですよ」




次平の挑戦 No.17

2012-12-07 17:13:56 | 次平の挑戦

次平、長崎までの長い旅に出る!



次平はおゆきと三人の子どもたちをつれて、故郷の松江に行こうと思った。長男の功一は、もう17才で、算学やカラクリ物が好きだった。もう通っていた塾で代講するほどで、直ぐと言われても色々と準備がなどと愚図っていたが、長崎で暫く滞在すると聞くとさっさと準備してしまった。

お香から送ってきたカラクリ人形もすっかり分解して、お香さんに、色々と改良点などを書いて送ったりしていた。お香は色々と逆に聞いていたり、驚いた事に大坂の理平が人を連れて質問に来た事もあった。

神社に算学の額が掛かると熱中して、部屋に閉じこもって考えて、答えを額に掛けていた。蘭語なども好きなようで、これからは蘭語だけでは駄目かもしれないなどと言って、次平とも何か話していた。

おゆきは何にも分からなかった。お香はおゆきに「功一さんは、これから大変な人になるかもしれない」と言ってきたが、おゆきにはよく分からなかった。長女のみどりは14才になっていたが、おゆきと同じで、父上が好きで、父上の側にいるためには、医術を勉強すればいいと思ったいるのか、単に次平の側にいて、いつも話を聞いていたので、次平が行くと言えば、そのまま付いていくのが当然という風に準備していた。

次男の洋介は頑健な子どもだったが、木刀を振り回していた。次平はこの洋介に剣術を教えていた。おゆきは、次平にこんな所もあるのかと思ったが、次平は剣術指南の次男という事を忘れていた。おゆきには、次平はいつもお医者様であり、先生でもあった。



松江に行くと、すっかり年置いた父と貫禄が出てきた兄と兄の家族に紹介した。父は功一には賢そうな子だといったが、洋介が気に入っているようだ。次平の若い時とそっくりだといって、剣術を教えたりしていた。みどりはおゆきを小さくしたようで、父は小さいおゆきさんとも言っていた。家族揃って墓参りをしていた。



暫く松江にいた次平は、松江の病院に行く前に、こっそり原家の墓に参り、早苗の菩提を弔った。松江の医院は元々貧しい人のために、鉄平が作った医院であり、完全寄付制とした時に大きな影響を受けるのではないかと懸念していたが、逆に寄付は少しつづ増えていっていた。富裕層は少ないものの、より多くの人が寄付していた。

鉄平からも従来の薬種問屋は利益がすこしつづ減少すると聞かされていた。それは次平の医院にも響くであろうと思っていた。御殿医を止めた経緯もあり、いままで藩からは寄付を貰ってなかった。松江藩の城中にも挨拶に行った。松江公は不在であったが、城代家老は今も原家であった。複雑な思いで挨拶した。原家は、松江の医院への寄付を申し出て、郡部の巡回診察をしてくれるように依頼した。

次平は承諾し、松江の医院に対して、協力して行うようにと申し渡した。松江の医院は、医師5名程度で、城下に賜った屋敷には、数人の学生や医師見習いたちが住んで、松江の医院から医師が授業にいっていた。ここで次平は今までの医師の事前診察の後、診察して、事前診察した医師と討議していた。数日間診察していた。次平は実家に泊まっていた。



萩にも立ち寄っていた。三之助と京二には久しぶりに会った。二人とももう立派な武士であった。二人に、城に連れて行かれた。毛利公は不在であったが、城代家老と話をした。毛利公は、次平の寄付による医療に感銘して、定期的な寄付をしてくれていた。三之助や京二の働きによるものであろう。

萩の医院はさながら医学館のようであった。学生や医師見習いは多く、私費はもとより、藩命による学生もいるようである。次平は、数日間医師たちの事前診察の後に診察して、その後医師達と診察結果について討議していた。時間がとれた時は、おゆきと三人の子ども達をつれて萩を散策した。萩はきれいな町であった。おゆきもこどもたちも喜んでいた。功一が特にこの町が気に入ったようで、何度も一人で散歩していた。神社の算学の額も掛かっていて、書き写してたりしていた。



