冶部一族の特徴
不思議な事に、冶部一族のガキたちは、自分たち一族にとって有用な人物を旦那とか嫁ハンにする能力があった。能力と云うか嗅覚みたいなものだった。
一般的に、旦那とか嫁ハンは、金持っているとか権力があるとか資産がある人の息子だったり、娘だったりしていた。ただ普通の人とか恵まれない環境にある人を選ぶ事もあるが、その人が返って、冶部一族の力になっていくのはもっと不思議だった。
神二郎は、兄の神一が、日本でも有数の資産家の娘でもあった知加子と結婚したのにも拘らず、水商売をしていた沙織と結婚した。しかし沙織は、香奈の部屋の青不動さんの叱咤激励で、優秀なファンドマネジャーみたいなものになり、不動ファイナンシャルの基礎を築いたのはむしろ沙織の相場で得た金だった。
神二郎の息子も九州で、リトルキャット九州の経理で働いていた嫁ハンと知り合い、結婚していた。リトルキャット九州の社長も、もっと資産のある家の娘を紹介しようとしていたのだったが、もう二人は出来ていた。この嫁ハンは、母子家庭で金もなかったが、頭は良かった。この嫁はんが実はやがてはこの会社を大きくしていく原動力にもなった
この会社は、世界の先進的な中小企業をやがて育てて不動マンションの舞い戻りたちもそれぞれ一角の人間に変えていった。
しかし当初は儲からなかった。大きな資本を出して、人も派遣していた。リトルキャットファイナンシャル、リトルキャット九州そして不動総合企画では派遣していた人の給料をほとんど出して、人件費を節約して、やがて利益が出た時の配当で支払ってねと云うスタイルにしていた。
香奈特別会計も香奈総合事務センターから人を派遣して、報酬も自分たちで負担していた。
しかし時間が経つと、それぞれの母体には大変な貢献をしていく事になった。職人ワザのような精密な部品とか美術品のような機械は、母体の出資している企業には大切な資産と変わっていた。
何よりも、リトルキャットファイナンシャルの人間にとって、ジイサン、バアサンの笑顔と働いている人たちの笑顔、そして立派になっていく、不動マンションの舞い戻りたち、それ以外に雇っていた若い奴らが育っていくのを実際に見える職場でもあった。
ゼニの顔とコンピューターの画面で表示される数字の利益ではなかった。不動総合から派遣されていた人たちの信念も初めは違和感もあったが、それにも親しみを感じ出していくのだった。
不動総合から派遣されていた人も、ゼニゼニといつも云うリトルキャットファイナンシャルの奴らをバカにしていたが、利益確保の重要性も認識していくキッカケにもなった。もっとも遠い存在と思えた、リトルキャットファイナンシャルの奴らと不動総合の神二郎部隊とかが仲良くなっていったのは不思議な事でもあった。
リトルキャット九州からの部隊は実にシステマチックに動き、自分たちの会社群に必要な部品を探し、新しい部品を要望し、従来の自分たちの下請け会社群とも協力していける会社を巧みに探していた。ある意味閉鎖的とも云える動き方をしていたのに、この二つからの部隊は反発しながらも調和していった。
リトルキャット九州は、九州とアジアではもはや支配的な勢力圏を築いていて、その中に取り込んでいける企業を探していた。
付加給が少ないと思っていた、リトルキャットファイナンシャルの社長は基本給も上げたが、他の職場にある程度たったら移動するようにもしたが、返って文句があった。もっとここに居たいとか云う奴もいて、他の職場から移動した奴は、報酬がへって、ブツブツと初めは文句いっていたのが、ここはいいとか言い出す、人気の職場に変わっていった。
リトルキャットファイナンシャル全体にこの効果は浸透していった。人のために働く、人の笑顔を見れる仕事をしたいと云う気持ちが少しつづ出てきた。
リトルキャットファイナンシャルの社長
あんな会社になんで出資するのかと初めは不思議に思いましたが、今では人気の職場です。あの会社自体ではそれほど儲けてはないですが、グループ全体としては儲けています。アメリカのグループからもそして欧州のグループからも感謝されてます。ドンはそこまで考えていたのでしょうか。
お宝銀行の頭取
それはワカランよ。そこまで考えていたのも知れないし結果としてそうなっただけかもしれない。ただドンは神二郎さんを高く評価しているらしいね。神太朗さんと話するようになって、神二郎さんの不動総合とも協力して仕事したいと思っていたのは間違いないね。ドンは香奈さんと話もして、香奈さんが神二郎さんを高く評価していたのを知っているらしい。
リトルキャットファイナンシャルの社長
神二郎さんが次の次の代表とか言われているのは、そこにあるんでしょうかね
お宝銀行の頭取
神二郎さんは部下に任せて、自由に働くようにさせるタイプだからね。不動産部門も大きくなったのは神二郎さんになってからだからね、高杉さんがしたとも云えるが、やっぱりトップは神二郎さんだ。神太朗さんとは軋轢もある神子さんのチームとも協力して進めている部門も神二郎さんの下にはある。けっしてキレイ事だけいっている人でもない。
ジブの新宿がこんなに大きくなったのは、神二郎さんになってからの事だし、それは神太朗さんも認めているよ。儲けなくて、夢みたいな事をいつも言っていると思っていたけど、神二郎は凄い、僕の時の新宿とは規模も利益も違うといつも言われているよ。
ドンは目先の利益だけではなくて、遠い先の利益も、そして働く人たちの気持ちも考えるビジネスをみんなに考えてもらいたいと思ったのかもしれない。僕の想像だよ。
リトルキャットファイナンシャルの社長
やっぱりドンの先見性は凄いですね。今更のように思いますよ。