のら猫の三文小説

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新しい子猫たち No.3

2014-01-16 00:00:29 | 新しい子猫たち 

リトルキャット運用会社、

貴金属会社を買収する。




正人は、香奈オーバーシーズからの融資ではなく、リトルキャット運用会社として出資する事を、この貴金属会社に打診した。まさか猫を取締役に派遣する訳にも行かず、ジブシティの猫カフェの世話を見て、猫チャンネルが出来ていた不動マンションの住人だった猫野鋤也を取締役として受け入れる事を条件にして、5千億の出資を提示した。



これは、株式の過半数なんぞを大幅に超え、買収にも近い条件だったが、経営陣もそのままで、派遣される新しい取締役が一人だったので、基本的に受け入れる事にした。



ただ、この連中は、女々しく、今の状態ですんなり増資を受け入れば、全ての資産の売買決定権はなくなると考え、貴金属会社の資産である、ほとんどの不動産や貴金属は、みんなリトルキャット運用会社が時価で購入する事を条件とした。



僻地の山間部の山々から、本社ビルや商業ビルなどのあらゆる不動産や保有している貴金属まで売って、必要な不動産は、安い家賃で貴金属会社が借りる事にして欲しいと我侭をいった。



更に、販売に必要な貴金属も貴金属会社が必要に応じて、その時の相場の5%引きで利用できるようにして、大幅な債務を持っていたと云うよりは、債務を移動させた海外の子会社である貴金属会社を、そのままリトルキャット運用会社が買収するスキームまで作りだした。



そうすれば、創業一族も資産を売った金を臨時配当に回し、合併後の出資比率を高くして、自分たちも金が入ると考えた、そんな事を言われれば、正人もタヌキ心を刺激され、丁々発止の化かし合いの一幕があった。



結局、この貴金属の会社が保有する貴金属は、常に前日の終値の5%引きで、加工や販売な必要な量を貴金属会社に販売した形とするが、リトルキャット運用会社は、すべての不動産とその貴金属会社や海外の子会社が保有する貴金属を、現在の市価や相場の10%引きで、根こそぎ買った。



海外の貴金属会社は、この貴金属会社に協力する事を前提として、貴金属会社の保有する海外子会社の全株式とかなりの債務を含めてリトルキャット運用会社が、割り引いた価格で買収する事になった。



従来の創業者一族は、この売却で得たお金を、自分たちへの臨時配当とした。こうして受け取った臨時配当の中から、一部を自分たちの増資にあてて、資産のないガランドウのような貴金属会社にして、リトルキャット運用会社の出資を受けた。従来の創業者一族も合計40%程度の株式を持ち、経営陣の安泰も図った。金を貰い、経営はそのままと自分勝手な言い分を通したと積もりであった。名より実を取った積もりだった。



一方、正人は、買収に予定していた金額で、主要な資産はそっくり100%リトルキャット運用会社の所有にしてしまったし、派遣する取締役も猫野一人ではなく、もう一つの大きな銀行を辞めた若い年寄りを経理担当にして、ジブトラストの新宿Bチームのメンバーまで、非常勤の取締役にした。



正人は、貴金属会社なんぞは特に欲しい訳でもなかった。香奈の家には毛利貴金属があって、東京銀座の毛利貴金属と云えば、みんな知っている会社で、日本でも最大の金を保有している会社として知られていた。


子猫たちは、貴金属を保管する保管庫と不動産を持っておきたいと言っていたので、それに応えた積もりだったし、安いとは云え、税金分以上の家賃は入ってきた、その上ジブの不動産チームに管理もしてもらえた。



ただ大赤字になったり、貴金属を販売すると言って、市価より安く提供する貴金属を横流するなどの無茶をしないかどうかを見張るために、もう一つの大きな銀行を辞めた人に監視するように言った。



猫野はいかにも頼りないし、新宿から派遣の役員は、貴金属会社の営業実態に興味があるようだった。貴金属会社は名前も変えず、そのまま運営した。



有利子負債は、リトルキャット運用会社が、その負債込みで、資産を購入していたので、新しい出資で十分な運転資金を持ち、経営はずっと楽になった。それに売ったとは云え、本社ビルを始め、営業に必要な不動産も従来通り使え、貴金属も従来通り使用できた。単に在庫がなくなった貴金属会社となった。貴金属の保有リスクはなくなったが、保有している事によるウマミも当然なくなった。



ただ販売するとその販売量だけは、必ず儲かるシステムになった。ただ一時急激に下がっていた貴金属の価格は、その後は一転して、上がり続けていったのは、誤算だった。貴金属相場の変動リスクは、リトルキャット運用会社が負担するが、貴金属価格が上がれば、利ザヤを稼ぐ事が出来た。



そのため、子猫たちは、貴金属や不動産購入に予定していた七千億の内、残った二千億を原資として、貴金属相場と貴金属の価格や保有量を考慮して、貴金属先物をしたり、安ければ貴金属の現物の購入をしていく事が必要となった。単に商品相場だけの売買利益ではなかった。現実に保管する貴金属のリスクと長期見通しそして貴金属の販売量などにも考慮する必要があった。



商品相場担当の猫たちは、研究担当の猫たちにも相談して、相場だけではない、勉強もしていった。海外の子会社の経営には、毛利貴金属の力もこっそり借りた。表面的には、正人が、真理や小百合たちに頼んだ。真理や小百合たちの貴金属グループもはっきりとした猫チャンネルはないものの、長い間、猫たちと一緒に暮らしていた。



猫たちの何匹かとは友達だったし、猫たちは、真理や小百合たちの心も読め、貴金属の動向について参考にしていた。毛利貴金属は、あっさりと引き受けた。海外の毛利貴金属の子会社は、やっぱり海外の会社だった。利用できるものは、利用したいと考えていた。この買収された海外の貴金属子会社では、毛利貴金属の子会社との販売提携もこっそりしていた。



海外の貴金属子会社は、毛利貴金属と合併をしたように受け取り、経営は安定すると考え、歓迎ムードであった。こうして海外では、毛利貴金属が、リトルキャット運用会社の子会社となった、この貴金属の海外子会社の経営も監督していくようになった。


貴金属会社に派遣された夢野は、珍しく不動マンションでは破産はしていなかった。債務は、しれていたし、清香の法律事務所が債務を精査して、不動ファイナンシャルが金を貸し、和議で収めた一人だった。不動マンションでは破産者は山のようにいたが、猫野はそうでなかったので、取締役になれた。猫野はボーとしていた人間だったが、器用な貴金属の細工職人だった。猫たちには人気があり、特にナターシャが気に入った人間だったので、煩いリトルチャやリトルホワイトを始め、その他の猫たちも納得した。猫の気持ちが判る人間として評価されていた。



こうしてリトルキャット運用会社は、やたらと不動産まで持ったので、管理なんぞは、ジブトラストの不動産チームに管理を任せた。貴金属は、その貴金属会社や海外子会社が今まで通り、当然のように保管する事になった。