三之助は、お香さんに感心していた。「お香さんの計画を参考にして、長州でも色々民生安定の方策を取っていたが、やはり藩営よりもお香さんに任せるべきものもあった。お香さんも今でも、物産品の開発などをやってくれているが、藩との競合を避け、始めに小規模すぎた事もあって福岡のように大きくなっていない。全面的に任せた方が良かったかもしれない。」

京二はもう医者でも料理人でもなく、行政に関与しているようだった。京二には今の仕事が向いているのかもしれない。病気を治す事も決して簡単ではないが、病気にならないようにするのも簡単ではない。京二にも、長州の人にもこれで良かったのだ。



萩から長府へは山道を通るので、長州藩は警備の侍をだして送ってくれ、おゆきと子どもたちのために駕籠を用意してくれていた。長府でも殿様は不在であったが、城代の須佐と挨拶した。下関へは長府藩の警備がついた。

おゆきの父である時次郎が首を長くして、娘と孫達の来るのを待っていた。実は時次郎は何回となく、京の次平の屋敷に来ていた。それでも大きくなった孫達を見て喜び、当分ゆっくりと滞在してくれるように言ってくれた。

みどりを見ると、おゆきそっくりになってきたと行って可愛がった。みどりが次平の側にいつもいるのを見て、本当におゆきにそっくりだと言って、おゆきと笑っていた。功一は萩の算学の額の問題が難しいのか、部屋で考えていた。

洋介は海岸で走り回っていた。時次郎は、洋介を目を細めて見ていた。1週間ゆっくりと過ごした。おゆきもゆったりしているようであった。時次郎はこれからどうされますかと聞いたので、しばらく長崎でもう一度勉強しようと思っていると次平は答えた。時次郎は福岡から長崎へは船でいかれたらどうですかと勧めた。




次平の挑戦 No.16

2012-12-07 11:04:34 | 次平の挑戦

鉄平一家は自由な雰囲気のする
一家であった。


お恵は、お香そっくりの口調で言っていた。それでも たまには、鉄一がお香の手伝いをしながら話をしたり、お恵が鉄一と話をする事もあった。お恵と鉄平が楽しく話していると、お香はお恵に、「鉄平は私の男なの。お恵にはお前の男がいるだろ。」と言うと、お恵はやり返した。「今は私のお父さんなの、お母さんの男になるのはもう少し後。少しの辛抱も出来ないの」と言い返したりしていた。鉄平も呆れて、二人の顔を見ていた。鉄一は鉄平に言った。

鉄一「お母さんも姉貴も、綺麗で姿もいいし、身体もきれいだ。他の娘もみてもつい比べてしまう。」

鉄平「こら お前 覗いているな。お恵の裸も覗いたか?お母さんいや俺にとってはお香という方がよい。お香は苦労して手に入れた俺の女だ。お香がいるから、今の俺がいる。お恵はお香そっくりだ。奔放だが、頭もよくて、勉強もしている。忠助にも何か聞いていたし、薬の勉強させている青年にも質問しているし、本も読んでる。姿や顔だけで判断してはいけない。お前はもっと勉強しろ。顔や姿でなく心が見えるように。そして心の綺麗な女を手に入れろ。自分がその女にふさわしい男にならないと難しいぞ。本当にいい女は、夢を待たない腑抜けには惚れてくれないぞ。」

鉄一「ここの家では、親父たちは障子も閉めずに、朝でも平気で、裸で抱き合っている。姉貴はよく本も読むし、人の話も良く聞いている。けど、俺の前でも平気で着物着替ようとする。俺は慌てて、障子を閉めたりしているけど、姉貴の裸は、それでも見えてしまうよ。お淑やかとは程遠いし、俺の事を男と思ってないみたいだ。どんな大店の息子でも、男前と評判の男でも平気で振って、俺からしたら平凡な医師見習いとよく会ってるみたいだ、俺は何か、物産問屋へ用事に言いつけられて、暫くかえってくるなと言われて、追い出される事もあるよ。」




お香は、自分の作る料理はそんなに美味しい筈はないと思ったが、鉄平や鉄一もお恵もこれは味付けが変にいいながら結構食べていた。お香もやり合っていた。鉄一もお恵も大きくなり、お香は自由に育てていた。食事中は、みんなで話をしていた。食事の片づけもみんなでして、手よりも口が動いていた。お香は物産問屋に遅くまでいる事も多いし、鉄平も忠助と帳簿や手紙を見て、遅くまで話をしている事もあって、普段はなかなか親子一緒に食事する事も少なかった。ここではみんな好き勝手な事を自由に言い合って、親子というより、4人の友達として話をしていた。一応10日に一回としていたが、4人ともここの家にくるのが待ち遠しかった。 鉄平とお香が、大坂、長崎、福岡の話をすると、子どもたちも一緒に行きたいと言っていた。ゆがて、お恵は、「もう寝ます。明日の朝は私がご飯を作り、鉄一と一緒に食べておきます。明日の昼までには、ちゃんと着物きておいてね。 管理人夫婦も昼すぎには来ます。お父さんも鉄平旦那だし、お母さんはお香様にならないと。」お香「仕方ないね。」忠助や市蔵もここには連絡する事を避けていし、江戸事業の責任者も市蔵から言われていた。



鉄平とお香は夜から、翌日の昼間まで、ゆっくりと裸で抱き合っていた。もう二人とも若くないので、やはり若い時のような激しい事は出来なかったが、やはりこの時は一番充実した気持ちになった。


鉄平の心の音を聞きながら、この人は、長崎にも次平先生の家を作り、お金を隠している。おゆきさんにはまだ黙っているべきだろうか?ここの屋敷にもお金を隠している。鉄平は薬種問屋そのものに悲観的になってみたいだ、私たちの挑戦が負けると思っているのだろうか?

私と共にこの郊外に行くのも喜んでいるし、物産問屋にもよく遊びにくる。しかし私たちの挑戦は続けなければいけないのだ。この江戸の事業場で作った鉄材や時計などの細工物なども好調だし、物産問屋にも色々と引き合いも多いし、光次さんの作った細工物も面白しい。

次平先生さんの子どもの功一さんは、学者肌だが、才能があるようだ。江戸の事業場でも、熱心な人たちを雇って検討させているし、拡張する準備もさせている。まだまだ私達の挑戦は続くのだ。私たちの夢は、もはやみんなの夢なのだ。


鉄平とこうしていると私の夢は既に実現したような気になるのはなぜだろう。鉄平が旅に出歩く事が減り、私の側にいる事は良いことだ。鉄平にはもう少しゆっくりさせよう。旅に出歩かれるよりは、ずっと良い。もう私の夢は実現しているのかもしれない。



私だってまだまだ綺麗でしょうと鉄平に自分の裸身を見せながら、鉄平のものを自分の中に入れながら、動いていた。やがて激しく動き、自分の中に放出される温もりを感じていた。そのまま鉄平の胸に抱きつき、鉄平の心の音を聞いて、暫くそのまま鉄平に抱きついていた。

お香は鉄平に抱きつき、鉄平の鼓動を、身体の温かさを、自分の身体で感じていた。充実感に包まれて、寝てしまっていた。

鉄平は苦労していた。お香は離れると怒るのだ、苦労しながら布団を被った。お香の鼓動と身体の温もりが心地よかった。俺は、次平も俺もやがて、いつかは負けるような気がして、逃げ場所を作った。

でもお香は頑張ってくれている。お香がいなかったら、どうなっていただろうか? お香はみんなの夢を結びつけ夢を大きくしている。みんなの夢になれば挑戦が続ける事ができるのだろうか?お恵はお香に良く似てきた。あいつの夢はなんだろう。一平という青年は出会った頃の次平の雰囲気があった。しかしあの青年がお恵で満足するだろうか? 

お恵も男次第で化けるかもしれない。鉄一はまだ頼りない。次平たちはもう長崎についただろうか?俺達の挑戦はいつまで続くのだろうか?などと考えている内に眠りについていた。





次平の挑戦 No.15

2012-12-06 18:11:37 | 次平の挑戦

鉄平の隠れ家は鉄平一家のセカンドハウスになった。


鉄平の購入した郊外の屋敷は広くて、管理人夫婦が掃除してくれていたし、子ども部屋もひろく、子どもものんびりしているし、鉄平と一緒にゆっくりできるのは、嬉しかった。

ここに来ると、お香は物産問屋や色々な事業の事は忘れる事にした。鉄平にも薬種問屋とか薬の事を忘れるようにいった。野菜や色々なもの、時には魚なども持ってこさせて、お香は二人の子の母になり、鉄平の女房になり、鉄平の女になる事にした。はじめ お香が食事の準備をしていると、二人の子 鉄一とお恵も珍しそうに見ており、やがて鉄平まて来て、手助けをしていた。

何回かすると、鉄平はカラクリ人形なども持ち込んで色々と操作したり、分解して修繕したりするようになり、鉄一はそれを手伝いながら話をしている事が増えていった。お香とお恵は、台所で食事の準備をしながら話をしたりしていた。お香は、ここで鉄平と裸で寝ている事を子どもたちに隠さなかったし、夜には、鉄平は、お前達の父ではなく、私の男になり、私もお前たちの母ではなく、鉄平の女になる事を隠さなかったので、お香とお恵は男の話を遠慮なくしていた。




お恵
「小間物屋の渡は男前でちょっと気になるの。でもひ弱な気もして。」
お香
「それはわからないよ。つきあってみなくては。」 
お恵「でもこの間 穀物問屋の源一を振ったら、つきまとわれても、別れるのに苦労したの」 

お香
「やった後の始末ちゃんと教えたようにやっているの。」

お恵「源一とやった時にちゃんしたよ、あいつ一回すると、お恵、お恵と横柄な態度に変わっていったの、こんな奴だったんだと思ったら、自分が情けなくなったの。今は、医師見習いの一平さんといい感じなんだけど。」
お香
「一平さんって知らないれど、この間お前が連れ込んできた人という男の子。でやったの?」
お恵
「連れ込んだはないでしょう。 この間、した言うより、無理矢理させたかもしれない。もじもじしているから接吻したの。抱き合っていると、一平さんの股間が膨れてきたの。そして一平さんの手を私の着物の中に入れたの。わたしの胸の音を聞いてよ。と言ってる内にやったの。でも、あの人じっれたいのよね。」

そして又ある日、

お香「今はまだ一平さんと会ってるの」

お恵「時々会ってる。優しいだけどじっれたいの。もうすぐ医師と上がるための試験があると言ってた。頑張ってといってこの間またやったの。」

お香「よくやってるね。」

お恵「そうでもないよ。大体話をして別れ際に軽く接吻するだけだったり、軽く抱いてくれて終わりという事が多いの。」

お香「それが普通じゃないの」

お恵「でも 私は、この頃会えば私やりたくなるの。やっぱりお母さんの娘よね。」
お香
「でも只、 やりたいだけの娘じゃいけないよ。」

お恵「一平さん 心の病に関心があるといって、何か色々いってたので、書き留めておいて、番頭の忠助さんに心の病の薬の事聞いたり、この間店に来た田宮という先生にも聞いたりして、一平さんに話をしているの。私は自身は、よく分からないけど。」

お香「お前も少しは勉強してるのね。」

お恵「やりたいから来てとも言えないでしょう。」



そして又ある日、

お恵「一平さん 医師にもうすぐなれそうと言ってた。でもあの人は、私が接吻したり、抱きついたり、一平さんの手を着物の中に入れないと、なかなかやろうとしないの。だからあんまりやってないの。もっと積極的にやって欲しいの。」

お香「忠助や手代も、お恵が最近男の子連れ込んでいるといってたけど、お前は色々な男の子連れ込むの?」

お恵「馬鹿にしないで、私は同時に複数の子と付き合う事はしないわよ。ここ半年は一平さんとしか付き合ってないわ。お母さんはしてたの。」

お香「お父さんはその子見たことあるの」

お恵「会った事ある。」

お香「この間の子なら、お父さんは感心してたよ。お恵も少しは男を見る目がある。あの子は次平先生の若い時の匂いがするって。そうあの子なの。」そして続けていった。

お香「お前にも言ってなかったけど、私とお父さんは若い時ずっとしてたの。」
お恵
「今でもしてるじゃないの。」

お香「少し聞いてよ。でも色々あって4年か5年間別れたの。別れた当座はそう思わなかったけど、次第に私の心に穴が開いてきた。この間それこそ色々な男と付き合ったの。同時に複数の男と付き合った事もあった。一杯やって、床技には詳しくなったけど、心の穴は埋まらなかった。だから又やってた。そうしている時、お父さんと再会したの。もうお父さんは偉くなっていて、大変な人と付き合っていて、私でやっていけるか悩んだけど、ついていく事にしたの。心の穴に痛むよりはましと思って頑張った。突然偉い人と付き合うのは、つらかったけど、私は頑張ったの。もしお父さんと一緒にならなかったら、お前も鉄一も出来なかったし、床技だけの夜の女になっていたかも知れない。」

お恵「そんな話 始めて聞いた。」

お香「男の人は変わっていくわ。お父さんは次平先生と出会って変わったというか成長していた。私はそのままだった。突然成長している昔の相手に出会って、私は辛かったが、頑張ってついていったの。心の穴はいつしか消えていった。お前も一平さんとの事を真剣に考えた方がいいよ。」

お恵「次平先生というとこの間来た偉い先生でしょ。一平さんは神様のように言ってる。でも気さくなおじさんという感じだったわ。一平さんが次平先生のようになるとはとても思えないわよ。一平さんは優秀だそうで、私にも優しいけど、とてもそんな偉い先生にはなると思えないわ。別れても私の心に穴は開かないと思うけど。」

お香「それはわからないよ。お前の心は。お前の方でやりたくなって、やったと言ったじゅない。身体は正直だよ。心は後で疼いてくるよ。私は突然変わった昔の男に苦労してついていった。別れなければ、分からない。心に穴が出来るどうかなんて分からない。好きな男が成長すれば、お前も成長する。そんな男もいるのだよ。お前は私の娘。いい男に出会って成長していくかも知れないし、やってばかりいて枕や布団のように、夜だけの女になるかも知れない。お前次第だよ。」

お恵「夜だけの女、それはいやだよ。好きな人とするのは好きだけど、私も自分の夢を追いかけたい。一平さんの事どこまで好きかはわからない。よく考えて見るよ。お母さんはいつまでも綺麗なのは、どうしてなの?胸なんかもそんなにたれてないし、お腹も出てないし、肌もきれいだし。」

お香「お前とは滅多に風呂に一緒に入らないのに。 こら お前みているね。人の寝間を覗くな。」

お恵「だって障子あけて裸で寝てるからだよ。お父さんもまたまだ良い身体しているね。」

お香「鉄平は私の男。お前のお父さんであってもお前の男じゃない。私は、裸を鉄平に見せるの好きだし、鉄平の裸みるのも好きなの。朝日の中で、鉄平にすべて見せて、鉄平のものをくわえたり、なめたり、繋がるるの好きなの。今度覗くと、お金貰うよ。」

お恵「そんな事。若い娘に言う事じゃないよ。口に中にくわえるのって平気なの?でも単に口の中にくわえているだけなの?顔を上下させているれど。おとうさんは喜んでいるけど、男の人みんな好きなの?最後に飲んだりしているけど、大丈夫なの?美味しいの?」

お香「呆れた。お前は、そんな事まで覗いているの。あれは唇でゆっくりあれをこすっているの。口の中では、舌で舐めているし、単にくわえているのじゅないの。時々は棒の裏や先端を優しく舐めたりしているの。そしてその下の袋を舐める事もある。男の人が出すのはあの袋で出来るのだよ。口の中で大きくなっていく感じが私は好きなの。口の中で、鉄平は元気といってるみたいなの。それで嬉しくてなめたりしているの。私は好きだからやっているけど、男も好きじゃないの。それに平気と思わない人には出来ないでしょ。私は鉄平の出したもの飲むの平気だし、好きだよ。汚くないよ。あれがあるから、お前も鉄一も出来たのじゃないか。私は、あれで頑張れる。でもお前がいきなりやって嫌われてもしらないよ。」

お恵「それはそうだね。試してみたい気もするけど、一平さんにしたらもう会ってくれないかもしれないね。お母さんよく平気でやれるね。今ではお香様とも呼ばれているのに。お父さんは吃驚してなかったの。」

お香「私は元々品がないけど、心が穴があいた間、段々もっと下品な女になっていた。私でも、お父さんのものを口にくわえ出したのは、結婚してからだった。私の事嫌いになってももう遅いといってね。お前はまだ早いかもしれないね。それと一平さんに前の男の子たちの事は話していないだろうね。」

お恵「男の子たちといっても数人だけど、話した事ないわ。」
お香
「私は、過去の男たちの事も特に話していない。私にはもう幻の男たちだし、枕や布団しか思えない。聞かれたら、話すつもりだったけど、お父さんは聞かなかったし、私もお父さんの過去の女は聞かない。お父さんというより鉄平という方が良いわね。今鉄平は私の男であり、私の命なの。鉄平は私のすべてなの。一日中でも舐めていたいし、繋がっていたいの。私は鉄平の鼓動や身体の温もりを感じていたいの。鉄平に嫌われたらあんた殺して私も死ぬと言ってるの。鉄平には、私の体をすべて隠さず見せていいし、私も見せたいの。そして鉄平に負けないように努力しているの。私は江戸事業をやっているけど、話をする人はみんな才能もある熱心な人よ。そんな人の夢を引き出して、少しでも理解しようと勉強しているの。頑張れるのは、鉄平が好きだから。男を成長させ、自分も成長していかないと、いい男も離れるよ。姿形は飽きるのも早いよ。」
お恵「そうなんだ。私は、まだ一平さんを命がけで好きという訳でもないけど。なぜか、別れると直ぐに会いたくなるのよね。そして会えばやりたくなっているの。医師に上がってたら、相談したいと言われているの。お母さんも会ってくれない。」

お香「それは、進展しているじゃないの。私も会いたいけど、お前の男だし、決まってからでいいわ。これから会うのは、家でしなさいよ。」

お恵「それでもいいの?」

お香「物産問屋の方でもいいけど。薬種問屋の方が一平さんも来やすいでしょう。薬を勉強している人もいるし、色々な本もみれるし。お父さんは何も言わないと思うわ。鉄一は、そんな時は物産問屋の方にでも用事つくってやればいいの。男も、女で変わるかもしれないが、女は男で変わるの。少なくとも私は変わった。男は女の甲斐性だよ。綺麗とか姿がいいのではなく、お前も何か勉強してさ、話ができるようになればいいじゅない。単にやりたいだけの女じゃ駄目だよ。次平先生の奥さんのおゆきさんは次平の側にいて、細々とした面倒をみて、次平先生が仕事しやすいように、配慮している。私にはとても出来ない。だから、私なりに鉄平を支えるために頑張ってきた。お前も、いい奥さんで、細々とした面倒を出来るような女でもないし、やりたい時はやりたいと言うような女だ。お前はお前なりに頑張ればいい。」

お恵「私もこれでも心の病気の薬には結構詳しくなってるの。ただ私は他にも何か勉強したいと思ってるの。お母さんみたいに。一平さんとはもっとやりたいけど、単にやりたいだけの女じゅなくて、もっと別の何かを持っている女になりたいの。少し蘭語も読めるように、勉強し始めたのだけど、難しいわ。」